エピソード 3 守りたい者
夕方・・・・
屋敷に帰り、5人は楽しそうにクリスマスの飾りをしていた。
今までは爺ちゃんが居たのでできなかったが、今年は僕が許可した。
偶にはいいと思って・・・・。
クリスマスの飾りをしている間、僕は部屋で会社の起案書などに目を通していた。
だけど・・・・
コンコンッ・・・
?まだ早いよね?
紗那「真琴さん、少しお話がありますので玄関までよろしいでしょうか?」
玄関?
真琴「わかった、すぐに行くよ」
書類を金庫に直し、鍵を閉めて玄関へ向かった。
紗那さんと一緒に玄関へ向かうと、子連れの女性が松里さんと話していた。
真琴「どちら様?」
すると女性と子供たちは会釈をした。
子供と言っても中学生と小学生くらいかな・・・・。
女性「初めまして、妹がいつもお世話になっております、松里の姉の鷺宮雅と申します。この子は香菜と優奈です」
香菜・優奈「初めまして」
真琴「初めましてぇ~」
松里さんの姉ってことは・・・様子でも見に来たのかな?
でも・・・・こんな山奥の屋敷にわざわざスリッパで来るだろうか?
すると松里さんが「姉はどうやらDVを受けてるみたいなんです」
ドメスティックバイオレンス・・・ね。
なら・・・
真琴「今日はわざわざ松里さんに会いに来られたのですか?」
雅「え、ええ。どうしてるかと思って・・・」
真琴「そうですか~。なら松里さん、折角だから客室に案内をお願いします。折角来られたのだから、クリスマスパーティーに是非、参加していただきましょう」
香菜・優奈「クリスマスパーティー!」
雅「でもお邪魔では・・・」
真琴「パーティーは多い方が楽しいですから」
松里さんにアイコンタクトで案内させてと・・・
4人が去った後、紗江さんのほうを向く。
紗江さんはコクリと頷いて駆け足で去っていった。
ここまで来たら・・・・
僕も手を貸さないとね・・・
僕は電話する・・・。
真琴「あ!晴香さん?」
晴香『社長!いきなりどうされたんですか?』
真琴「最近、住み込みで子連れOKの職場ってなかった?」
晴香『何件かありますけど・・・どこもハロワに敬遠されてるようです。それが何か?』
真琴「できれば、その求人をもって屋敷に来てくれないかな?雄二さんも一緒で・・・」
晴香『あぁ~仕事の話ですね・・・分かりました・・・伺います・・・・』
あれ?落ち込んでる?
真琴「終わったらクリパね」
晴香『え!?本当ですか!?すぐに伺います!ヒャッホー!ガチャ・・・・ツーツーツー・・・』
ヒャッホーって・・・・子供か!
でもまあいろいろと決着しそうだな・・・
僕はそう思い、くるりと振り返ると、紗那と奈々と春が立っていた。
真琴「多分・・・・来るよね?」
紗那・奈々・春「来るでしょ~」
ピンポーン・・・・
真琴・紗那・奈々・春「ほら~」
紗那は木刀を持ち、玄関を開ける。
そこにはスーツ姿の男性とタクシーが停まっていた。
紗那「どちら様ですか?」
男性「私、鷺宮俊也と申します。こちらに家内と子供たちが来ていると伺ったのでお迎えに来ました」
奈々「おかしいですね、先ほど来たばかりですが・・・お早いお迎えですね」
俊也「いや、うちの実家のほうでもクリスマスパーティーを開くことになっていたのを伝え忘れましてね~、いや~うっかりしてて・・・」
春「生憎ですが、奥様の妹さんが折角喜んでいるので、諦めていただけますか?こちらでもクリスマスパーティーをやるので、お子さん方も大丈夫だと思いますけど?」
俊也「でも父と母がどうしても孫と会いたいって・・・・」
真琴「それ以前に・・・・どうしてここがわかったんですか?」
僕がそう問いかけると、だんまり・・・。
奈々が俊也さんの横を通り、タクシードライバーに話を聞きに行った。
そして戻って来て僕に耳打ち。
真琴「なるほど・・・・・」
俊也「いいから家内と娘たちを出してくれないか!」
真琴「怒鳴らないでいただけますか?耳が痛い」
俊也「さっさと連れてきてくださいよ!何なら私が連れ戻します!」
そう言って俊也さんは靴を脱ごうとしたため、紗那さんは木刀を俊也さんののど元に寸止めの突き。
俊也「な、何の真似だ?」
真琴「失礼ですが、お引き取り願います、ここは僕の屋敷ですので・・・。それに庭に入っただけでも十分不法侵入で訴えれますけど?」
俊也「ならお前は誘拐だ!警察に電話するぞ!」
ダメだ・・・わかってない・・・・
真琴「那奈さん、警察」
奈々「済みです」
早いな~・・・
俊也「てめぇ!」
すると警察ではなく、三島夫婦が到着。
でも覆面と勘違いした俊也さんはいきなり土下座・・・。
俊也「悪気はなかったんです!どうか逮捕だけは!」
晴香さんと雄二さんが駆け寄ってきて首を傾げる。
晴香「鷺宮さん?」
俊也さんは驚き二人を見る。
俊也「え?」
真琴「お知り合い?」
晴香「はい。浮動物産の会長のお孫さんです」
俊也「三島社長代理、なんでここに・・・・」
雄二「まさか・・・・彼が何か?」
真琴「うん・・・・。奥さんとお子さんにDVをしてるみたいなんだ・・・」
俊也「違う!あれは教育であって・・・・」
雄二「私たちはそういう言い訳が嫌いだと言いましたよね?」
晴香「警察には?」
真琴「連絡済みです」
雄二さんはゆっくりと俊也さんの前にしゃがむ。
雄二「ケリは付けましょうや?ねぇ」
雄二さんは元警備上がり。
迫力が違う・・・。
しばらくして、警察が到着して、引き渡した後、雅さんたちのいる部屋に晴香さんと雄二さんを連れて向かった。
客間01号室
中に入ると、ホットミルクとクッキーを食べる3人の姿があった。
松里「すいません、この代金は私が・・・」
真琴「いや、別に気にしないで。雅さん、少しお話いいですか?」
雅「はい」
僕と晴香さんは向かいのソファに。
後ろに雄二さんが立つ。
松里さんは雅さん親子のソファの後ろに立つ。
真琴「先ほど、旦那さんが来られました」
雅「え?」
雅さんは顔面蒼白になった。
やはり恐怖で支配されてたんだと思った。
真琴「でも安心してください、ドナドナしましたので・・・」
雅「ドナドナ?」
真琴「深くは内緒です。それで・・・」
コンコンッ・・・・
紗江「真琴さん、よろしいですか?」
真琴「ええ、待ってたよ」
部屋に紗江さんも入り、大賑わい。
暗いけど・・・・。
紗江さんは雅さんの前に書類を並べる。
離婚届・財産分与拒否・慰謝料免除・親権確保などなどの書類。
つまりは先ほどの最悪な旦那と別れなさいということ。
紗江さんは弁護士で、いろいろとしてくれる。
今回のことも彼女を弁護士として離婚を進めるということ。
紗江「今回の件を踏まえて、離婚に踏み込んでいただけますか?」
雅「でも・・・・・」
雄二「彼がいろいろとあなたやお子さんに何をしてくるかが怖いのですか?」
雅「はい・・・・。私は耐えらえれますが・・・・この子たちや私の両親に何かあったら・・・」
真琴「そうか・・・・。ご両親のことを考えてなかったや・・・。晴香さん」
晴香「となると・・・・一戸建てが与えられるものになりますが・・・・全部クリヤしてますね・・・・」
真琴「なら大丈夫だね・・・」
雅「あの・・・・いったい何を・・・・」
晴香「あなたに高間グループの管理する施設の管理のお仕事をしていただこうと思いまして・・・。もちろん給与も出ますし、住まいも確保できます」
紗江「ただ、あなたが離婚をしていただかないと、どちらにしろ危険が及ぶかもしれません。なので危険な芽である金銭面を求めず、逃げるのが得策かと・・・」
雅「あの人から逃げられるんですか?私たち親子も・・・両親も・・・・」
紗江「私たちが全力でサポートします。今現在、接見禁止を裁判所にも提出済みですので万が一、こちらの屋敷に乗り込んだところで、あなたに触れることも会うこともできません。すでにあなたは逃げきったのです」
紗江さんはお得意の笑みで微笑んだ。
すると安心したのか、雅さんは娘さんたちの肩を抱いて泣き出した。
雅「よかった・・・助かったんだよ・・・私たち・・・」
これでよかった・・・。
すると松里さんも深々と頭を下げて泣いていた。
真琴「あとは・・・・頼める?」
晴香「大丈夫です」
紗江「はい。これから段取りをしようと思います」
真琴「わかった」
僕は立ち上がり、松里さんの肩を叩いた。
真琴「松里さん、香菜ちゃんと優奈ちゃんを部屋で遊ばせてあげて。ここじゃ退屈になるだろうから」
松里「はい・・・ありがとうございます、真琴様・・・・」
真琴「“さん”でしょ」
そう言って僕は泣くのを部屋まで我慢した・・・・。
翌日・・・・
浮動物産の会長の鷺宮永禮と社長の鷺宮俊が顔が2倍に膨らんだ俊也を連れて家の屋敷にやってきた。
見た目はきちっとして喪服姿・・・。
謝罪の意は感じ取れる。
念のため、僕は晴香さんと雄二さん、紗江さんと松里さんを連れ、玄関先で対応することにした。
永禮「この度は家の孫が、高間グループの社長代理とこの屋敷の方々にご迷惑をおかけしたことを心から謝罪します。申し訳ありませんでした」
永禮さんに合わせ、俊さんと俊也さんも頭を下げた。
真琴「謝る相手が違います・・・。でも接近禁止ですから仕方ないですね・・・」
俊也「接見禁止ってなんだよ!」
そう叫んだ瞬間に俊さんの重い右ストレートが俊也さんの顔面にクリティカルヒット。
ごんっと重い音がした。
俊「当たり前なことですので当然です。ですので、強制的に離婚へと進む段取りを・・・・」
紗江「その件に関してはこちらは準備できております」
俊「おや・・・ではすぐに進めましょうか?」
永禮「それで取引のほうなのだが・・・・・切らせてもらっていいか?」
俊「確かに・・・。これ以上あなた方に迷惑をかけることはできません。戒めにどうか・・・・」
晴香「その必要はないと判断しましたので取引は切りません。その俊也さんを解雇していただければ今後ともいいご縁を続けて行こうと思います」
俊「よろしいのですか?」
晴香「次期社長からの伝達ですが、万が一、取引を中止したときに出る損失で、社員解雇を余儀なくされてはこちらが責任を感じるとのことでした。ですのでそういうことです」
永禮「ご配慮、感謝いたします。ですが・・・直接後継者の方にお礼を言えないのは心苦しい・・・・」
真琴「その心配はありませんので・・・。次期社長として、反省の意は感じ取れたので・・・」
永禮「では・・・・あなたが・・・・」
真琴「まだ、経験不足で彼女に一任しているところが多々ありますので・・・」
俊「これから末永いお付き合いをどうかお願いいたします」
その後、離婚に関する書類にサインをもらい、永禮さんと俊さんからこれからの養育費と慰謝料と俊也から親権の権利を受け取り、3人は帰っていった。
これで雅さんは晴れて自由の身・・・・。
慰謝料も8桁、養育費も高額学校に通った場合の金額を貰ったので、働かずとして生きて行ける額である。
ここで重要なのは、俊也さんからの金銭的な受け取りはない。
だから、金銭面でどうこう俊也さんが言っても、払ったのは永禮さんと俊さんなので無関係。
なので裁判でこちらが有利に進められる。
それに、何かあったら俊さんが率先して陥れると仰ってくださったので問題ないと思う。
これが最初で最後のクリスマスプレゼントになるだろうね。
さて・・・・僕からは何を送ってあげようかな・・・・。