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第7話

「待って!」


追っている。


めのところにモザイクのかかった男の人の顔は、わかりにくい。


「何で?」


私は、その人の腕を掴み、そう問う。


すると、その男の人は、私のほうを振り返る。


「ごめん…」


そう言い、私が掴んだ手から、離し、行ってしまう。


「嫌だよ、嫌だよ!」


追いかける。


やがて、追いつかず、泣き崩れる私。その場に座り込む。




私は、目がゆっくり、開いた。


自分の頰を触ると、雫が流れている。


……


少し、自分で驚く。


私は、その涙を手で拭った。



何の夢?


少し緊張感が走る空気が流れた。



そこに、突然、


トントン!


ドアを叩く音。


「愛菜、おはよー」


ドアの向こうで私の名前を呼ぶ声。


……


ドアが恐る恐る開き、目の前に現れたのは、


「起きた?」


お兄ちゃんだった。


私を起こしに来てくれたのだ。


「7時だよ」


「…あっ…はい…」


布団から顔を出し、暫く、ベットの上に座り込む。



私は、ある時のことを思い出す。



それは、私がまだ幼かった時。何歳からか覚えていないが、とにかく、まだ、物心がついていなかった気がする。


「愛菜、ごめんね」


「…」


泣きながら、


「嫌だ!嫌だ!」


大声で叫ぶ。とにかく、泣き噦る。


「行かないで!嫌だ!」


その男の子を追いかけようとする。


でも、まだ、幼い私は、彼には、追いつかない。


「待って!行かないで!」


ただ、追いかける。


その男の子は、


「ごめん…本当にごめん…」



薄っすらと残った記憶。


私は、部屋に飾られた一つの写真を手に取る。


「隆くん…」


思わず、口から溢れる名前。不思議と名前は、覚えている。


顔は、記憶の中に薄っすらと残っているだけで、はっきりとはわからない。


なんで、急に、また、思い出したんだろう…


この時の私も、まだ、何も知らなかった。



時計を見る。7時半を指していた。


「やばっ!」


起き上がり、急いで支度をし始めた。



その朝、教室に入ると、ざわざわとしていた。


いつもしているが、さらに、ざわざわだ。


「おはよー、真美ちゃん、芽衣ちゃん」


「おはよー、愛菜」


私は、自分の席にバックを置き、席を離れ、真美ちゃんと芽衣ちゃんが話しているところに行った。


「いつもより、ざわざわしてるね」


「愛菜、知ってた?」


「何を?」


少し間が空く。すると、


キンコーンカンコーンー!キンコーンカンコーンー!


チャイムが鳴った。


先生がいつもより、早く教室に入って来た。


ざわざわは、続く。


「みんな、静かにしろ!」


「…」


そんな時だった。


「入っていいぞ!」


教室のドアから踏み出して来た。


え?


「今日から、この一緒のクラスになる、坂田隆くんだ」


え?


私は、思った。今日、見た写真、夢で見た人影。


薄っすらと記憶に残っている名前。なんとなくの顔。


え?


自分の目を私は、疑う。疑うことしか、できなかった。


「坂田隆です、よろしくお願いします」


「坂田くんは、まだ、小さい時にここにいたらしいが、わからないことが多いと思うから、みんな、仲良く、してな!」


「はーい」


……


「じゃあ、席は…」


「愛菜の隣が空いてます」


1人の女の子が言う。


「そっか…じゃあ、そこに」


彼は、ゆっくりと歩いて来る。


そして、その席に座ろうとする前に、私を見て


「よろしく」


「うん…よろしくね…」


彼は、席に着く。


そして、朝礼は終わり、再び、教室はざわざわし始めた。



彼は私のことを覚えていないのだろうか…


そう思った。



彼の周りには、人が集まった。


女子からの人気は圧倒的だった。


しかし、男子からも馴染まれ、今日1日だけでも、彼は、既に馴染んでいた。


私は、空が隣にいることに、違和感を感じていた。



お昼休みのこと。


「愛菜、今日、お弁当は?」


「今日は、寝坊しちゃって…」


「そっか…」


「そう言えば、悠人くんは?」


「今日も、練習なんだって」


「えー!」


「しょうがないじゃん、ねえ、愛菜」


「…うん…」


少し寂しい。


会えない時間が増えると、少しだけ。


でも、悠人くんに、甘えることが出来ない。


「大会が近いから….」


私が口を開くと、


「そっか…」


少し、納得したような芽衣ちゃん。


「私、売店行ってくるね」


「りょ!」


「行ったら」


私は、売店に向かっていた。


その時、前から、彼が歩いて来た。


私の足は、恐る恐るになり、だんだんとゆっくりになる。


すれ違っていく横に並んだ時、


「久し振りだね」


「…」


「俺のこと、覚えてる?」


「…うん…」


彼の口元が上がっていた。


「あっあのさ…」


彼は、私に何かを話そうとするが、


「坂田くん!」


彼の名前を呼ぶ。


「どこに行ったのかなって」


「愛菜ちゃん、これから?」


「そうなんだ…一緒に食べる?」


「…あっ…大丈夫…私、真美ちゃんと芽衣ちゃんが待ってるから」


「そうなんだ…」


「じゃあ」


そう言い、彼を連れて行った。


少し寂しかった。


何を話そうとしたんだろう。


気になった。



私は、振り返ることを止め、真美ちゃんと芽衣ちゃんの元に歩いて戻って行った。


でも、やっぱり、気になった。


時々、記憶の中にいる少し寂しそうな男の子。


本当に会ったかはわからないが、夢の中で会う人。


なぜか、やけに頭から、彼が話そうとしたことが離れなかった。


その夜、スマホの画面が光った。


表示のところに悠人くんの名前が流れ、メッセージが流れる。


"日曜日の試合、良かったら、来てね"


なぜか、少し悠人くんへの罪を感じ、胸が痛かった。


なかなか、眠りにつけなかった。


月だけがそんな私を見ていた。

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