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旧家 ❀ 櫛名田一族の聖域  作者: 漣 ✾ 黒猫堂
『戯』 chapter 006
22/40

桐柏の発意 mascot 玉依 × 貳



「にゃんだと? ワガハイに『使い魔(マスコット)』になれだ? 一体 (にゃん)の話をしておるのだにゃ?」


 土曜日の朝食後、訳も解らずに屋敷の中庭まで呼び出された玉依たまよりは、呼び出してきた双子(キリかし)たちに問い返す。


「だからアレだよぉー、(タマ)先生(せんせ)ー! こほん、えと……『キミたちぃ 魔法少女にならなぁい?』…… ってゆう、アーレ♪ ねぇー、おねがーい しまーっすぅ! あはっ♪」


 桐子(きりこ)は おどけた仕草でそう言うと、「へへー 」と笑っている。

 よく解らない何か(・・)の声真似(まね)らしきものも (はなは)だ微妙だ。


桐子(きりこ)…… オマエ、頭は良いはずなのににゃあ。 そのどうにも残念な感じは、葉月(はづき)瑞穂(みずほ)悪いとこ取り(・・・・・・)か何かにゃのか?」


 玉依(たまより)は困惑気味に桐子(きりこ)の顔を下から覗き込むが―――

 当の本人は、「なになになぁにぃー? へへー 」などと言って、取り敢えず ご機嫌そうだ。


「えっと きりねえ…… ここはアタシが」


 横で見ていた柏子(かしわこ)が、いかにも「もう仕方ない」という(てい)で間に入る。


柏子かしわこ、それにしてもオマエまで(・・・・・)というのは、なかなかに珍しいにゃ」


「あ そうソコ…… 玉先たません ソコで察して 今アタシが目指すのは 『収束しゅうそく』と『安寧あんねい』…… 」


 玉依たまより柏子かしわこが じっと見つめる。

 普段は無気力な表情や態度しか見せない柏子かしわこの いつもと違う様子に、玉依たまよりも何となく状況を察する。


「そうか、まぁ(にゃん)だか良く解らんが、取り敢えずは付き合ってやるにゃ。 で、まずは説明してくれ柏子(かしわこ)


「あのねぇー! キリたちぃ、『魔法少女』になるんだー!」


 説明を『柏子(かしわこ)に』求めてはみたものの…… 桐子(きりこ)がじっと黙っているはずもなく、また柏子(かしわこ)率先(そっせん)して話すはずもない。


「お おう… そうかにゃ、桐子(きりこ)よ……。 うーん、まぁ(にゃん)となくワガハイに(にゃに)をやらせたいのかは、解ってきた気がするが…… 」


「察しがいい さすが玉先(たません) 百戦錬磨(ひゃくせんれんま)


「ぶふぅっ!」


「え…… いや(きり)(ねえ) 今のは別に (いん)をふんで笑わせようとしたとかじゃないから」


 桐子(きりこ)柏子(かしわこ)の言動に対し、笑いのハードルが地上すれっすれくらいに低いのだ。


「で、これは実際 どこまで(・・・・)の『ごっこ』なんだにゃ? あと、そもそもその『まほう…… なんたらにならにゃいか?』…… とかとか言って オマエらを誘う事こそが、本来のワガハイの役割なのではにゃいのか?」


 いつ何処(どこ)で見ているのか、玉依(たまより)も『魔法少女』についての最低限の情報くらいは、何となくでも把握(はあく)しているようだ。


「うん 本来はそう でもソコの後先(あとさき)はもういい だから玉先たませんをコッチから逆指名 あと残念ながら…… 結構 本気(がち)方向のヤバい(・・・)やつ…… かも」


「ま、そうなんだろにゃあ…… 」


 そう言って玉依(たまより)は、軽く溜め息をつく。


「アタシと(きり)(ねえ)の役割はもう『決定』されてしまってるみたいだから あとは アタシ(みずか)らの手で こうしてカタチからどんどん外堀を埋めていき…… 覚悟を決める… のみ…… 」


 柏子(かしわこ)はそういうと、いつもより三割増しくらいの脱力感を見せる。


「そうか、オマエも意外と苦労人なんだにゃ……。 解った、柏子(かしわこ)がそう言うのだから従っておこう。 で、ワガハイはどうすれば良い?」


「ありがと玉先たません じゃあまずは 『衣装 及び 小道具係』の勧誘と説得 そして確保をおねがい」


「ん? 衣装と小道具の… 係…… って、いやいや! ちょっと待てにゃ!? それって絶対、櫻子(さくらこ)のことだよにゃあ!? アイツを説得して仲間に引き入れるとか、誰がどう考えても ワガハイが最も不適格であろうが!」


「うん だから説得はアタシがやる 玉先(たません)避雷針(ひらいしん)…… じゃない えっと… オブザーバー的ななにか」


 柏子(かしわこ)玉依(たまより)に向かって、相変わらず顔は無表情なままに ふわりと親指を立てる。


「オマエ… 今、『避雷針(ひらいしん)』って ハッキリ言ったよにゃ……。 いや、ワガハイ… 実はついこの間もアイツに殺されかけとるのだが…… 」


 先日の櫻子(さくらこ)の部屋での、『結界騒動』のことを言っているのであろう。


「知ってる 見てたよ」


(にゃん)だ 見てたのかよ…… って、(にゃに)ぃ!?どうやって!!?」


「このあいだ 聖域内の次元が『みしー』って(ひず)んだから (そう)(じい)とアタシ…… あと龍岡(たつおか)さんたちは すぐ気が付いた で 同期同調する高位異次元空間をつくって (さくら)(ねえ)の結界膜に干渉 侵食してもぐり込んでたの」


「ん? 『(もぐ)り込んでたの』……って、あの異次元多層膜結界にか!? あの部屋の中に()っただと!?」


「まあね」


 ということは、あの時 櫻子(さくらこ)が張った極薄の多層異次元結界のうちのいずれかの隙間(すきま)に別の亜空間を作り、同調と反発を絶妙なバランスで保ちながら、その中にいたということになる。


「オマエらにゃあ…… ワガハイが櫻子(さくらこ)を止められてにゃかったら、下手をすると諸共(もろとも)塵芥(ちりあくた)だぞ…… 」


「だから いざとなったら アタシが出ようと思ってた」


「ん? あぁ そうか…… まぁ、オマエが出てくれば、それはそれでアイツもおとなしく()めておったであろうし、それに槍慈(そうじ)龍岡(たつおか)らもあの場に()ったというのであれば…… って いや、それなら早く止めてくれれば良かったではにゃいか!?」


「おもしろかったから」


 と、さして面白くも無さそうな顔で言う柏子(かしわこ)


「はいはい…… 」


(それにしてもだ…… 槍慈(そうじ)龍岡(たつおか)だけならまだしも、コイツまであの中に()ったというのか? いや… だがそれにしては、気配も波動もまるで感じなかったにゃ。 しかしまさか、流石さすがにワガハイと櫻子(さくらこ)が そこまで鈍いはずがにゃい……。 こいつは少し、(にゃに)阻害要因(そがいよういん)となっていたのかを、詳しく調べておいた方が良さそうだにゃ)



「ねぇー、お話し終わったぁー?」


 話し合いに()れた桐子(きりこ)が割って入ってくる。


「あ ごめん(きり)(ねえ) 早くやろ 玉先(たません)


「あ… あぁ、そうだにゃ…… 細かいところはまぁ良い。 いずれにしろ、櫻子(さくらこ)のヤツが入らんと話ににゃらんのだろう?」


「うん そう 話が早くて助かる」


(タマ)先生(せんせ)、たぁっのもしぃぃー!」


「いや、説得はオマエらがやれよ」


「それはねぇ、(カシワ)ちゃんが『おまかせ』なんだってぇー 」


 桐子(きりこ)柏子(かしわこ)に向かい、「ねぇーー!」と言って笑いかけると…… 急に何かに気付いたように、少し離れたところに咲いている秋咲きのクレマチスや 炎のようなケイトウの花の辺りに駆け寄って行ってしまった。

 大方(おおかた)、変わった虫でも見付けたのだろう。


 と…… ここで玉依(たまより)は、柏子(かしわこ)にだけ聞こえるように、そっと耳打ちで問いかける。


「おい、ところで柏子(かしわこ)アイツ(きりこ)を説得して、この『遊び』自体をやめさせるという手はにゃいのか?」


「なくはない でも 一昨年の『ワニ事件』の二の舞になるかもよ」


「ふん… (にゃ)る程、やはりオマエは それ(・・)懸念(けねん)しておるのか…… うーん、そういう事なんだよにゃあ…… 」


 玉依(たまより)はそう言って、少し顔をしかめる。


(きり)(ねえ)は素直だから たぶん誰かにやめろといわれれば おとなしくいうことをきく」


「だろうにゃあ。 だがその後が怖い…… という事か」


(確かに二年程前、桐子(きりこ)が突然『ワニの子を飼いたい』などと言い出しおった(おり)…… 当然ながら皆で止めたら ちゃんと素直に聞き分け、その後も特に駄々をこねるでもにゃく、あっけらかんとしたものであったが――― その翌日、敷地内の和庭園の池に『巨大なワニ』が一頭、唐突に出現しておったのであったにゃ……。)


「ねぇ 玉先(たません) あのワニどうなった?」


「あれからずっと、今も和館の横の池に()るよ。 龍岡(たつおか)たちが交代で面倒を見ておる」


「アマゾンにでも転移させられないの?」


「ワレワレの異能(ジン)によって、生き物が無から(・・・)実体化したのだぞ? そんな この世の摂理(せつり)に反した得体(えたい)の知れん化け物を、勝手には捨てられんだろう。 それに、普段 さして刺激の(にゃ)いところに身を置いておる『本国や軍の学者ども』からすれば、この上もない格好(かっこう)の研究対象だしにゃ」


「でもあのワニって そもそも本当に(きり)(ねえ)が『実体化』した生き物なの? どこかから転移で呼び寄せちゃったとかの可能性は?」


(にゃ)い。 実はあのワニな、体の中身は『亜空間』になっておるらしい。 つまりな、あの体の中には肉も骨も内蔵も(にゃ)く、外から見える『ワニの表面』だけを 極薄の高位異次元結界の膜が(おお)っておるだけにゃのだそうだ。 だが、その中には確かに 生き物としての、()わば『(たましい)』らしきものがあり…… 確実に自我を持った状態で『生きて』おるそうだぞ?」


「えーと…… 構造的なとこで なんかよく解んないとこもあったけど 相当にまずそう ということは解った」


「ああ、相当にまずいにゃ。 うーん… だから要はアレだ…… 例えるとにゃ? この間、櫻子(さくらこ)が張っておった結界膜の内側が 全て亜空間で満たされたとして――― それがワニの形状と本能を持ち合わせた状態で、お外を自由気儘(じゆうきまま)に動きまわっておる…… とまぁ、こういう感じかにゃあ」


「すご…… で そういう例って 他にもあるの?」


「そんな例は勿論(もちろん)(にゃ)い。 だから各方面の学者ども…… 特に軍の連中(・・・・)が、かなりの入れ込みようで大注目しておるのだ。 (にゃに)しろ、異能(ジン)や生物学などの研究材料として非常に稀有(けう)なモノである上に…… それよりも軍としてはにゃ、もしも 何も(にゃ)いところから『実体化した生き物』を無限に生み出し、あまつさえ それらを『軍事転用』出来る可能性があるのだとすれば…… それはもう、革命的な事案にゃのだよ」


 それを聞いた柏子(かしわこ)は、少し離れたところで花を覗き込んだりしている桐子(きりこ)を見て言う。


「だったらなおさら 今回の件は早く収束(しゅうそく)終息(しゅうそく)させないと」


「だにゃ……。 明日の朝、屋敷の上を 面妖(おかし)な格好をした『中身が亜空間の魔法少女』が飛び回ったりなどしておっては(かにゃ)わん…… いや、そうなると 相当にまずい(・・・・・・)かもにゃ」


 そう言って、玉依(たまより)桐子(きりこ)の方を見遣(みや)る。


「それってつまり (きり)(ねえ)が今度は 意思を持って動く『人型』の生き物を創造 実体化させちゃったりした日には…… ってことだよね」


「考えたくもにゃいが…… まぁ そういう事だにゃ。 そんな事態にでもなれば、最早(もはや) ワレワレの『聖域を(まも)る』という使命など、いとも簡単に消し飛ぶぞ。 それに…… 桐子(きりこ)も今のように安穏(あんのん)とは暮らしていけなくにゃるかも知れん」


「 ………………………………。」


 柏子(かしわこ)は押し黙ったまま、珍しく顔に表情を見せて桐子(きりこ)の方を見つめる。


 先の展開を見通す能力に()けた この少女の表情は、この時 いつになく(つら)そうに見えた。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





一掬いっきく過日かじつたん



 過日、櫛名田(くしなだ)邸 和館側庭園内 池の(ほとり)―――


鹿沼かぬま 「やぁ 馬籠まごめ軍曹、ソイツ(・・・)の様子はどうかね」


馬籠まごめ 「ああ 鹿沼かぬま先生、お早うございます。 コイツ(・・・)、いつまでここにいるんでしょうかねぇ」


鹿沼 「ん? いやぁ、連れ出さん限りは ずっとこの池におるんだろうがなぁ」


馬籠 「そうですかぁ。 いやね? 出てきた時は突然だったもので、消える時も いつか急に忽然(こつぜん)と…… とか」


鹿沼 「期待してるのかね?」


馬籠 「まぁ、少しだけですがね。 いやぁ、もう随分ずいぶんと長いこと面倒見てますんで、多少の愛着もなくはないんですが…… 如何いかんせん、所詮しょせん爬虫類はちゅうるいですからねぇ」


鹿沼 「まぁなぁ、さすがに 犬みたいな従順さでなつくようになったりは…… せんだろうなぁ」


馬籠 「ですよねぇ。 いや、小官しょうかんも いつかそのうち、うっかり喰われちまうんじゃないかとね? 少し不安になるんですよ…… あはは… はは… は…… 」


鹿沼 「あー 」


馬籠 「え… いや、『あー』って。 嘘でも気休めでもいいんで、『それはないだろう』とか『大丈夫だよ』くらい言ってくださいよ 先生…… 」


鹿沼 「うーん…… だが実際、その可能性も なくはないしなぁ。 キミは役割が『庭師(にわし)』である関係上、コイツのそばにおることが比較的多い訳だし。 ふむ… でもまぁ、嘘でも良いなら…… 大丈夫なんじゃないかねぇ?」


馬籠 「うぅーわ…… 医者とは思えない不安のあおり方しますね…… 気休め言うの下手(へた)くそですか まったく。 ほら、病人を不安がらせないためのこう… なんかあるじゃないですか、気休め的な…… 嘘も方便的な感じのやつとか」


鹿沼 「でもなぁ…… 馬籠まごめ軍曹は、別にワシの患者じゃあないし。 あぁ… あれだよ、例えばキミがコイツにまれたりして ワシのところに(かつ)ぎ込まれでもしたら、その時には何か上手いことのひとつも言える気がするんだなぁ、これが」


馬籠 「はいはい、もういいっすよ。 てか、()まれちゃってから言われてもねぇ」


亜空間ワニ 「ぶっふぅーーーーっ!」


馬籠 「お、今日はご機嫌ナナメだなぁ…… くわばらくわばら」


鹿沼 「鼻から 息と水飛沫みずしぶきを吐き出しておったねぇ」


馬籠 「あ… そうだ、前から気になってたんですがね? コイツの体の中って…… 」


鹿沼 「ああ、亜空間になっておるはずの体内から、なんで水や空気が出てくるのかって話かね?」


馬籠 「あ、そうですそうです」


亀山かめやま 「あー、それワタシも知りたいでーす!」


鹿沼 「おぅ、厨房ちゅうぼうメイドの亀山かめやま伍長か。 コイツの食料エサを持ってきたのかね?」


亀山 「はい… でももう、毎日 (おんも)たくってぇ……。 で… この子、中身が亜空間なのに なんでモノを食べたり、水や息を吐いたりできるんです?」


鹿沼 「それはだねぇ…… つまりあれだ、生き物はみんな『くだ』だからだよ」


馬籠 「はぁ… 成る程…… って、解りづら!? え、全然ぜんっぜん 解んないんですけど!?」


亀山 「あー…… そっかぁ! そういうことなんですねぇ!」


馬籠 「え… 亀山かめやま伍長、解ったの!? えー、すごいなぁ…… えーーー 」


亀山 「要はですね 馬籠まごめ軍曹、口や鼻って『穴』じゃないですかぁ? で、そこから食道とか肺とか…… そして(さら)に おなかの中の方へ行くと、今度は胃とか腸とかがあってぇ…… で、お尻の穴まで行くと――― ほら、もう生き物の体って…… つまり、『くだ』…… ストローみたいなものですよね? ね、先生?」


鹿沼 「ああ、そういうことだ。 だからね? 口や鼻からつながる、わば外皮がいひの延長であるようなのどやら肺やら消化器やら…… そういったところは、元々が (ストロー)の内側の『空間部分』なわけであるから、そこは当然 亜空間にはなっていない…… ということになるんだろうなぁ」


馬籠 「ん? あー…… じゃあ、コイツの亜空間の部分ってぇのは…… 」


亀山 「生き物でいうところのぉ…… 皮膚ひふ粘膜ねんまくに覆われた、その内側の『お肉』の部分って ことなんですかね?」


鹿沼 「まぁ、そうだ。 その肉に埋もれた骨や… あとは、脳や内臓なんかも そうなんだろうなぁ。 そして逆に、くだの内側の空洞(くうどう)部分でしかない 口やのど、気管や食道…… 肺や胃腸なんかの内腔部分は、当然 亜空間じゃあない。 よって、水や空気も そこを出入りできるので吐き出せる」


亀山 「ご飯もちゃんと食べられるぅ!」


馬籠 「成る程なぁ…… いやあ 亀山かめやま伍長、勉強になったよ。 先生の話は解りづらかったけど」


亀山 「いえいえー♪」


鹿沼 「おいおい。 そうだ、でももし今後 コイツに体を丸ごと一飲ひとのみにされるようなことがあった場合には、なるべくすぐに死んじまった方がいいぞ?」


馬籠 「うぅーわ…… 急になんてことを言い出すんだか、縁起えんぎでもない……。 でもそれって、いったいどういうことなんです?」


鹿沼 「コイツ、毎日モノを喰って、たぶんちゃんと消化しておるだろう? その証拠に、喰ったものはもう出てこない。 でも かと言って、排泄物はいせつぶつとして出てきておる様子もない。 ということはだ…… つまり、喰ったものは亜空間に取り込まれておる(・・・・・・・・)可能性が高い…… ということなんだなぁ、これが」


亀山 「はぁ、なるほどぉ…… で、それと『食べられたら早く死んじゃった方が良い』って、どうつながるんです?」


鹿沼 「うん、コイツに喰われ 咀嚼そしゃくされて…… まだ『くだ』の中にいるうちに死ねれば、抜け出たタマシイは――― この、今ワレワレがおる空間宇宙に放出される。 だが 消化…… というか、わけの解らん亜空間なんぞに吸収されてしまったのちようやく絶命し、タマシイがそこで放出されてしまった場合には…… 」


亀山 「おー…… 下手へたをすると、タマシイは『ワタシたちの宇宙』での輪廻りんねに乗れず、何処どことも知れない おかしな空間の狭間はざまを永遠に彷徨さまよい続けることになるかもしれない…… と?」


鹿沼 「そうそう、さすがは亀山女史。 どうだ、怖くないかね?」


馬籠 「うーん、てか鹿沼かぬま先生…… 考えてることが、全然ぜんっぜん 医者っぽくないですよね」


亀山 「でもでもぉ、なんか先生って ロマンチストって感じがするー!」


馬籠 「いやいや、ワニに喰われて死んだあとに どうたらの話とか…… 全然、ロマンの欠片かけらもないから」


鹿沼 「よーし決めたぞ。 亀山かめやま伍長は今度の予防接種、絶対に痛くないようにってあげるからね」


亀山 「うわぁ! やったぁー♪」


馬籠 「え… えー!? それって先生の匙加減さじかげんなんすかぁ? じゃあ小官は… って だめかぁー、絶対に痛くされる方っすよね……。 ひでぇー、すっげぇ公私混同こうしこんどう~」


鹿沼 「いやぁ ワシもなぁ…… 最近の仕事というと、余計なことを知ってしまいおった地球星アルド人たちの記憶操作をするようなものばかりで、真っ当な医療行為を全然 行えておらんのだよ。 だからなんかこう…… ちょっとストレスなのかなぁ? あーっはっはっはっはっは」


馬籠 「いや、予防接種の痛さが 先生のストレス度合いによるとか、怖すぎでしょ…… 」






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