一族の検証 for 双子
えっとぉー、アタシのなまえはぁ…… 櫛名田 桐子っていいまぁーす。
『桐』ってよんでくださぁーい。
で、なんだっけ?
あ、そか…… キ、桐にはぁー、双子の妹がいてぇー、柏ちゃ… じゃない…… んと、柏子ちゃんっていいまぁーす。
っと…… 桐たちってぇー、おカオとかは そぉーっくりなんだけどぉー、でも「セイカクは ぜーんぜんちがうねぇー 」って、よくいわれまぁーっす。
それでぇー、えと…… 桐とちがってぇー、んと…… 柏ちゃん… 子ちゃん―――
桐子 「ねぇねぇ、いっつもみたく『柏ちゃん』って呼んでもいい?」
柏子 「いんじゃね」
えと…… 柏ちゃんはぁー、ゲームが大すきでぇー、いっっつもゲームをもってあるいててぇー…… んで、お部屋にもパソコンとかゲームとかが、たぁーーーっくさんありまぁーーーっす。
あとぉ…… そだ、お話しするときはぁー、桐とちがってぇー、あんまりたくさんは おしゃべりしませぇーん。
だからぁー、桐と柏ちゃんはぁー、「にてるけどにてないねぇー」って、みーんなから いわれまぁーっす。
でも桐たちはぁー、とぉーーってもなかよしでぇーーーっすぅ。
でぇ、えと…… す、すきな食べものはぁー、桐がキノコの入ったドリアでぇー、柏ちゃんがぁー…… えーっと―――
え? …… なにそれ、コノワ… タ? いつ食べたのそんなの…… え? あと、ヒレ… ザケ――― お、お酒!?
ダメだよぉ柏ちゃん、そんなのぉー。
だって桐たち まだ小学生…… あ、ウソなの?
もぉーーー!
じゃあ、あとのやつはまちがいでぇー…… コノ… ナントカのほう…… とかだそうでぇーす。
うーんと、あとはぁ…… そだ、シュミはぁー……
櫻子 「えーっと…… 取り敢えず一回止めましょうか、ストップ ストーップ!」
桐子 「あ、櫻姉さま! どうだったぁー?」
櫻子 「桐子ちゃん、とっっっても良く伝わってはきたのですけれどね? その、なんと言うか…… 自己紹介? みたいな感じになってしまっていたようなので…… 」
桐子 「えぇーー、『小説』って、こういうのじゃダメだったぁー?」
玉依 「ほーらにゃ? やはり物語の『語り部』は、このワガハイに任せておいた方が良…… 」
櫻子 「玉さま! アナタはそこのおミカン箱の中にでも、すっこんでおいてくださいな!」
玉依 「ふぅ、やれやれ…… 相変わらず心に余裕のない娘め。 ま、せいぜい頑張れにゃ~ん♪」
櫻子 「くっそ…… 憎ったらしいですわね、この真っ黒毛玉ジジィ!」
柏子 「櫻姐 情景描写とかはやっぱり アタシたちじゃない方がいいと思う」
櫻子 「でも…… 柏子さん、アナタでも無理そう?」
柏子 「むいてない しゃべるの嫌いだし」
櫻子 「で、ですわよねーーー 」
桐子 「じゃあやっぱりぃー、ここは桐が ガンバるよぉー!」
櫻子 「うーん…… あ、そうだ! アレですわよね? 例えば今の桐子ちゃんのセリフのあとで…… おほんっ、『桐子ちゃんはそう言うと、握りしめた拳を天高く、そして力強く掲げた。 周囲のモノたちと下賤なる猫ふぜいは、そのお見事な威容と超っ絶可愛過ぎなお姿に 思わずひれ伏したのであった』…… とか入れれば、良いのですわよね? どう? ねぇ、どう?」
玉依 「あほか。 『拳を天高く』って、一体 何処の覇王の『悔いなし』宣言だにゃ。 てかオマエ、『下賤なる猫ふぜい』って…… ルビで個人特定しておるではにゃいか。 オブラートって知ってるか?」
櫻子 「うーん、なかなかに難しいものですわねぇ。 でも玉さまにお願いするのだけは、例え『永遠の宇宙平和』と引き換えでも、絶っっっ対に嫌ですし…… 」
玉依 「いや、そこは嘘でも『宇宙平和』を取ってくれよ」
やれやれ…… 素直に、ワガハイに任せておけば良いものを。
全く、この因業頑固娘めが。
―――――― ぎ… ぎぃ…… ぴしぃっ!
桐子 「うゎ…… すごい音ぉー。 ねえねえ、またおウチ こわれちゃうよぉ!?」
柏子 「櫻姐 まずは一旦 落ち着こう どぅどぅどぅ」
相っ変わらず この娘は、本当に沸点の低いヤツだ……。
コイツの短気の度に、屋敷の構造部がどんどん損傷を受けていくわ。
まぁ…… 取り敢えず 深呼吸でもして、もう少し気分を落ち着けるんだにゃ。
櫻子 「ふん… だ! お節介なことを心の中で呟かないでくださいな。 あぁ゛ーー、もう! 玉さまの心のお声が頭の中に流れ込んできて…… 本当に鬱陶しいったら! 誰が、こんな年老いたクソ猫の指図なんか受けるものですか! ムッキィーーー!!」
玉依 「だから言い方よ……。 あとオマエ、ご機嫌が斜め過ぎだろう」
柏子 「ほら 櫻姐 深呼吸すると 気分が落ち着くよ」
櫻子 「まぁ… 柏子さんってば、なんてお優しい……。 どうも有り難う、早速やってみるわね。 すぅーーー …… はぁーーー 」
玉依 「コイツ…… ワガハイが言った時とはエライ反応の違いだにゃ」
櫻子 「あらまぁ不思議……。 本当に気分が、すっかり落ち着きましたわ!」
やっぱ馬鹿だ、コイツ。
櫻子 「えーっと、玉さま? 先程から、またワタクシの悪口を お心の中でちょいちょい、盛大に呟いておられますわねぇ……。 しかも、麗若き乙女に向かって『ばばあ』だのなんだの…… いったいなんて言いぐさですの!? このお喋り四本足が!」
玉依 「えぇーーー? あぁ、そうかぁー。 オマエの脳にはー、ワガハイの心の声がー、ダダ漏れに伝わってー、しまうのであったにゃあー。 すーっかりぃー…… 覚えてたにゃー、すまんすまーん。 にゃっははは~ん★」
櫻子 「こんの黒毛玉…… 今度、校舎裏の焼却炉にでも投げ入れてやりたいですわ」
ふん、全く堪え性のにゃい娘め。
とは言えだ…… やはり思考がダダ漏れというのは実際、厄介な話だにゃあ……。
と… いかんいかん、これも聞こえておるのか…… 本当、やり辛いにゃあ。
おぉ、そうだにゃ!
いっそ、このワガハイの心の声を『小説の進行役』として採用させてしまえば……。
櫻子 「却下ぁ。 それって実質、これまでと何にも変わっていないではありませんか」
玉依 「ほぅ…… バレた?」
櫻子 「まったく、バレバレですわよ」
柏子 「この一人と一匹はそう言って、長年連れ添った夫婦ででもあるかのように そっと笑いあう。 なんだかんだといっても、やはり気ゴコロの知れた間柄なのであろう。 しかしその横で、カレらのそんな睦みあうさまを 呆けた顔でながめていた桐子と柏子は、もうバカバカしくなり『帰ろっか』と言って、この場を立ち去るのであった――― ということで またね お二人さん お幸せに 行こ 桐姉」
桐子 「え? あ… う うん、か… 帰ろっかぁ、柏ちゃん…… 」
櫻子 「ぃ… いやいやいやいや、ちょっと柏子さん! 待って待ってぇー! そして無駄にお上手で不本意なナレーションを入れないでぇーー!!」
玉依 「柏子、オマエやっぱりこういうのやらせると上手いにゃ。 オマエがやれば良いのに」
柏子 「やだ 今のが限界 しゃべりすぎて頬っぺたがイタイ」
櫻子 「あーもう、どうしたものやらですわ…… 」
玉依 「もうアレだ。 やはり作者である黒猫堂が、『第三者目線』で普通に語れば良いであろうが」
櫻子 「まぁ、そうですわね。 それでは玉さま、黒猫堂さんには そのようにお願いしておいてくださいな」
玉依 「ああ、解ったにゃ」
櫻子 「でも今後、ワタクシや弓弦お兄さまがメインとなるお話の時は、ワタクシたち自身にやらせていただきますわよ?」
玉依 「うん? まぁ、やりたいと言うのであれば止めはせんが…… 向き不向きと力量次第ではないかにゃあ。 特に瑞穂や葉月などには…… 恐らく無理だぞ」
櫻子 「あー、確かに……。 ではまぁ、その都度考えましょう。 まぁでも、才色兼備なこのワタクシなどは、まったくもって問題ありませんわよ!」
玉依 「オマエがさっき得意気にやっておった『拳を天に』どうたらこうたらのヤツだが…… オマエやっぱり、思考の向きや言葉選びの感覚が ワガハイに似ておるようだにゃあ」
櫻子 「はひ!? ぃ…… いぃぃやぁぁぁああーーーーーーーー!!!」
玉依 「うわ!? びっくりした……。 おい櫻子、オマエ 何て顔して叫んでおるんだにゃ。 てか、以前オマエが自分で言っておったのではにゃいか。 あー…… しかし成る程、気付いてみれば確かにそんな気もするにゃあ。 流石、生まれた頃から常にワガハイの『心の声』で魂魄や思考精神を形成されて育ってきただけの事はある。 良かったにゃあ櫻子、これからはワガハイを『心の師』と仰ぐが良いぞ」
櫻子 「あ、あぁ…… こ、この…… ワタ… ワタクシの…… 心… は…… アク… アクマに――― あ、『ケダマのアクマ』にぃぃぃ…… 」
櫻子 「おい… 今、如何にも言ってる途中で『思い付いた』みたいに、韻を踏んだ言い回しと替えたよにゃあ。 てか、『マ』しか合ってにゃいが…… 」
桐子 「もぉー! 玉先生、櫻姉さまを あんまりイジメちゃダメだよぉー!」
柏子 「玉先 あんまり追い込むのだめ 超面倒くさいことになる」
玉依 「ああ、すまん…… ついにゃ。 でもコイツ、結構 大丈夫そうな感じだが」
葉月 「おんやあぁ~? なんやおもろいことになってるんとちゃうの~!? あっははー!」
桐子 「うわぁ! 母さまだぁー。 いま出てきちゃ、とぉーってもダメな人って気がするんだけどなぁー 」
柏子 「母さまお願い ややこしくしないで」
玉依 「葉月か、相変わらず最悪のタイミングで登場してくるヤツだにゃ、感心するぞ」
葉月 「何々なぁにぃ~? これぇ…… この状況ぉ~。 あっはぁー、櫻っちが軽く灰んなりかけとるやん――― って、これやったん… まぁた 玉やんやろぉ~。 いぇぃ! OKグッジョ!」
玉依 「オマエ、一体どういうスタンスで母親やっておるんだにゃ」
葉月 「ふっふーん…… どうせアレやろぉー? 物語の進行役、桐には上手いことできへんでぇ、柏は『やりたないー 』とか言うてぇ。 ほんで玉やんが『ほならワイがやったろやないけー!』みたいなこと言うたかて、そこは櫻が『この世の終わりと引き換えでもイヤやー! せやったら自分でやるわぃー!』とか言うたりとかしてぇ。 でも櫻は…… 玉やんとセンスがめっちゃ似とる上に詰めもアマイから、やっぱアカンやろしなぁ……。 ほんで、またいつものように エラいバタついた挙句、玉やんが櫻にトドメ刺してぇ…… で、まぁたメデタク泣かしてもうたんやろなぁこれが――― って、どない? だいたい合うとったぁ? あっははー!」
玉依 「怖っ! てか葉月…… オマエやっぱすげーにゃ。 まぁ、持ち出す例えが『この世の《平和》か《終わり》か』…… というあたりの違いで、オマエら親娘の『心の腐り具合』の差が絶妙に出ておった気もするが。 うーん、さすが母親…… いや、それは母親だからにゃのか? あと、ワガハイは『ほならやったろやないけー!』とは、言わんけどにゃ」
柏子 「母さますご さすが国防の要 エリートMAD戦略官」
桐子 「母さま、ホントにすっごいねぇー!? そうだ! えと、『シンコウ…… ヤク』? それを、母さまがやってくれたらいいんだよぉー!」
玉依 「いや、それは絶対にダメだにゃ」
柏子 「だめ 絶対」
櫻子 「そ それだけは…… 超絶 却下ですわ…… 」
桐子 「うぁ… 櫻姉さまが灰になったままチカラをふりしぼって……。 う… うん、ダメだよねぇー。 だって母さまがやってぇ、『ウチキリ?』とか『タイカイショブン?』とかになったら…… きっと、黒猫堂さんも困るもんねぇー 」
葉月 「なんやエライ言われようやねんけど……。 いや、でもまぁ 確かにアンタら…… なかなかいい読みしとんでぇ!」
玉依 「親指を立てるにゃ 親指を。 全く…… オマエは本当に解らんヤツだにゃあ」
黒猫堂 「あのー… もう『語り』部分は、私の方でやりますんで…… 」
玉依 「なにゃ!? オマエ何時から此処に居ったんだにゃ!?」
黒猫堂 「あぁ、櫻子さん渾身の、『某覇王の拳上げ』のあたりからですかね」
玉依 「随分とまた、序盤から気配消しておったんだにゃ…… 」
全員 「じゃあ、次回からは『双子ちゃん回』ということで、黒猫堂さんよろしくー!」
黒猫堂 「前回からのこれ、ちゃんと小説の体を成しているんだろうか……。 まぁ、読者もさほど多いわけじゃないし、好きにやらせてもらうか…… 」




