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第2話

ある日曜日のことだった。


朝、下へ降りて行き、


「おはよう…」


大きな欠伸をしながら階段を降りた。


ソファーの上に、男の人が座っていた。


その後ろ姿に思わず、


「お兄ちゃん?」


その私の声が聞こえたのか、その男の人は、振り返る。


私と目が合った瞬間、私の目は、大きく見開いた。


微笑みながら、


「よっ!久し振りだな、愛菜!」


私の目の前に現れたのは…



お兄ちゃんとは、血が繋がっていない。


母の再婚相手の子供だった。


再婚相手の人は、とても優しく、母のことを大切にしてくれていた。


まだ、5歳だった私は、その人を直ぐに受け入れられた。


その再婚相手側の子供がお兄ちゃんだった。


お兄ちゃんの印象は、とても優しくて、私を可愛がってくれた。


「愛菜ちゃん!」


まだ、単純な私は、満遍な笑みで彼のところへ行く。


そして、


「お兄ちゃん!」そう呼ぶ。


「お兄ちゃん、遊ぼー」


勉強をしているお兄ちゃんの邪魔ばかりしていた。


そんな私は、邪魔をしているなんて思っていなかった。


「いいよ、何する?」


「遊ぶー」


「公園に行こうか」


「うん!」


手を繋ぎ、歩いた。


寝る時も、


「お兄ちゃんと寝るー」


布団に勝手に入り、一緒に寝た。


「愛菜ね、大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになる!」


そんなことを言っていた。


「そっか…」


お兄ちゃんは、そんなことを気にするはずもなかった。


私は、お兄ちゃんのこと、大好きだった。



しかし、私が、中学生になって、


「お兄ちゃん!」


「どうした?愛菜」


「何でもない…呼んでみただけ」


だけど、中学生になって半年が経った時、お兄ちゃんは、結婚することになった。


私の心のガラスが割れた。


その為、お兄ちゃんは、結婚した相手の人のところに一緒に住むことになり、


「愛菜!元気でな」


そう言い、微笑みながら手を振り、行ってしまった。


お兄ちゃんに私は、片想いをしていた。



今、そんなお兄ちゃんが私の目の前にいる。


「え?お兄ちゃん、帰って来てたの?」


「うん…」


母が、キッチンから、こっちに来て、


「あー!愛菜、おはよう」


「…」


「お兄ちゃん、ここに一緒に住むことになったから」


「え?」


「あのね…愛菜…実は…」


「え?転勤?」


「そうなの…だから…」



つまり…


私とお兄ちゃんでここに残り、母とヒロさんは、転勤場所に行くと言う。


「…」


言葉を失った。


「えー」


思わず、大きな声が出てしまう。



私が何を言っても状況は、変わることはなく、そのようになった。


全ての始まりは、ここからだった。



そして、私には、3人の恋人がいる。


その日の日曜日は、蓮くんとの約束も断り、家で過ごすことになった。


お兄ちゃんと2人…


気まずかった。


久し振りの再会だし、何よりも何を話せば良いのか…



長い沈黙の空気が流れる。


静かに流れるテレビの音、少し吹いた風で揺れる音。


私は、本を読んでいた。


彼は、テレビを見ているようだ。


ゆっくりと、穏やかな時間だった。


ドキドキする。


何なんだろう…


ドキドキ


心臓の音が彼に聞こえそうなくらい。


「愛菜!」


私を呼ぶその声に振り返る。


「はい…」


「昼飯、どうする?」


「え?」


「何か、作ろうか」


「…」


彼は、立ち上がり、キッチンに立った。


少ししてから、良い香りが私の鼻に漂ってくる。


思わず、鼻がぴくぴくと鳴る。



「愛菜、出来たよ!」


私は、わざと目を瞑っていた。


「愛菜!愛菜…」


すぐ近くにあった毛布を彼は、私に、かけてくれた。


目を開けるタイミングを図っていたら…



目を覚ました。


少し薄暗くなった部屋の中。


彼が横伏せになって、テーブルのところで寝ている。


テーブルの上には、皿に乗ったオムライス。


そのオムライスを見て、小さい頃のことを思い出した。


よく、彼は、私に、オムライスを作ってくれた。


そのオムライスのケチャップで、"あいな"と書いてくれる。


その隣にニコちゃんマーク。


「あっ、ニコちゃん!」


小学生になった私は、そう言う。


「愛菜だよ」


そう言うのだ。


それでも、小学生の私は、喜んだ。


そして、美味しそうに食べるのだ。


顔にご飯粒をくっ付けながら。


「愛菜、ほっぺに付いてる」


そう言い、取ってくれる。


その付いたご飯粒を彼は食べる。


お兄ちゃんと2人でお留守番の時には、必ず、これ。



今のオムライスにも、そう書かれていた。


「懐かしい…」


思わず、口から溢れ、微笑む。


その時、思った。


あの頃の時と同じくらい、好きだってこと。


でも、彼には…


相手の人がいる。私なんかを相手にするはずがない。


私は、椅子に座り、スプーンを手に持ち、オムライスを口に含んだ。


「美味しい…」


何故か、目から雫が出てきた。


「何でだろう…」


出てきた涙を腕で拭い、食べ続けた。


あの頃と何も、変わらないニコちゃんの書かれたオムライスだった。



翌日のことだった。


目覚ましをかけ忘れ、見事、遅刻。


「やっやばーい」


急いで支度を終え、家を出ようとした時、


「愛菜、ちょっと、待って」


「え?遅刻しちゃうよ」


彼を待ち、鍵をする彼。


「よし、行こう!」


私の手を引っ張りながら、走り始める。


お兄ちゃんは、私の手をぎゅと握っている。


なんか、幸せ。


周りが避けている。


いや、お兄ちゃんが避けているのだ。


時間がゆっくりと流れている。


ドキドキ


心臓が高鳴る。


そして、はあはあとしながらも、ゆっくりと止まる。


お互いにはあはあとしている。


その姿を見合い、微笑みあった。


それぞれに、行く道で、手を振り、進み始める。


「愛菜!気を付けてな」


私は、うんと頷いた。


走った。


ドキドキ


止まらない。


ドキドキ


高鳴りながら、走る。


その時、気付いた。


私…私は…


お兄ちゃんのことが…ずっと…


自然と涙が流れた。


学校に着き、涙を腕で拭った。


下駄箱に着くと、悠斗くんがいた。


「悠斗くん…」


「おはよー」


「…おはよう….」


私の心の恋のバランスがバラバラになりそうだった。


まるで、ジグソーパズルの一つ一つのピースのように。

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