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小学生編⑥
しかし優しい街での生活は短く、そのアパートで過ごしたのはほんの数か月だった。1年生の後半、古いアパートから県営のきれいなアパートへ引っ越すことになった。生活自体は相変わらずだったが前の家より学校の距離が遠くなった。
母に怒られないようになるべく静かに生きていた。なにか頼みごとをしなければいけない時は顔色を伺った。
『これを書いてもらわないと先生に怒られちゃう。でも、お母さんの機嫌が悪いから怖くて頼めない……』
"学校"と"家"に挟まれて常に葛藤していた。
その影響か私は引っ込み思案でおとなしい子だった。人としゃべることや人に伝えることが本当に苦手だった。