インチキ霊能者
夕暮れ。
山の中。
9人。
2台の車。
懐中電灯係りは3人。
今は明るい為使用していない。
斎藤公彦 (きみひこ)「いねえ」
田中浩二「んなことねえよ、絶対居るって」
滝の心霊スポット。
斎藤「いねえって」
近藤「はははお前本当に見えてんの?」
斎藤「あ?」
田中「ば!?お前止めろ!コイツはそんな事言われるとやばいってあれほど注意してー」
矢島「こんなインチキ野郎放っておいてさっさと先行こうぜ?」
斎藤「・・」
下を向いている。
田中「あ・・あっちゃあ・・俺知らね~・・」
田中だけ車の方へ戻る。
宮島「だいたいこんな根暗野郎に霊が見えるって、ははは、どんなベタだよ!前髪長いし!切れよっての」
女達『きゃはは、「ちょっと~」「止めてよ~」「斎藤君が怒っちゃったら呪われるんじゃな~い?」「いや~ん、こわ~い」「滝より斎藤君の方がこわ~い」きゃははははは』
渡辺瑠香「ちょっと・・やめなよ・・約束したじゃん」
斎藤「・・約束したよな・・そういう事言わないって・・」
近藤「あ?」
矢島「だったら?んだよ?あ?やんのか?ああ?」
近藤「キモイんだよ、貧弱野郎が!〈ドン!〉」
斎藤を突き飛ばした。
尻餅を着く斎藤。
斎藤「・・成程な・・最初から俺をこうやっていたぶる為に・・っくっくっく」
〈ヒュウウウウウウウウ・・ザワザワザワ〉
皆『《ビク!》なに?なんだ?』
明らかに空気が冷えて行く。
斎藤「さ~って・・俺を笑った渡辺璃香 (るか)、田中以外は全員呪って貰うかあ・・ここの奴らに・・」
近藤「は?はああ?だってお前ここらにはいないってさっき・・」
矢島「そうだ、居ないって!」
斎藤「やばい奴らはいるさ・・ただ・・俺が居るからな・・俺が居ると・・俺が開放しない限り奴らも好き勝手出来ないんだ・・だがー・・」
皆『《ゴクリ》』
斎藤「俺が抑えるのをやめれば・・お前ら全員廃人確定~」
すうっと・・指を差しながら腕を横に回す。
近藤「・・は!や、やってらんねえ、馬鹿馬鹿しい!」
斎藤「謝れ」
近藤「はあ?」
斎藤「お前だけじゃない・・全員だ・・俺を笑った、この霊場を笑った者は今すぐ謝れば助けてやる」
全員『・・・・』
斎藤「謝れっつってんだよ!」
女1「・・なんか・・もう良くない?」
女2「そうね」
女3「私お腹空いた~」
斎藤を置いて皆で戻り始めた。
近藤「そしたらこれから皆で、田ん家で鍋パーティしようぜ~」
矢島「お!いいねえ~」
近藤「あ!ご~めん~、鍋は10人が限界だから、お前は来んな?な?悪いな、なんかははははは」
瑠香「ね・・ねえ・・何か・・ねえ・・何かおかしくない?」
瑠香一人だけが怯えている。
田中は一人車に戻ったようだ。
女1「なにが~?どうしたの?」
女2「さっきの話し気にしてんの~や~だ~、あんなの本気にしてたらこの先社会人やってけないよ~?」
女3「そ~そ」
瑠香「違うの!そうじゃなくて・・」
皆『・・?』
瑠香「何か・・聞こえない?」
皆『・・?』
《ズズ・・・パキキ・・うう・・ああ・・けて・・ジャシャ・・ズサ・・パキ・・》
周りから・・大勢の人間がよたよた歩いている?足音が・・聞こえる。
皆『・・・・「何か・・猿か・・何かだって・・はは・・」「そうだよ、気にする必要ナッシイング!」』
瑠香「・・」
斎藤を見る。
斎藤「・・」
皆を睨んでいる。
近藤「斎藤!お前、なにやってんだよ!冗談はもういいから、早くしろよ」
矢島「おいてけぼりと、プライドの狭間で奴は今必死に揺れ、そして戦っている」
女達『「きゃははは」「やだあ」「もう~」「矢島君ったら面白~い」』
斎藤「俺は一人で帰る」
女達『え?』
近藤「はあ?お前何すねてんだよ!、少し笑われたくらいでさあ!小学生かよ?」
矢島「皆に迷惑かけてんじゃねえよ!馬鹿!」
瑠香「・・」
斎藤「渡辺瑠香」
皆『!?』
女1「ちょ・・何・・呼び捨て?」
女2「ちょ、止めてよ・・怖いって」
斎藤「俺と一緒に電車で帰った方がいいぞ~・・田中はもう多分一人で帰っただろうしな」
近藤「はあ?」
斎藤「はあ?・・じゃねえよ・・約束だったろ?あいつと・・こうなったらあいつ一人で帰るって、ここに来る前に何度も確認したよな?」
矢島「ちょ・・まじかよ・・〈プルルル〉」
暫く。
矢島「まじかよアイツまじで出ねえし!」
近藤「・・ちょ・・マジで帰ったのか?」
女1「・・まあ・・マジだとしても・・詰めれば・・バンだし・・8人乗れるんじゃない?」
女2「そ、そうだよ・・」
女3「早く行こうよ~、暗くなっちゃうよ~?」
瑠香「・・」
斎藤「渡辺瑠香、最後だ・・俺と帰った方がいいぞ・・これ以上はもう言わない」
瑠香「え・・っと・・〈ガタガタガタ〉」
女1「ったく・・信じらんない!」
女2「ねえ!もう行こう!?あんな奴放っておいてさ!」
女3「行こう行こう!?」
近藤「はあ・・仕方ねえなあ・・んじゃ行くか!」
矢島「達者暮らせよ~、プライドの方が大事な哀れな者よ~」
瑠香「・・〈チラチラ〉」
斎藤「・・」
全員斎藤から見えなくなった。
斎藤「俺は忠告したぞ・・何でお前らみたいな・・」
過去シーン。
?「嘘つき~」
?「やあいやあい」
?「嘘つきは死ね!〈ブン!〉」
石を投げた。
〈ガツン!〉
頭に当たった。
血が垂れる。
?「うわあ、嘘つきの血だあ!」
?「いいじゃんもっとやろうぜ~〈ブン〉」
〈ガ、ガン、ガ〉
斎藤「うう・・うう・・痛い・・痛いよ・・止めてよ・・痛いよう・・」
現在。
斎藤「何でお前らみたいな魂も、何もかも・・雑魚みたいなゴミを助けなきゃいけないんだ馬鹿馬鹿しい」
斎藤「・・まあ・・」
瑠香を思い出す。
斎藤「・・本人がゴミを選んだんだ・・知った事じゃないな」
もうすぐ陽が沈む。
全員田中が本当に帰った事に腹を立てながらも車に乗り込んだ。
近藤「さあ・・イオンに寄ってく?」
女1「いいねえ」
女2「お酒もいっぱい買おうよ~」
女3「私牛肉食べた~い」
瑠香「・・わ・・私・・」
矢島「え?」
瑠香「や・・やっぱり私・・一人で帰るね?じゃ、じゃあ・・〈ガララア〉」
全員「ちょっちょ!?」
全員で説得するがー・・。
斎藤に犯される等の脅しも聞き流しー・・。
瑠香は斎藤とは一緒に帰らない、一人で帰ると言い、聞かない。
そうこう言っている内に斎藤が降りて来た。
斎藤「ん?」
全員『あ・・』
結局斎藤に襲わないよう念を押して、皆はバンで帰る事になり、斎藤、矢島、瑠香は電車で帰る事になった。
電車内。
矢島は瑠香に付きっきり。
斎藤「・・(知らんな・・ゴミを選ぶのはアイツだ・・俺は知らん、どいつもコイツもざまあ・・だがー・・一応・・忠告だけはしておくか・・俺が悪者にならない為に・・な・・)」
斎藤はさっさと2人とは違う駅で降りる用意。
2人は楽しく談笑中。
斎藤「・・おい渡辺瑠香・・」
瑠香「・・何?」
矢島「ああ?」
斎藤「はあ・・そいつはもう死んでるから・・付き合うのなら別にしろ」
2人『・・はあ?』
斎藤「・・いいか、忠告はしたからな・・選択はお前だから・・俺・・関係ないから・・」
瑠香「・・きっ~~~~も!!」
矢島「お前・・何か可哀想だな・・何か・・哀れだよ・・」
斎藤「っふ・・」〈プシューガーー〉
ドアが閉まり、動き出す。
《ウウウウーーー・・ガタン、ゴトン》
2人『・・』
斎藤を睨んでいる。
斎藤「可哀想・・か」
瑠香「・・」
睨んでいた斎藤から目を離したと同時に矢島にキス。
斎藤「あ!?・・あ~~・・・・・・あ~あ・・」
見送る。
斎藤の目に映る世界。
矢島「ん〈クチュ、ンチュ〉」
瑠香「んふ」 離れる。
瑠香「・・ビックリした?ごめんね?いきなり・・でも・・こうしないと付き纏われたら嫌だし・・」
矢島「ああ!なあんだ」
顔が映る。
矢島の目玉からミミズ?がうじゅうじゅと蠢いている。
周りには大量の幽霊が纏わりついて、矢島の頭、体を撫で回している。
矢嶋「本当に〈うじゅうじゅ〉びっくりしたよ~〈うじゅうじゅ〉いきなりキスするなんてさ~〈クチュ、うじゅ、なでなで、さわさわ〉」
瑠香「ええ~・・うふふ、ごめ~ん〈うにゅうにゅ〉」
もう2人が見えなくなる。
斎藤「(ふははは・・ははははは・・馬~鹿・・あ~あ・・俺への嫌味の為だけに・・ははは・・死ぬでやんの)・・はははは」
《ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン》
見えなくなった。
斎藤「(やっぱ・・ゴミとゴミは・・引き合うモンなのか?・・う~ん・・まあ・・いいか・・俺がお前の事好きだとでも?くははははは・・自惚れ過ぎだっつうの!うははははは!は~あ・・どうでもいいんだよお前なんか・・ただ・・俺が悪者になりたくないだけだっつうのくはははははは、馬~鹿・・ま!どうでもいいか・・あいつらが・・生きようが・・死のうが・・どっちに転ぼうが・・興味ないしな・・)ジュース買おう・・そうだな・・健康の為に・・水で!〈ピ、ガタン〉〈ピ〉お!?やっり!もう一本ゲットお」
翌朝。
斎藤アパートに田中が来た。
田中「なあ・・」
斎藤「ん~?」
斎藤はVRゲーム中。
田中「これ・・〈パサア〉」
斎藤の背中に投げる。
斎藤「あん?〈カチャ〉」
VRを外し・・見る。
新聞。
高速で黒のバンが高速の橋からハンドル操作誤り転落か?
鉄道にカップル飛び込みか?しかし、残る疑問が・・。
何故、乗った電車で自殺しなかったのか?
降りて暫く会話していたのを駅員が目撃していた!?。
そのままの状態で談笑中に次の列車が到着。
お互いに笑いながら飛び込んだとの駅員の証言多数!
とり憑かれていた!?
引き込む幽霊!?
田中「・・大学は大騒ぎだよ・・お前バイトだったから知らねえだろうけど・・どうせニュースとかお前見ないしな」
斎藤「あっそ・・としか言えねえなあ・・ふわあああ・・あ~・・眠い」
田中「お前・・罪悪感とか・・ねえの?」
斎藤「全く?だって俺、約束守っただけだし・・そもそも霊達から守るのを止めただけだし・・実際・・俺がいなきゃ同じ結果、結果」
田中「いやそうなんだけど・・」
斎藤「それに・・瑠香に最期はちゃんと忠告したんだ・・」
田中「んで?」
斎藤「俺に見せつける様に矢島?だっけ?あいつとキスしてやんの・・笑えたよ、俺への嫌味の為だけに呪に感染してやんの、本当お馬鹿」
田中「・・」
斎藤「あいつ・・矢島?に至っては・・俺の事可哀想とか、哀れとかいってたっけ?」
田中「そんな事言ったのか、アイツ」
斎藤「ああ、全く傑作だよ、目玉にミミズを大量に飼ってる奴に可哀想って言われたんだぜ?笑いを堪えるの大変だったよ」
田中「・・そうか・・そりゃあ・・まあ・・腹立つわな」
斎藤「だろ?」
田中「ああ」
斎藤「・・俺さ・・思うんだよね」
田中「何を?」
斎藤「見える奴にさ・・皆敬意っての?そういうのさ・・あんま、はらったりしないじゃん?」
田中「そうか?」
斎藤「そうだよ、アイツらといい、世間一般の奴らといいさ」
田中「ん~・・まあ・・見えないからなあ・・最初は疑うだろ?」
斎藤「・・違うんだなあ・・」
田中「何が?」
斎藤「最初は疑いから入ってもだな・・後でほんの少~し間違いだったり、言い間違いだったり、ニュアンス間違いだったりしただけで、世間はこれでもか~ってくらい非難、罵倒、馬鹿にするんだよ、180度豹変だぜ?」
田中「・・」
斎藤「誰だって普通の生活しててもそういう間違いってあんじゃん?全くない人間なんいないだろ?違うか?」
田中「まあ・・そうだな」
斎藤「だろうが?・・でもな?・・霊能者だけは許されないんだ」
田中「・・」
斎藤「変だろ?」
田中「・・」
斎藤「人間なんだよ・・霊能者も・・皆・・特別に見すぎてるのさ・・そして羨ましい」
田中「羨ましい?」
斎藤「ああ、特別な人間が皆から、ちやほやされて、金貰って・・有名人!ははははは、羨まし~い~〈くねくね〉」
田中「・・」
斎藤「・・だから・・間違いイコールボロが出た!出た出たぼ~ろ~〈くねくね〉ってな・・直ぐ馬鹿が馬鹿馬鹿言い出すんだ、死ぬほど羨ましかったら・・まあ・・死ね死ねの連呼さ・・留守電とかにな・・」
田中「・:」
斎藤「死ねって言う連中はな・・自分に呪いをかけてるのと同じなのにそれにすら気付かない・・ま!気づかないでいてくれた方が助かるんだが・・さっさと自分の言葉で死ねって思ってるよ、霊能者は」
田中「・・」
斎藤「全ては因果応報・・自業自得ってな」
田中「・・」
斎藤「俺は自分が悪者にならないようにするだけだ・・その結果がどうなろうが知らないな・・南米の誰かが銃で撃たれても気にしてないだろ?おまえも・・俺も・・皆も・・それと一緒さ・・」
田中「・・」
斎藤「だから・・俺が言いたいのは・・見える奴が気を遣う必要はないって事だ」
田中「・・」
斎藤「見えない奴はな・・霊能者は皆親切で、無償に尽くしてくれて、どんなに嫌な事を言っても、最後にはきっと助けてくれるって思ってんのさ」
田中「・・」
斎藤「んなわきゃね~だろ馬~鹿!!ってな!」
田中「・・」
斎藤「俺を馬鹿にした奴は助けない」
田中「・・」
斎藤「俺に嫌味や、無視や、ムカツク態度とった奴も助けない」
田中「・・」
斎藤「・・見えない癖に偉そうにすんじゃねえっての」
田中「・・」
斎藤「だから、・・まあ・・そういうこった、俺が罪悪感感じないのは!・・分かったか?」
田中「んじゃあ・・俺は?」
斎藤「・・」
田中「俺は助ける?」
斎藤「ああ、助けるよ、お前は俺が本物って確認する前に、俺を馬鹿にしなかったし、ムカツク態度もとらなかったからな」
田中「ホウ・・」
斎藤「まあ・・要はな?何で、普通の友達は、悪口言われたりしたら縁を切るのに、・・何で霊能者だけ許されないんだ?って事さ、霊能者だって人間だ簡単に見捨てるし、見放すし、縁だって切るさ」
田中「ああ・・全くその通りだな」
斎藤「だろ?」
田中「ああ」
斎藤「偽物、嘘つきは・・まあ、馬鹿にされたりも当然かもな・・だがな?」
田中「・・」
斎藤「・・本物だったら・・お前ら・・見捨てられて・・死ぬぜ?って事さ」
田中「〈ゴクリ〉」
斎藤「・・さってと・・美味しいピザがもうそろそろ・・ようし・・届く時間だ、楽しみだな~ははははははは」
Fine。