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旧家 ❀ 櫛名田一族の聖域  作者: 漣 ✾ 黒猫堂
『成』 chapter 007
29/40

玉依の裁定 dropout 兎城 × 貳



 様々な思いに(さいな)まれ 葛藤(かっとう)を続けながらも、(うさぎ)は『成すべき事』を成し遂げ―――

 そしてまた同時に、ある程度の心の整理をもつけた上で、(ようや)くにして 櫛名田(くしなだ)邸裏手の『南門(みなみもん)』にまで辿り着いた。


 此処(ここ)へ来るまでに、実は最短ルートの およそ10倍以上の距離を迂回(うかい)してきている。

 勿論(もちろん)、万が一にも尾行が付いていた場合のための備えなのだが―――


 そのルートの(ほとん)どが、(つら)なる他人の家々を 屋根伝いに走り抜くものであったり、また(ある)いは、大きなビルの中を縦横無尽に(しばら)く動き回るようなものであったりと、『道なき道』ばかりを踏破(とうは)する行程であった。


「そしてやっと着いた…… か。 玉依(たまより)様や龍岡(たつおか)中隊長は、やはり失望なさっておいでだろうか」


 (うさぎ)(みずか)らの行動を振り返り、自分なりに悔やむような失策はなかったと思ってはいるが―――


 しかしながら、だとすればそれは同時に、(うさぎ)自身のそもそもの能力が、上官の信頼に(こた)え切るには全くの役不足であった(・・・・・・・・・・)ということの証左(しょうさ)にもなるではないか。


 (うさぎ)は沈む気持ちを奮い立たせて門を(くぐ)り、ともすれば重くなりがちな足取りを何とか鼓舞(こぶ)しながら、取り敢えず 邸内の主屋(しゅおく)である洋館へと向かう。


 敷地の南側に(しつら)えられた英国式庭園の(こみち)を抜け、洋館手前の『前中庭(まえなかにわ)』付近まで来た時、ちょうど聞き覚えのある声が(いく)つか 風に乗って聞こえてきた。


「この声は…… 櫻子(さくらこ)様に桐子(きりこ)様? ということは、まだお声は聞こえていないが 恐らく柏子(かしわこ)様も御一緒に()られるのだろう」


 そこまで聞き分けた時、それらに交じって玉依(たまより)の声も耳に届いた。

 と同時に、手前の建物の陰から徐々に見えてきた庭の一角には、声の主である櫛名田(くしなだ)家の面々の姿が、まだ遠目ではあるが、訓練を積んでいる(うさぎ)には何とか目視できた。


 声を掛けようとも思ったが、まだかなり距離があるために少し躊躇(ためら)っていると―――

 意外なことに 向こうでも(うさぎ)の姿を見付けてくれたようで、櫻子(さくらこ)が大きく手を降りながら、良く通る声で呼び掛けてくる。


「まぁ! そちらに()られるのは、(うさぎ)さんですかぁー? 一別(いちべつ)以来でしたわねぇー、ごきげんようー! お元気でしたかぁー!?」


 初めに気付いたのはどうやら櫻子(さくらこ)であったようだが―――

 実は、夜目(よめ)を使う訓練の出来ていない者が この暗さの中で相手を視認するには、まだ相当な距離があった。


 (ゆえ)に もしかすると、彼女固有の異能(ジン)である『() 人型(ひとがた)生物の思考流入』によって、逸早(いちはや)(うさぎ)の存在を察知し得たのかもしれない。


 しかしだとすれば、もうこの時点で此方(こちら)も それなりの『思考閉塞(しこうへいそく)』を(おこな)った状態で(もっ)櫻子(さくらこ)相対(あいたい)し、接しなければならないということになるが―――


「それにしてもこれは一体? 櫻子(さくらこ)様と此方(こちら)側との距離は、まだ優に50mは離れているというのに…… 」


 だがもし、本当にこの距離で察知されたというのであれば―――

 現状、中隊内で認識されている『櫻子(さくらこ)の固有異能(ジン)の有効範囲』を大きく越えている。

 この事は 急ぎ各員とも確認し合い、共有すべきであろう。



「あぁー、本当だぁー! ウサギのお姉ちゃぁーーん!」


 櫻子(さくらこ)に続き、桐子(きりこ)もそう言って自分に手を振ってくれているのが見え、他の者たちも(うさぎ)の方を見遣(みや)っているようだ。


 彼らに近付くにつれ その様子がだんだん解ってきたのだが、輪の中心にいる桐子(きりこ)柏子(かしわこ)は、何やら派手でおかしな衣装を身に付けており…… しかもそれらは あちこちが引き千切(ちぎ)られたようにぼろぼろで、しかも所々 焼け焦げたりもしていた。


 何事かあったのかと一瞬緊張しかけるが、彼らの(ほが)らかな様子から察するに、訳は解らないながらも 特に危険を伴う何かが起こったということでもなさそうだ。



「あの…… 大変ご無沙汰を致しております、皆様」


 まだ少し距離はあったが、取り敢えず程々のところで一度立ち止まり、(うやうや)しく一礼する。


(うさぎ)さん、また(しばら)何処(どちら)かへ行かれていたのですわね。 今戻られたのですか? お仕事の方は無事お済みになりましたの?」


 櫻子(さくらこ)の問いは、勿論(もちろん)純粋に(うさぎ)(ねぎら)ってのものであったが、今の(うさぎ)には少し耳が痛い。


「はい、お陰様を持ちまして。 櫻子(さくらこ)様や…… それに桐子(きりこ)様、柏子(かしわこ)様もご健勝のご様子。 何よりでございました」


「これはどうもご丁寧(ていねい)に…… って、それはそうと(うさぎ)さん!? その一風変わった――― しかも、とっても寒そうなお召し物は いったい…… 」


 実は (うさぎ)はずっと、木花(このはな)邸の兎小屋に非常用として隠してあった、まるでレオタードのようなタイトな薄手の衣装を身に付けていた。


 (ちな)みに、毎夜食事のために抜け出していた際の普通の(・・・)衣服はというと、行きつけの居酒屋裏手の軒下(のきした)あたりに隠してあったのだが…… まぁ、この先はもう着ることもあるまい。

 実は少し気に入っていたのだが。



「あ、これは…… このような礼を失する姿で(まか)り越しまして、誠にもって とんだご無礼を…… 」


(うさぎ)のお姉ちゃん、だぁいたぁーん!」


(うさ)(ねえ) その格好 なかなかどうしてだね そそるぜ」


 桐子(きりこ)逸早(いちはや)く駆け寄ってきて抱き付き、柏子(かしわこ)は何やら此方(こちら)を向いて親指を立てているが…… 一応、()めてくれているのだろうか?


「てか(うさぎ)…… オマエのその話し方、(かしこ)まり過ぎだろう。 一体いつの時代の人間なんだにゃ」


 地面に小じんまりと座っていた玉依(たまより)は苦笑ぎみにそう言うと、礼をもって迎えるかのように、静かに背筋を伸ばした。


 櫻子(さくらこ)に何やら衣服の心配をされ、双子(キリかし)たちには(はや)され―――

 そして、誰あろう玉依(たまより)(おだ)やかな様子を確認できたことで、先程まで(いだ)いていた緊張感や不安の念が、少しだけ(ゆる)んだような気がした。



「あ…… あの、玉依(たまより)様、ただいま帰投(きとう)致しました」


「ああ、ご苦労だったにゃ。 さっき『ムシ』が届いた。状況は把握しておるよ」


「はっ 」


 玉依(たまより)の言葉に対し、反射的に軍人らしく 敏速な動きで礼を返すのだが…… どうにも二の句が継げない。



「えーっと…… じゃあ、桐子(きりこ)ちゃんに柏子(かしわこ)さん、そろそろ寒くなって参りましたし、ワタクシの部屋に服を置いて、さっさとお風呂に入っちゃいましょうか」


「はぁーーーい!」


「うん 風呂入って もう寝る」


 (うさぎ)たちの様子に何かを感じ取ったのか、櫻子(さくらこ)双子(キリかし)たちを(うなが)し、屋敷の中に戻る素振(そぶ)りを見せる。


(うさぎ)さんも その格好だとお寒いでしょうから、早く中に入って着替えてくださいね。 では(たま)さま、明日は午前中から『霞が関』ということで」


「ああ、解ったにゃ。 事前の段取りは任せたぞ」


「ええ、お任せくださいな。 それでは(うさぎ)さん、ごきげんよう」


 櫻子(さくらこ)はそう言って、双子(キリかし)たちを伴い 屋敷の方へと戻って行った。



 ◇



「さて、(うさぎ)特務曹長――― 改めて、(にゃが)い間 ご苦労だったにゃ」


 玉依(たまより)は屋敷を背にした位置で地面に姿勢良く座り、まずは(うさぎ)(ねぎら)いの言葉をかける。


「いえ、突然このような形で帰投(きとう)致しましたこと、お()びのしようもございません」


「ん? 今回の件、確かに急ではあったが…… 貴官に落ち度はにゃいだろう」


 玉依(たまより)はそう言って小首を(かし)げ、不思議そうにしている。


「あ、いえその…… 『木花(このはな) 珠姫(たまき)に 読心の異能(ジン)があるのでは』という疑念は当初からあったにも関わらず、結果的にはその事を棚上げにしたまま、一年と半年にも及び事案を放置し――― あまつさえ その(かん)ずっと、小官の思考を()のモノの脳内に 漏洩(ろうえい)し続けせしめたという可能性すらあり…… 」


 玉依(たまより)は、(うさぎ)の相変わらずの生真面目(きまじめ)さに思わず苦笑してしまいそうになるが―――

 本人は この状況を余程(よほど) 深刻なものと受け止めているようなので、取り敢えずはその意を()み、一笑には()さず、(しば)し話を聞いてやることにする。


「ふむ…… とは言え、実際本当にそうにゃのか? 貴官のことだ、これまでもその娘の前では極力思考を止め、心も閉ざしてはおったのだろう――― 櫻子(さくらこ)と接する時のように」


「それは…… 勿論(もちろん)そうですが――― 」


「なら問題はなかろう。 矛連(たけつら)のヤツに気取(けど)られた訳でもあるまいしにゃ。 第一、潜入当初に貴官は逸早(いちはや)く鋭敏にその疑念を持ち、ワガハイに即時 適切に報告を入れてきておったではにゃいか」


 改めてそれを思うと、やはり(うさぎ)の直観力の鋭さと判断の的確さ、そして何より 行動規範の誠実さには 端睨(たんげい)すべからざるものがあると、玉依(たまより)も舌を巻く思いであり、それが嬉しくて(たま)らないのだ。


「そしてだ――― その進言を受けた上で、(さら)なる潜入監視の任を『継続』せしめる裁定を下したのはこのワガハイだし、それについては貴官所属の部隊長である龍岡(たつおか)大尉も了承しておる。 その命に服して任務を遂行しておった貴官には、やはり何の落ち度もあるまい」


 玉依(たまより)は、人型(ひとがた)で直立して後ろ手を組んでいる(うさぎ)の足元に―――

 それと比べれば随分(ずいぶん)と小さな猫の姿で じっと姿勢良く座ったまま、少し小首を(かし)げて見せた。


「それにだ、報告内容から察するに 珠姫(たまき)という木花(このはな)家の娘は、少なくとも現状は此方(こちら)に対して害意を持っておるとは思えん。 まぁ、毎日のようにウチの双子(ふたご)どもが遊びに行っておる現状で、そんなもの(・・・・・)を持たれておっては それこそ(たま)らんが…… もしも そうした向きがあったとすれば、双子(アイツ)ら自身が気付かん訳がなかろうしにゃ」


「はい、それは大丈夫かと。 ()の家の『第二世代』二名は、現状においては極めて善良で、特に桐子(きりこ)様や柏子(かしわこ)様に対しては 非常に友好的であり誠実です」


 あくまで、まだ子供である『現状において』とは付け加えたものの、あの素直で心優しい木花(このはな)家の姉弟(きょうだい)たちを(うさぎ)は好ましく思い、そして信用に足ると直観(ちょっかん)している。


「なら良いではにゃいか。 そしてにゃあ――― いつまでも ウチのエース(・・・・・・)を兎小屋なんぞに入れておく訳にもいかんと、このところ常々(つねづね)思っておったところでもある。 そこへ上手い具合に、『八上(やがみ) 勢理奈(せりな)の一件』という土産話(みやげばなし)まで持って帰ってきたのであるからして、貴官のその功を()(ねぎら)いこそすれ、苦言を(てい)するなどとは思いも及ばん事だにゃ」


「は、有り難うございます!」


 (うさぎ)はこの瞬間、急に脳内や顔中の表層が(しび)れたような感覚に見舞われるとともに、胸がこの上もなく熱くなるのを感じた。


 自分の居場所があり…… そして自分をしっかりと見、受け止めてくれる 頼るべき存在があって―――

 そしてその上官は、こんなにも尊敬できる(ふところ)の深さを持ち…… しかもこんなにも『愛くるしい』姿をしているのだ―――


 ワタシはなんて幸せなのだろう。


 (うさぎ)は思わず、うっとりとした熱い眼差(まなざ)しで、(みずか)らの前の足元に (りん)とした姿勢で座っている、黒く美しい毛並みの 小さな一匹の『(ねこ)』を見下ろす。


 本当に――― 何と気高くお優しく聡明で、そして 超絶的(・・・)にお可愛らしい……。


「え…… えっと――― にゃんだ、この微妙に面妖(おか)しな()と空気感は。 急に一体どうした?」


「いえ――― お気になさらず、玉依(たまより)様…… いえ、ティマィョ・レィ主席統制官補。 何ひとつ、何ひとつ問題などございません。 この(うさぎ)一生(・・)アナタ様に付いて参ります!」


「いや、『一生』って――― え、(にゃん)だこれ……?」





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





一掬いっきく同刻どうこくたん



 同刻、櫛名田(くしなだ)邸内 洋館1階 大広間次室付近―――


櫻子(さくらこ) 「さぁさ、お二人とも! さっさと着替えて、

お風呂に入りましょうねぇ 」


桐子(きりこ) 「お服はどうしたらいーい? (サクラ)姉さまぁ 」


櫻子 「服はワタクシがお部屋に持って帰りますわ。 明日までには ちゃーんと、新しく創り直しておきますからね」


柏子(かしわこ)(さくら)(ねえ) 異能(ジン)つかって作りなおすんでしょ 一度見てみたい」


櫻子 「あらまぁ…… では お風呂のあとで、またワタクシのお部屋にいらっしゃいな。 確かに、寝るには少し早いですわね」


桐子 「あー! (キリ)もー、(キリ)も見たーい!!」


櫻子 「はいはい、じゃあ お二人でいらっしゃいな。 でも夜更(よふ)かしはいけませんからね?」


桐子 「はーい!」


柏子 「え…… やっと目が覚めてきたところなのに」


桐子 「あははー、(カシワ)ちゃん『ヤコーセー』だもんねー。 今日も夜中まで、ずーっとゲームするんでしょー?」


櫻子 「まぁ…… 睡眠はちゃんととらないと、お肌にもお身体(からだ)にも (よろ)しくありませんのよ?」


柏子 「大丈夫 アタシはそのために 昼はいつも動かず 体力を温存してる」


櫻子 「あら、柏子(かしわこ)さんが桐子(きりこ)ちゃんと比べて とっても大人(おとな)しいのは、そういうことでしたの? ワタクシ…… いえ 恐らくは誰もが、お二人は『生まれつき性格が真逆』なのだと、そう思っておりますわよ?」


柏子 「そんなことない アタシだって (きり)(ねえ)みたく 能天気(・・・)に 『きゃっきゃ えへへ』な生き方をしたい」


桐子 「んー? えっと、(カシワ)ちゃん…… (キリ)ってぇ、 そういうイメージ?」


柏子 「(きり)(ねえ) 大丈夫 『いい意味で』だよ リスペクト的なアレ(・・)


桐子 「へ… へぇー、そか…… うん、アレ(・・)ねー。 ならよかったー! ――― ん? うーん…… よかった… のかなぁ……?」


櫻子 「ま、まぁまぁ…… と・に・か・く! まずは… そう、お… お風呂に 入っちゃいましょおー!! ね? ねー?」



葉月(はづき) 「おぃーっす、こんばんにゃー! お、そこな我が(いと)しの娘っ子たちよぉー! なんやなんやぁー? まぁた オモロそうな(にお)いが プンっプンすんでぇー!?」


櫻子 「お母さま…… 本当(ほんっと)に いつもながら、最悪のタイミングで いらっしゃいますわね…… いっそ感心致しますわ」


葉月 「おぉう!? なんやねん、双子(キリかし)らぁの そのカッコ! なになになぁにぃー!?」


弓弦(ゆづる) 「お母様、みんな困ってるから…… 」


桐子 「あー、弓弦(ユヅル)兄さまだー! ねぇねぇ、見て見てぇー! これねー、魔法少j…… むぐふぅ!?」


柏子 「(きり)(ねえ) 早く着替えて お風呂いくよ」


桐子 「ん゛ぅー!? ぐ ぐむ… ふむぅぅ…… っぷはぁ! え゛ー、なになに!? な゛なんなの (カシワ)ぢゃーん!?」


櫻子 「(ナイスですわよ、柏子(かしわこ)さん。 お母さまなんかに『魔法少女』の一件を知られたら――― もう本当(ほんっと)に収拾がつかない状況に(おちい)ってしまいますわ…… )」


葉月 「んんー? ほっほぉぉおーん…… なぁなぁ (カシワァン)、どうやら取り敢えずぅ…… この場の空気的には『グッジョーブ!』な感じやったんやろなぁ、今のぉ。 でも、ホンマにそかなぁー? んっふふぅー、ここはほらぁ…… お母ちゃんにぃ、あることないこと 赤裸々(せきらら)ぁーんな感じで、気軽に相談(ゲロ)してみぃーひん? なぁー?」


柏子 「いかがわしさがハンパない 触れただけで即死のやつだコレ」


葉月 「ふっふぅーん、(ちな)みにやなぁ (カシワン)? 『猛毒(モードク)』っちゅうんはぁ…… (とき)に えっらい『クスリ』になることなんかも、あーんねーんでぇー? ぐっひひひひひ」


弓弦 「うゎ…… この人、末の娘に自分のこと『猛毒』って言いきったよ」


櫻子 「ワタクシの実の母親ながら、なんって禍々(まがまが)しい『気』なのかしら……。 だ だめですわ! そんなアクマ(・・・)(ささや)きになんか、(だぁーれ)も耳を貸したり致しませんことよ!」


柏子 「へぇ 毒をもって毒を…… か うん なくはない案」


櫻子 「か 柏子(かしわこ)さん、アナタ…… お二人を懸命に守っているワタクシの背中を、いつも後ろから 躊躇(ちゅうちょ)なくぶっ刺してこられますわよね……。 最近、これでもう三度目ですわよ…… ぐすん」


葉月 「うーん、アンタらのことはなぁ…… なんや、すーぐ解ってまうねんなぁー コレがぁ。 やっぱぁ、母親(ハ・ハ・オ・ヤ)…… やからなんかなぁー? あっははぁー! いやん、照ぇれるぅーん♪」


桐子 「うっわぁー! (カア)さまってぇ、すっごいんだねぇー!!」


櫻子 「いやいやいやいや、怖いキモい怖い! キモ怖いんですのよ、お母さまはぁ!」


葉月 「てか (サクラ)ァ、アンタらがほしいもんってぇ…… ぶっちゃけ、『ウエポン』やろ?」


櫻子 「は… はいぃぃ!? ど どど… どうして、それを!?」


弓弦 「うーわ…… 何でそんなものがほしいのか経緯(けいい)がさっぱりだけど、でもそれ 当たってるんだ…… お母様、本当に怖いよ。 『娘たちの気持ちが解る』とか言うと聞こえは良いのだけれど…… 何故(なぜ)か『母親らしさ』とかが 一切(いっさい)感じられないんだよね…… ただただ普通に怖い」


柏子 「武器がほしいアタシたち…… そして防衛技官の(かあ)さま――― 母親(どく)をもって桐姉(ドク)を制すか」


櫻子 「柏子(かしわこ)さん、言いたいことはなんとなく解りますけど……。 今日はなんだか、いつにも増して手厳しいですわよね…… 」






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