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ようこそ、死恐園へ

作者: 双葉 蓮

『さぁ、ようこそ世にも奇妙な遊園地、死恐園へ。はじまして、私はここの支配人、黄泉でございます。え?どうして遊園地の名前が不気味かって?それは、ここでは色々な事が起こるからですよ。主に霊と呼ばれる類のものが……。今夜のお客様は、高校生の女性お2人のようです。彼女等は無事に退場出来るのでしょうか。では、どうぞお楽しみください』


 ★


 私は友達の美希に誘われ、とある遊園地に来ていました。周りは暗く遊園地の明かりだけが怪しげに揺らめいていました。


「ねぇ、やっぱやめた方がいいよ。他に人誰もいないみたいだし、夜だけ開いてるなんておかしいよ!」

「大丈夫大丈夫。ワンコインで全アトラクション乗り放題とかお得じゃん!智里は心配性すぎなんだよ」

「でも、なんか嫌な感じがする。美希はおかしいと思わないの?」

「まぁ、思わなくはないけどなんか面白そうじゃん」


 美希はいつも好奇心旺盛でなんにでもくいつくのです。ですが、今回はホントに不安で胸がいっぱいでした。

 その遊園地は深夜0時から2時の間だけオープンする奇妙な遊園地でした。昨晩、私と美希に招待状が届き、美希は好奇心旺盛で即決でしたが、私はずっと嫌な感じがしていたのですが美希1人行かせるのも何とも言いしれぬ不安に駆られ付いてきたのです。


「よし、早速ジェットコースター乗ろう!」

「ま、待ってよ〜」


 美希は中に入ってすぐ目標目掛けて走りだしたので何とか後をおい、ようやくジェットコースターのところで追いつきました。


「こっちこっち!」

「辞めよーよ。やっぱりここ変だよ」


 ここにたどり着くまでの途中誰もいないのにまわり続けるメリーゴーランド、観覧車の頭頂から落ちる白い人影、お化け屋敷の入口で手招きする白装束の女性、それらを目撃し、不安は確証に変わりました。私は霊感があるということは無いのですが、母が霊感強いのでその影響でそれらには敏感でした。霊感が無いはずの私にも見えているのですから…………。

 私は美希を説得しようとここまでに見たものを全て話しましたが、美希は何かに取り憑かれたかのようにその場を離れようとしませんでした。私は大声で美希に呼びかけました。


「……美希………美希!」


 そこでようやく気がついたのかこっちに向き直りましたが何か様子が変なのです。何かを訴えようと苦しそうにもがいているのです。


「たす……けて。……うごけない」

「え?また怖がらせようとしてるんでしょ?」


 また美希の冗談だと思ったのですが、どうやら冗談ではないのだと気づき、美希に手を伸ばしました。


「美希!掴まって!」


 美希は何とか私の手を掴み、私は両手で美希の引き上げようとしました。

 手を引いて救出しようとしますがビクともしません。そうこうしているうちにバーが勝手に降りてジェットコースターがゆっくりと動き出しました。


「智里!助けて!」

「美希ーー!」


 そのままジェットコースターは発車してしまいました。その際ふと美希を抑えるように無数の手が絡みついているのが見えました。私はその場に崩れ落ちました。アレが一体なんなのかはわかりませんが、嫌な予感ばかりが浮かび私はセメントで固められたようにその場を動けずにいました。

 もしかしたら、もう帰ってこないかもしれない。そんな嫌な予感ばかり浮かぶのです。

 遊園地が先程よりも広くなっているような気がしました。恐怖と不安で動けずにいるとコースターは戻ってきました。が、乗っているはずの美希がいませんでした。最悪な事に嫌な予感が的中してしまったのです。

 助けられなかった後悔とまだどこかにいるかもしれないという幽かな希望を胸に叫び続けました。


「美希ーー!美希ーー!どこーー!」


 ですが、何も反応はありません。私は遊園地中を探し回りました。ジェットコースターのレールの通り道は勿論、他のアトラクションや売店などもさがし、もしかしたらと思い、入場ゲートに戻っても見ましたがどこにも美希の姿はありませんでした。


「美希……。お願いだから返事してよ……」


 私は涙を流すしか出来ませんでした。

(ホントにもう、美希は……)

 途方に暮れていると目の前に人影が現れました。顔を上げるとそこには私のよく知った人物が立っていました。


「み……き?」

「うん、そうだよ。さぁこっち!早く行こ」

「待って!今までどこ行ってたの!?もう出ようよ!帰ろう!?」

「あとちょっとだけ。あっちに面白いものがあったから」


 そう行って美希は私の手を引いて走り出しました。着いた場所はミラーハウスと書かれていました。看板は廃れ、かなり古い感じの建物だった。アトラクションという感じは全くありません。


「さぁいこ!」


 そのまま私は美希に連れられるままミラーハウスに入ったのですが、さっきまで一緒だったはずの美希がいないのです。ずっと手を握られていて入ってくる道も1つだったはずなのですが。


「美希ーー!?どこなのーー?返事してよーー!」


 呼びかけても返事はありません。ふと見た先に美希の姿が見え、手を伸ばしましたがそれは鏡で周りも皆鏡。暗く、鏡だけが妖しげな光を放っているだけで何も見えませんでした。

 私はその場に立ち尽くすしか出来ませんでした。するとその時、背後から手首を掴まれました。


「きゃーーーー!助けて……誰か!」


 当然の事ながら返事はなくその手に強い力で鏡の中に引きずり込まれました。鏡の中は真っ暗で鏡の外が見える程度です。鏡の外を見ていると美希が姿を現しました。


「美希!助けて!出られないの!」


 ドンドンと強く拳で叩きましたが、美希は何も言わず、それどころか笑みを浮かべました。

(何で?何で笑ってるの)

 最初はただ聞こえないだけかと思いましたが違和感を覚え、美希の手首を見るそこにはあるはずの者が無かったのです。中学校の修学旅行の時におそろいで買ったリストバンド。いつもお互いにしていて今日もしていたはずなのにそれがないのです。


「美希……じゃない?あなた、誰なの!?」

「もうあなたは智里じゃない」

「どういう事!?私は智里だよ!あなたこそ美希の偽物じゃない!?」


 そういった後に私は恐怖ともなんとも言えない思いで声が出なくなりました。美希の後から1つの影が現れました。その影は徐々に鮮明にかたちどられハッキリとした人の姿になったのです。その姿は……私、だったのです。紛れも無い私自身でした。


「さようなら」


 目の前にいる私がそう言うと彼女達はその場から姿を消しました。


(私はこのままなの?ずっと、このまま……)


 真っ暗な中に1つ血塗られた手記が落ちていました。私はその手記を手に取って中を開きました。


(そっか、そうすればいいのか……)



 翌日、遊園地は寂れた工場跡になっていました。一体どこへ行ってしまったのでしょうか。

 彼女達の捜索願などは出ておらず、佐倉智里と小此木美希の2名はしっかりと存在しているのです。今、普通に生活を送っている彼女等は一体何者なのでしょうか。


「智里ーー。お弁当持ったー?」

「持ったよー!じゃあ、いってきまーす!」


(体があるって、ス……テ……キ♪)


 ★


『 如何でしたか?ジェットコースターで姿を消した美希さん、ミラーハウスで鏡の中に閉じ込められ、そのまま砕け散った智里さん。彼女達はどうなったのでしょうか。もしかしたら、次は彼女達が別の誰かとすり替わるのでしょうね。

 今あなたのとなりにいる人ももしかしたら偽物かも知れませんね。皆様も深夜の遊園地はお気をつけて。

 おっと、もう閉園時間のようですね。それではまたのご来園お待ちしております。生きておられれば……ですが……。くふふ……。良い人生を……』

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