第1話
私には、彼氏がいる。
サッカー部に所属しており、スポーツ万能で、勉強も優秀。学年5位以内には、入っている。
勿論、女子からは、人気。放っておく筈がない。
女子だけでなく、友達も大勢いるし、彼の周りに、人がいないことはない。
そんな彼は、悠斗くん。
だけど、悠斗くんは、あまり一緒にいることを、束縛をしているわけではないけど、悠斗くんにとっては、束縛だったらしく、
「少し距離を置こう」
そう言われてしまった。
その時、私は、即座に、
「嫌だ!」
思わず、口から出る。そして、彼の腕を掴んでしまっていた。
あって、思った。
嫌われてしまう…
私は、彼から即座に手を離した。
「ごめん…」
下を向いてしまう。
完全に、彼から嫌われてしまった…
そう思った。
彼は、何も言わず、その場から離れていった。
翌日のことである。
待ち合わせをしていた訳でもないのに、朝、下駄箱で目が合う。
気まずかった。
目を直ぐに逸らし、その場から去った。
教室は、実を言うと…隣の席。
勿論、気まずい。
なるべく、窓の外を見るようにした。
しかし、昼休みになって、彼は、
「一緒に…」
私は、耳に入っていなかったかのように、
「一緒に、食べよう」
友達の真美ちゃんと、芽衣ちゃんのところに行った。
「良いけど…良いの?」
真美ちゃんが言う。
「何が?」
そう私が答えると、芽衣ちゃんが口を開く。
「彼は?」
「……」
2人は、
「うん、一緒に食べよう」
そのまま、その場では、何も聞かず、見守っていてくれていた。
私は、中身が、大好きなミントボールやそぼろご飯のお弁当だったのに、全然味がしなかった。
放課後、サッカー部が練習をしていた。
そこを通らなければならなかった。
足が止まる。
その姿に気付いた芽衣ちゃんが、
「愛菜、一緒に帰ろう」
そう言ってくれ、一緒に帰った。
「愛菜、何か、話したいこと、あったらいつでも話してね」
「うん…」
芽衣ちゃんは、私の頰を抓る。
「痛っ!」
「隠し事はなしだからね」
思わず、私は、涙が溢れてしまった。
私が落ち着いてから、カラオケに行き、思いっきり、歌った。
芽衣ちゃんに、話した。全部。
すると、
「ねえ、愛菜、明日、合コンするんだけど、来ない?」
「え?」
「良いよ、そんな男」
「え?」
「折角だからさ」
少し間が空いたから、
「行こう!」
そう言われ、戸惑った。
しかし、結局、翌日の放課後、行くことになった。
腕を引っ張られながらも、連れて行かれた。
その場に着いたが、まだ、相手側は、来ていなかったようだった。
しかし、少しして、男性陣が顔を出した。
驚いた。そこに、悠斗くんがいたから。
目の前に悠斗くんが座った。
「自己紹介から!」
お互いに自己紹介をして、始まった。
やはり、悠斗くんは、人気だ。
私とのことを知らない彼女2人は、悠斗くんのところへ。
私は、烏龍が入ったグラスを持ち、ごくごくと口に思いっきり、次々と含んだ。
皆んなが楽しんでいる中、私は、ただ、食べて飲んでいた。
すると、そこに、1人の男子が私のところへと来た。
「初めまして」
「はじめまして…」
「いや、去年、同じクラスになったんだけど、覚えてる?」
「え?」
「やっぱり、覚えてないか…」
「ごめん…」
そう謝ると、
「良いよ、別に…僕はね、川村蓮」
「あっ、私は、高橋愛菜です…」
「愛菜ちゃんか、よろしく」
「よろしく…」
直ぐに彼とは、仲良くなれた。
会話もそれなりに弾み、楽しんでいた。
その帰り、それぞれに分かれる時だった。
私は、
「芽衣ちゃん、私、帰るね」
「え?帰っちゃうの?」
「うん…」
「そっか…気を付けて帰ってね」
「うん…」
「バイバイ、また明日!」
「うん…また明日…」
友達と別れた後、帰り道を歩き出した。
その帰り道の途中だった。
「愛菜ちゃん!」
声を掛けられた。その声に振り向く。
はあはあと息を荒くさせながらも走って来る。
「川村さん!」
私のところに着き、はあはあと息が荒れている。
少ししてから、口を開いた。
「ごめんね…引き止めちゃって」
「いや、大丈夫です…」
まだ、はあはあとしている。
「あっ、ちょっと待ってて下さい」
私は、近くにあった自動販売機で水を買った。
彼のところに行き、
「あっ…すいません…あっあの…お水を…」
「ありがとう…」
彼は、口に水を含んだ。
「愛菜ちゃん、ありがとう」
「いいえ…」
「もう少し、話さない?」
「え?」
「まだ、大丈夫なら」
「あっ、全然大丈夫ですよ」
「よかった」
それから、少し雑談をした後のことだった。
「あっあのさ…良かったら、ケーバン教えてくれない?」
「え?」
「あっ!嫌だった?」
答えるのに少し間が空いた。
彼は、
「やっぱり、駄目…」
「あっ…良いですよ」
「え?本当に?」
「はい」
そう言い、ケーバンを交換した。
彼は、嬉しそうに、微笑みながら、ガッツポーズをしていた。
「送るよ」
「え?」
彼は、私の前を歩いた。
「あっあの…家、反対方向じゃ…」
「大丈夫だよ、気にしないで」
「…」
彼の背中は、広かった。
家に前へ到着し、
「また、連絡するね」
そう言い、去っていく。
「あっあの!ありがとうございます!」
その声が彼に届いたのか、歩きながらも、手を振っていた。
夕飯を食べ、お風呂に入り、ベットの上に横になり、スマホを手に取る。
スマホを覗くと、川村さんからのメッセージが来ていた。
私は、開いて見る。
"蓮だよー
今日は、楽しかったよ"
"愛菜です
私も今日、楽しかったです
送って頂き、ありがとうございました"
返事を返すと、直ぐに既読になった。
少しして、返って来た。
"返信、ありがとう
雑談が入り、もし良かったら、また、会いませんか?"
少し戸惑った。
それと、同じくらいに、悠斗くんからラインが来ていた。
"愛菜、こんな時間にごめん…
そして、此間は、ごめん…
あっあのさ…
もし、まだ、良かったら、やり直さない?"
胸が高鳴った。
嫌われたかと思っていたから。
"悠斗くん、私の方こそ、ごめんね
あっあっあの…
はい、よろしくお願いします"
ぎこちなかったかな?
直ぐに既読になった。
あっ、どうしよー…
それから、2週間が経って、下駄箱の中に、手紙が入っていた。
教室に行き、その手紙を開き、読んだ。
"僕は、ずっと、愛菜さんのこと、好きでした。
今も好きです
放課後、話したいことがあるので、校舎裏で待っています"
私は、放課後、その手紙を持ち、校舎裏に行った。
なかなか、姿が現れなかった。
「あっあの…すいません…こんなところに呼び出してしまって…」
間が空いた。
私は口を開こうとした。
しかし、それと同時に、彼が口を開いた。
「あの…付き合っている人がいても、いいので、僕と…付き合ってくれませんか?」
「え?」
「す…好きなんです….」
「ありがとう!」
「え?」
「うれしいよ…でも…私…彼氏いるし…他にも気になってる人がいるし…流石に、そんなには、欲張りかな…って…」
「それでも、いいです!よろしくお願いします!」
「…」
少し気まずい空気が流れる。
「じゃあ、考えておきます」
その時点で、彼は、ガッツポーズをしていた。
「やったー!よろしくお願いします!」
結局、今現在、3人の恋人がいる。
大好きな悠斗くん。蓮くん。そして、櫂くん。
付き合っている。
蓮くんと櫂くんは、勿論、それらの全てを知っている上で付き合っている。私に彼氏がいることも、3人の恋人がいることも。
勿論、悠斗くんが最優先。
それが、決まりごと。
しかし、悠斗くんだけが知らない。
今の状況も何も。
上手くバランスを保っている。
そのせいか、心に何かあったものが薄っすらと消えていった。
改めて、悠斗くんと付き合うことになってから、悠斗くんからのラインのメッセージは、増えた。
一緒に過ごす時間も増えた。
サッカー部は、土日休みってことは、あまりない。
しかし、ラインのやり取りをしていた時だった。
"日曜日…デートしない?"
そのメッセージに思わず、目を疑った。
"え?練習は?"
"その日、休みなんだ"
返信に少し戸惑った。
蓮くんと約束していたから。
うーん…悩んだ。
でも、蓮くんは、悠斗くん優先でいいと言ってくれるし…
"ごめんね、悠斗くん…
その日、お母さんと買い物に行くことになって…"
そう、私は、断った。
少ししてから、返信が返って来た。
"そっか…
じゃあ、また、後で"
私は、自分のベットの上に仰向けになり、
何をしてるだろう…私…
片手で持っていたスマホを置き、ため息を吐いた。
日曜日のことだった。
結局、蓮くんと会うことになった。
しかし、朝、目を覚まし
「おはよう…」
下へ降りて行くと、ソファーの上に座っている男の人。
え?
自分の目を疑う。
「お兄ちゃん?」
その男の人は、私の声に振り返る。
私の目は、大きく見開く。
「よっ!久し振りだな、愛菜!」
私の目の前に現れたのは….