桜の木の下の再会
いつの時代も人は恋をする。恋は時に華やかであり、時に儚い。それはまるで花が咲きやがては散るのと同じものなのかもしれない。でもそこに゛奇跡゛という魔法が加われば永遠と咲き続けることも出来る。そしてここにも新たな永遠の花の蕾が開き始める。
3月も終わりに近づいてきたある日の朝。僕は街から少し離れた丘の上にある大きな桜の木の下にいた。来月から高校生になる。今思えば生まれてから毎年この桜を見に来ている。
「今年も綺麗な花を見せてくれてありがとう。」
桜の木に撫でるように触り、話しかけているとそれに応える様に優しい風が吹いた。そしてその風が呼んだのだろうか、後ろから声がした。
「よかったぁ、まだあったぁ。やっぱりここの桜が1番綺麗だなぁ。って、あれ?もしかして。」
声の高さからして女の子だ。だが、その声の方を振り返ってみるとそこには懐かしく幼い面影を残しながらも少し大人びた少女が立っていた。僕はその少女に見覚えがある。忘れるはずがない。
「やっぱり和くんだ。久しぶり。元気にしてた?」
そう言いながらにっこり微笑む少女。彼女は僕の幼馴染みであり、小学5年の時に転校して行った、舞華紗雪だ。
「元気だったよ。よく僕だってわかったね。」
「当たり前だよ。その独特の雰囲気は和君しかいないもん。」
この時僕はこの再会は桜が引き起こした奇跡なのかもしれないと思った。しかしこの奇跡は僕達にとって忘れられない、忘れることの出来ない物語を紡ぐ事になるとはこの時誰もわからなかった。