第1話 今年もあと数時間
今日は2019年12月31日。今年も、あと数時間で終わろうとしている。
僕は、沢渡健吾。都内の大学に通う二年生だ。悲しいことに独り身だ。今年は関西まで帰省するのが面倒くさいので、この1DKのマンションで年を越すことにした。
同期で仲が良い友人は軒並み帰省していて、残っているのは僕一人。少し寂しい年越しになりそうだ。
窓の外を見ると、しんしんと雪が降り積もっている。東京で大雪が降ることはそうそうないけど、この分だと明日は積もりそうだな。寝正月のつもりだから、あまり関係ないんだけど。
スマホでTwitterを眺めていると、大晦日やお正月、紅白歌合戦の話題が流れている。今年ももう終わりなんだな。そういえば、最近は、年越しもラインを使ってあけおめのメッセージを送り合うことで済ませることが多くなった。今回もきっとそうなんだろうな、と思う。
ふと、通知が来ていることに気が付く。画面をタップしてみると―
【溝口彩
電話番号で友だち追加されました】
またこれか。ラインを使っていると、時折こういうことがある。どこの誰だか知らないが、いつの間にか他人が友達に追加されているのだ。調べたことがあるんだけど、大抵の場合、電話番号が名簿業者に流れたせいらしい。
(ブロックするか)
と、その「溝口彩」なる人物の写真を長押ししようとしたのだが。
(あれ?この子は……)
最後に会ったときと少し違う。でも、確かに「あや」ちゃんだ。目鼻立ちが整っているところとか、童顔なところとか。髪が短いのは、想い出と少し違っているけど。
そして、彼女との想い出が蘇ってくる。