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第16話

あれは、風が暖かくなり始める季節だった。


僕が彼女に出会ったのは、まだ、幼くて、泣き虫であった幼稚園に通っていた頃である。


3歳だった。名前は、悠人。


出会い方は、少し変わっている。


僕は、友達と鬼ごっこをしていた。


友達が鬼をやっており、僕を追いかけて来る。


はははっ、はははっ


楽しんでいた。


しかし、走っていた僕は、友達が僕に触れようとした時、バタン!と倒れた。


転んだのだ。


それから、なかなか泣き止まず、


「おかあーさん!おかあーさん!」


そう泣きながら叫び始める。


それを見つけた彼女は、そっと近づいて来て、僕の頭をそっと撫でたのだ。


「どうしたの?」


優しく声を掛けながら、少し口元が上がった顔で。


その時、彼女の口元辺りしか、見えなかった。


はっきりと、顔が髪が邪魔して、見れなかったが、きっと、優しい顔をしてるんだと思った。


その彼女の暖かさが僕を惹きつけた。


その時、日差しは、彼女を照らしていて、彼女と日差しが重なったのが目に入ると、彼女が天使に見えた。


……


一目惚れだった。


包み込んだ風は、さらに、彼女を天使にさせた。



それから、僕は、彼女に声を掛けようと試みるのだが…


彼女の目の前に立つと、顔が赤くなってしまい、顔を隠そうと下を見る。


「あっ…あの…」


「…?」


僕の声で彼女は振り向く。


「何?」


「…」


ドキドキと心臓がうるさい。


声が出ない。


……


沈黙が続く。


彼女は、待っているようだった。


それなのに、僕は…


「…」


何も言わず、ただ、その場から走って去って行った。


言えない…


ドキドキした。


彼女が再び、天使に見えた。


……



そのまま、卒園してしまい、もう、彼女に会うことは、ないだろう、そう思っていた。



しかし、小学校に上がった時、彼女と廊下ですれ違った。


「え?」


風で彼女の髪が揺れている。


黒髪に少し茶色ぽっさが入っていて、つやつやのサラサラとしてそうな髪。


その髪に手を伸ばす僕。


触れたくなるような髪。


……


その彼女は、話していた友達と微笑みながら歩いていた。


……


僕は、勝手に運命だと思っていた。


まさか、彼女にまた、会えるなんて。



同じクラスになったのは、小学5年生の時。


しかも、誰かのせいで、席替えをすることになり、彼女の隣の席になった。


「…」


うれしすぎた。


こんな嬉しいこと、これから、先にあるのだろうか。


彼女は、モテた。


彼女を見つける度に、男の人に声を掛けられていた。


席替えをした時、


机の名前のところを見て、


「よろしくね、悠人くん」


「…うん….」


微笑みながらの彼女は、天使だ。


思い出す度に、ニヤニヤとしてしまう。



中学は、彼女が引っ越してしまい、会うことはなかったが、高校生になって、再びの再会した。


入学してから、2ヶ月経った時、廊下で彼女とすれ違った。


楽しそうに友達と話しながら、僕を通り過ぎていく。


……


やっぱり…



僕にチャンスが舞い上がって来た。


高校に慣れ始め、まあまあそこそこの日々を過ごしていた。


すれ違う度、彼女を目で追ってはいたが。


放課後、オレンジ色の夕日が彼女のいる教室を照らしていた。


偶然だろうか。


その教室のドアが開いており、その教室の中が見えた。


その教室のカーテンのところから、足が見える。


気になった。


一度、その場から過ぎていくが…


下駄箱まで、行き、靴を履き替えるまでしたが…


「ごめん!先に帰ってて!」


そう言い、上履きに再び履き替え、廊下を走る。


はあはあ


息が荒れながらも。


多分、あれは…


走り続ける。


はあはあ


……


その教室の近くまで来て、足がゆっくりになる。


はあはあ…


その教室の出入り口まで、来て、そっと、カーテンのところまで、そっと、近づいて行く。


しくしく…


「…」


しくしく…


「….」


彼女は、泣いている。


……


どう、言葉を掛けたらいいのか…


暫く、戸惑う。


……


「どうしたの?」


涙を持っているハンカチで拭っている。


そして、やっと、そのカーテンから、彼女が姿を見せた。


「悠人くん…?」


「うん…」


出そうになる涙をハンカチで抑える。


その彼女の姿に、


「どうしたの?」


「え?」


「何か、あったの?」


「….別に….」


彼女は、涙を抑えようと、少し上を向く。


「大丈夫?」


必死になって、抑えている。


そんな彼女を僕は、思わず、抱き締めてしまった。


「泣いていいよ」


風で、カーテンがその姿を僕達を隠した。


彼女は、泣いていた。



暫くして、落ち着いた彼女は、僕にゆっくりと、話してくれた。


少し衝撃的だったけど、叶わない相手だと思った。


「悠人くん…もう…大丈夫だよ….」.


鼻をすすり、そう言った私。


「…」


突然、その後、彼女が口を開いた。


「あっ…あのね…」


「うん?」


「私…本当の兄ちゃんじゃないんだけど…」


流れそうな雫。それでも、続ける。


「お母さんが再婚して、お兄ちゃんが出来たんだけどね…」


鼻をすする。


「そのお兄ちゃんのことを…」


「…」


「それでね….そのお兄ちゃんが…結婚することになって…」


「…」


ただ、僕は、黙って聞いていた。


どんな言葉を掛けたらいいのか、わからなかった。


雫が流れそうな彼女から目を逸らしてしまった。


「ねえ」


「うん?」


「僕と….付き合わない?」


「…え?」


……


沈黙が続く。


「僕で良ければ、代わりにはならないかもしれないけど…少しでも、その…」


「…」


やってしまった。


そう、思った。


しかし…


恥ずかしくなる僕に、


「ありがとう….」


彼女が発したその言葉に、


「え?」


「励ましてくれたんでしょ?」


「…」


「ありがとう」


少し微笑んだ顔で、彼女は、僕に言った。


それがきっかけか、彼女と友達になっていった。



同じクラスで、隣の席になった2年生。


「おはよう」


「おはよう….」


最初は、挨拶だけだったが、次第に、彼女の隣の席になったきっかけのせいか、話すようになった。


話すようになり、もっと、彼女と仲良くなりたいと思うようになる。


ただ、見ていられるだけで、いいと思っていたのに。


僕の欲望は、だんだんと、日々、増していったのだった。


今、思えば、彼女との出会いは、不思議だけど、運命ってあるんだと僕は、思った。こんな奇跡みたいなことが。

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