一族の会合 by 全員
櫻子 「本日は こちらの『第三応接の間』において、一族による緊急会合を執り行います」
柏子 「ぱち… ぱち… ぱちぃ…… 」
桐子 「柏ちゃん、ハクシュのときはゲームやめて ちゃんと手でやらなきゃダメだよぉ」
玉依 「まぁ、そもそも拍手なんぞ 誰もしとらんのだがにゃ」
葉月 「で…… 櫻ァ、いったいなんの会議なん?」
刀眞 「あーっと、すまんが櫻子、今日は官房長のハゲに呼び出し喰らっちまってるからよぉ、まぁ手短かに頼むわな」
弓弦 「どうせアレだよね、また玉先生絡みの…… 」
櫻子 「え… ちょっとお兄様!? 『どうせ』って……。 ワタクシ、そんなにいつも玉さまとばかり馴れ合っているわけではないつもりなのですが…… 」
瑞穂 「あらぁ、じゃあ今日は別のお話しなのねぇ。 で、いったいどんなお話し合いなの、櫻子ちゃーん? 楽しみだわぁ」
櫻子 「あ… いえその、えーっと…… 今日は たまたま…… 玉さまについてのお話し合いに…… なり… ますかしら…… ね……… 」
柏子 「♪たまたまー ♪たまたまー ♪たまたまたまっさまー 」
桐子 「ぶ! あっははは! 柏ちゃん やめてぇーーー!」
葉月 「はいソコー、『静粛』にする必要は全然ないけどやなぁ、取り敢えず桐は、柏の言動に対して『笑いのハードル』が低過ぎやから 気ぃ付けやぁー。 あんまレベル低いと、もうお母ちゃんの子ぉちゃうでぇー 」
桐子 「はぁーい。 ぶふっ! ぷ… くふぅ…… 」
槍慈 「はいはい皆さん、話を進めましょうねぇ。 ワタシも今日は来週開催される『コーヒーフェス2018』の運営委員会がありますので、このあと霞が関の方まで出掛けなければならないのですよ」
刀眞 「おい、親父ぃ…… まぁた何かやってんのかぁ? 大丈夫なのかよぉ、そんな目立つことしてぇ…… って、もしかしてその珈琲のイベント、霞会館に後援とかさせようとしてんじゃねぇだろうなぁ!?」
槍慈 「まさか、ワタシはもう隠居の身ですからねぇ。 緒卿に対し、そんな図々しいお願いなんて出来やしませんよ。 ただ…… もしも、いろいろな不可抗力的 紆余曲折の末、そんな幸せな巡り合わせにでもなった暁には…… 現理事の一人である刀眞くん、誼なに頼みますねぇ」
刀眞 「まじかぁ…… くそ、こんの老獪爺ぃめ……。 まぁた余計な仕事が増えそうだぜ全く。 おい親父ぃ、そろそろ道楽も大概にしとけよぉ? 実際の身体年齢的には、まだまだピンピンしてやがんだからよぉ。 その珈琲に打ち込む情熱を、もう少しどっか別なところに持ってってほしいんだがなぁ」
葉月 「あの喫茶、完全に、ただ趣味が高じとるだけやしなぁ…… ま、ウチらも助かってるからええけどー。 あっははぁー!」
瑞穂 「槍慈さんは昔っから、本当に凝り性でしたものねぇ」
玉依 「ふむ…… だが確かに、どうせ凝るなら ちゃんと『店』として成り立つよう、多少なりとも収益を上げてほしいものだにゃ」
柏子 「でも 槍爺のコーヒー おいしい」
桐子 「桐はねー、コーヒーはにがてだけどぉ、あったかい牛乳がすきー!」
葉月 「それ、ただ暖めるだけやんか。 槍爺でなくても、みんな同じ味やで」
玉依 「とにかくだ、どうせやるなら この家に資する何かをだにゃ…… 」
櫻子 「あ… あのぉー、こちらの方のお話を進めさせていただいても…… 宜しいでしょうか?」
弓弦 「うん、頼むよ櫻子。 ボクらがしっかりしないと、この家は今の時代を生きていかれないかもしれない」
玉依 「ほう、弓弦も言うようになったにゃ、その意気や良し。 これからの一族の命運は、オマエたちの双肩に掛かっておるぞ。 で… 櫻子よ、一体 何の話だにゃ?」
櫻子 「はい、お話というのは他でもありません。 例の『櫛名田物語』についてですわ。 その中での『玉さま暴走問題』について」
玉依 「やっぱりワガハイなのかよ」
桐子 「はぁーーーい! 桐ねぇ、ずーーっと読んでるよー! でもねぇ… 半分くらいはイミがよくわかんないかなぁ……。 あとぉ、漢字もおおいから つかれちゃう」
柏子 「漢字には ふりがな ちゃんとふってある」
黒猫堂 「でもあれ、実は結構大変なんですけど…… 」
葉月 「わ、びっくりしたぁ! え、アンタさんどなた!?」
櫻子 「お母さま、こちらは ワタクシたちのお話をカタチにしてくださっている、漣 黒猫堂さんですわ」
瑞穂 「あぁ、玉ちゃんが見付けてきたっていう、物書きの方ねぇ?」
黒猫堂 「はい、あの… 初めまして。 玉依先生には、いつも大変お世話になっております」
櫻子 「今日は、せっかくの櫛名田家のお話をこのままネットの片隅に死蔵されてしまわないための、『テコ入れ』を皆さんにご相談したいのですわ」
弓弦 「櫻子、『テコ入れ』って一体どういうことなんだい?」
櫻子 「はい… 実は現状、この物語……『旧家 ❀ 櫛名田一族の聖域』なのですが、残念なことに『イマイチな状況』を 大っ変 安定的に保ったまま推移しております」
黒猫堂 「面目ないことです…… 」
櫻子 「いえ、黒猫堂さんのせいではありませんわ。 これは単に、『玉さまの暴走のせい』に他なりませんもの」
玉依 「またワガハイのせいなのかよ」
柏子 「♪またまた ♪またまたー ♪またまたまーたまー 」
桐子 「ぶふぅっ! いや、母さま…… 笑って… ないよ…… ぶっ!」
玉依 「で…… 櫻子、ワガハイの一体 何処が悪かったと言うのだにゃ?」
櫻子 「端的に申しますとね、玉さま…… お話が超絶 長ぇんですわよ!」
弓弦 「あー、そこは初めから懸念されていたところだよね。 事前にリスクが判っていたのに回避できなかったというのは、ちょっとイタイかなぁ」
葉月 「あとなぁ、玉やんの台詞、さっきも言われとったようやけど、とにかく他のウチらの話し言葉と違ぅて 『漢字が多すぎ』やねん。 読みづらぁてしゃーないわ」
玉依 「いやいや…… ワガハイはこの東の島国に450年も前から棲んでおる訳であって、しかもその前は 北宋の頃から550年以上も大陸に居ったのだぞ? つまりだ… 謂わば千年もの永きに渡り、『漢字』に慣れ親しんでおるのだにゃ。 ついつい多用してしまうのも、致し方のにゃいところであろうが」
櫻子 「でもね玉さま、漢字が多すぎると皆さんが読みづらいだけでなく、黒猫堂さんも とてもお手間が増えるんですのよ?」
黒猫堂 「あ… えっと、ルビ振りのこと… ですよね? いやぁ、多少はアレですが… まぁ それほどでも…… 」
槍慈 「まぁ、たくさんのいろいろな方々に読んでいただくということと…… あと、そもそもこのお話は 弓弦くんの発案で、『桐柏ちゃんたちに読んでもらおう』というものだったわけですからねぇ。 ただ、ふりがなの付いた漢字が多いというのは、間口を広げる意味でも… また勉強のためにも、決して悪いことではないとも思えますし…… どうなのでしょうねぇ?」
柏子 「漢字多いと 勉強になる」
櫻子 「えーーっと、柏子さん? ここに来ていきなり、ワタクシを背中から刺すような発言は お控えいただきたいのですが…… 」
弓弦 「あと、当初の計画のひとつだった『主役をこの家族で持ちまわる』というのも、あまり果たせていなさそうだよね」
櫻子 「玉さまのお話が くっそ長いせいで、主役を交代するどころか 未だに各章の始めのタイトルが『概説』とかになっているんですのよ? だいたい、本来の最重要因子である『聖域』のお話が、微塵も動いてきていないではありませんか」
玉依 「オマエと槍慈と… あとは執事の龍岡らは、そこそこに結構な活躍をしておったであろうが」
龍岡 「いえいえ、滅相もございません。 大変 恐縮でございます、玉依様」
櫻子 「いや、ちょっ…… あれが活躍ぅぅう―――!? 玉さまがワタクシのお部屋を勝手に荒らして、それでひと悶着あっただけではありませんか!」
瑞穂 「まぁまぁまぁ。 でもいずれにしろ、玉ちゃんは もう少ぉし、気を遣ってあげましょうねぇ。 だからみーんなに、嫌われてしまうのですよー 」
玉依 「え…… いや待て、ワガハイって嫌われておるのか?」
一同 「 ………………………………。」
玉依 「いや、オマエら何か言えよ」
櫻子(櫻子) 「とにかく、この物語の読者さんが少しでも増え、そして桐子ちゃんや柏子さんたちが少しでも楽しく読めるように…… ワタクシ、以下に『御法度書』を定めますわ」
一、 玉依ハ 調子ニ乗リ 長話ヲ致ス間敷事
一、 玉依ハ 漢字ヲ濫リニ用イルヲ不許
一、 玉依ハ 勝手ニ話ヲ進メル不可
一、 玉依ハ 此ノ物語ヲ私物化スルヲ不許
一、 玉依ハ 決シテ此ノ物語ノ主人公ニ非ズ
右条々 相背候玉依ハ 切腹申付ベク候也
玉依 「いや…… これって幕末期の某『新しく選ばれた組織』の連中が掲げておった、あの物騒な法度に酷似しておるではにゃいか。 あと、対象となる主語の部分全てにワガハイの名前が明記されておるのは、一体どういう事なんだにゃ」
槍慈 「櫻子さん、これは素晴らしい! 実に良く練り上げられた文章ですねぇ!」
櫻子 「有難うございます、槍慈お祖父さま♪」
玉依 「槍慈ぃ… オマエ覚えておけよ……。 ってか櫻子よ、そもそもこの法度書き自体が 思いっきり『漢字だらけ』ではにゃいか! 法度違反だ! 腹を切れにゃー!!!」
櫻子 「あらまぁ、残念ながらワタクシは『玉依』ではございませんので――― 悪しからずぅ! べぇ~だ!」
玉依 「何だそれ、ガキんちょのいじめかよ…… 」
葉月 「てか櫻ァ、今日日『あかんべぇ』て……。 『昭和』? ねぇ『昭和』なん?」
刀眞 「おーっし! ま… どぉーでもいいやぁ、くっだらねぇ! じゃ、そういうことで 今日はお開きな~。 おい 猿倉ぁ、車の用意しといてくれ。 警察庁までだ、急げよー 」
猿倉 「は… 了解であります、櫛名田警視正」
槍慈 「あぁ 刀眞くん、良ければワタシも霞が関まで乗せて行ってもらえると助かるのだけれどねぇ」
刀眞 「あ、そうか…… ったく、しゃぁねぇなぁ。 一億人、公用車なんだが…… まぁ、いっかぁ」
龍岡 「皆様、大変お疲れ様でございました。 では早速、お茶とお菓子をご用意致しますので」
黒猫堂 「あ、えっとあのぉ…… ひとつだけ、よろしいでしょうか?」
瑞穂 「あらあら、えーと…… 漣… 黒猫堂さん? どうかなさいまして?」
黒猫堂 「あのですね…… 確かに今の約定の発効で、作品に多大なる悪影響を及ぼしていたと思われる 玉依先生を封じ込めることはできたと思うのですが…… 」
玉依 「おい黒猫堂、オマエもかにゃ」
黒猫堂 「はは、すみません……。 ですが、当初 櫻子さんが言われていた『テコ入れ』とは、ちょっと違うような気がするのですけど…… 」
弓弦 「あぁ、なるほど……。 確かに、読者に敬遠される要因となっていた『諸悪の根源』自体は絶たれたものの…… 作品自体がより良く発展することを目指すのであれば、何かもうひとつ『足し算や掛け算的な方策』が必要ではないか…… と、そういうことですね?」
黒猫堂 「はい、ですです」
玉依 「それにしても言い方よ…… 『諸悪の根源』て」
桐子 「はぁーーーい! じゃあ、桐たちがガンバってぇ、なにかおてつだいするー!」
柏子 「そう じゃ頑張ってね 桐姉」
桐子 「うん! …… って、えぇー!? ちがうよぉー! 柏ちゃんも一緒にやるのぉーー!」
柏子 「面倒はイヤ あ… でもまぁ たまにはいいか ♪たまにはまたまた たまたまー 」
桐子 「ぶふぅっ!?」
葉月 「アンタらいい加減にしぃーやぁ。 単に『たま』言いたいだけやん。 てか……『またまた たまたま』やって、なんか やらしっ 」
櫻子 「ちょっ… お母さま!? えー、こほん…… まぁ、そんなことより お二人とも…… アナタ方ってば、もぅ なんて良い子さんたちなんでしょう! ワタクシ、感動致しましたわ!」
弓弦 「あはは…… ではそういうことで。 黒猫堂さん、引き続き宜しくお願いしますね」
黒猫堂 「え… あ、はい…… って、えぇ!? いや、ちょっとすみません…… 全然 解りませんでした。 いったい何をどうすれば良いことになったんです!?」
柏子 「つまり アタシたちが登場 ふ… 勝ったな」
櫻子 「黒猫堂さん…… この子たちを主題にしての失敗は、絶対に許されませんわよ?」
黒猫堂 「えーーー、すっごい梯子のはずし方しますね…… 」
葉月 「えーと、漣さん言うた? エッライ大変そうやけど…… ま、せいぜい気張ってなぁー! あっはははははー!」
桐子 「わぁーーー、桐 たのしみぃーーー! そうだ、桐はねぇ…… 『魔法少女』になりたぁーい!」
弓弦 「へぇ、それは随分と冒険だけど…… でも、これまでの悪い流れを断ち切るためには、それくらい大胆に舵を切ってみるのも 良いかもしれないね」
槍慈 「成る程…… これなら確かに、さっき皆さんが言っていた『テコ入れ』感はありますねぇ。 大丈夫、きっと黒猫堂さんが なんとかしてくださいますよ」
櫻子 「それでは本日の緊急会合、これにて解散ですわ。 皆さん、大変お疲れ様でございました。 では 黒猫堂さん、結果は明後日くらいにはいただけますかしら?」
黒猫堂 「いやいやいやいや、明後日に『結果』というのはさすがに無理ですよ! 新しい展開となると、今からいろいろと調べものとかもしないとですし……。 例えどんなに急いでも、そもそもの投稿自体が明日か明後日くらいにはなるかと…… 」
玉依 「調べものだぁ? だってオマエ、基本はワレら一族の辿ってきた『事実』を、ただそのまま成文化して紡いでおるだけなのであるからして、何か調べたりする必要など無かろうが。 なぁ、黒猫堂先生?」
黒猫堂 「うーん…… なんか、ものすごくめんどくさい一族に見出されてしまった気がするのだけれど。どうしよう、すっごく逃げ出したい…… 」