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第20話

それから、入院生活が始まって3日が経った。


病院のご飯は、もう飽き飽きとしていた。


「はーぁ」


ため息を吐いた。


病室のベットの上に座り込んで、箸が進まない私のところに看護師さんが


「愛菜さん!」


「…」


お盆の上に載った食器類。


中には、白米の入ったもの、豆腐とワカメの入った味噌汁、レタスとキュウリ、ワカメの入ったサラダ。そして、青魚。


どれも全然口をつけていない様子を見て、


「愛菜さん、食べないの?」


「…」


「愛菜さん…」


ポツン…


ポツン…


暫く沈黙の間が空いた。


ポツン、ポツン…


「ねえ、先生…?」


「うん?」


ポツン、ポツン…


なんでだろう…


何で、何で…


ポツン、ポツン…


何で?何で…?


目から…


涙が…


次から、次へと…


溢れて…


止まらないだろう…


ポツン、ポツン…


布団の一部が冷たい雫で、丸く滲んで、濡れた。


「どうしたらいいかな?」


「…え?」


ポツン、ポツン…


「あのね…」


間を空けてから、続けて


「私…彼に…」


よしよしというように、私の背中を摩った。


ゆっくりと私は、看護師さんに口を開いていた。


ごめんね…


ごめんね…


悠人くん…


でも…


あなたのこと…


暫くして、やっと、落ち着いた私。


「食べてください」


そう言い、私に箸を向けた。


「…」


首を縦にゆっくりと頷き、それを見て看護師さんは微笑んだ。


「…頂きます…」


箸を手に持ち、私は、もぐもぐとゆっくりと食べ始めた。


看護師さんは、私のその様子を見て、


「また、来るから」


そう言い、私のいる病室から出て去って行った。


………



食べ終わり、一息を付いていると、


「愛菜!」


病室から入って来たのは…


頼くんだった。


「久し振りだな、大丈夫?」


「頼くん….」


近くに置いてあった椅子に座った。


「大丈夫?」


「…うん!」


「良かった、元気そうで」


それに続けて、


「あっ!そうだ!」


手に持っていた袋から中身を取り出した。


「チーズケーキ、買って来たんだ、一緒に食べない?」


「食べる」


「最近さ、開いた店なんだけど、おいしいんだよ」


そう言い、


チーズケーキを2つの皿に分け、


「はい、どうぞ」


私にもう一つの皿のほうを渡した。


「ありがとう」


彼は微笑んだ。


「食べよう!」


そう彼は口を開き、二人で食べていた。


何のたわいのない話をしながら。


そんな時、彼が病室のドアのところに隠れていたなんて、知るよしもなかった。



頼くんが


「じゃあ、また、あとで」


そう言い、私に手を振り、行ってしまった。



それから、暫くして、


「愛菜!」


病室のドアのところから、彼の姿。


「悠人くん!」


「大丈夫か?」


「うん…」


「なら、良かったよ」


それに続けて、


「ねえ、悠人くん…」


話しかけている途中に、


「愛菜…」


「え?」


「退院したら、新しい店が出来たらしいから、そこに行こっか」


「…うん…」


彼が少し曇っている気がした。


「悠人くん?」


「うん?」


「あのさ…」


「さっきの…」


「うん?」


「うん?」


「うん?」


「あっ…ごめん…何でもないよ…」


「そっか…」


気まずい空気へと変わっていた。


沈黙の気まずい空気にあった中、風向きが変わる。


「好き…」


「え?」


私の顔を真っ直ぐに見る彼。


突然、不意に、


「好きだよ…」


「…」


「…」


………


「私も…」


「え?」


「好きだよ…」


「…」


「…」


二人して、顔を真っ赤にした。


彼は私の額に自分の額を合わた。


彼の手が優しくて暖かった。


そして、二人して、微笑み合った。


心の中で私は、


"好き"


そう思っていた。


外の風は、治りつつあった。

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