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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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臭いものに蓋?いいえ、綺麗に片付けます

ミハエルは頭痛を堪えるように額に手を添える、これで何度目の不祥事だ?

王宮より緊急の書状を送られて、これは他者を介しての返答では不味いと慌てて転移陣を使って

王宮の聖堂へと移動すれば、今まで孤児の虚言と放置された神父が異世界転生人が

神託にあったゼンコウジ神殿の司祭に指名されし聖人に対して人質を取り

"ヒブツ"と呼ばれる秘宝を奪えと脅されたと聞いて、こうも何度も何度もやらかしていると

神を奉る教会の中に闇ギルドのような反社会的組織を匿って活動させてると思われても仕方無い程の

愚行の数々にに指示を出したバカと実行したバカを始末したいとすらミハエルはチラと思う。


『ならば左様に致せ』


聖堂に響く厳かな声、それは居合わせた皆の耳に届いた。

そしてミハエルの手にした権杖の如意宝珠がカッと光り輝き、四方へとその光が走った。


「神罰が下された」


ミハエルは付き従ったマルチェロにキリアラナ国内全教会へ通達をと、簡潔に言葉を発した。


「此度の光はマトラ様の神罰、破門されし外道の者よ。

受けし者の額には聖典文字にて『否』を表す『≦』を焼き付けられた。

その印を持つ者、マトラーン(この世界)の者に有らず。

正命尽きるまで死も近寄らず、死してマトラ神の御許に逝く事も能わず。

浄化も為されず永劫地獄を彷徨う者為り」


ミハエルの口から出た神の言葉に居合わせた人々は

神罰がと震え、妃殿下付きの女官の一人が王に進言をと走り出す。


威圧感が凄い霊威が去れば我に帰ったミハエルが下知を待つマルチェロに続けて指示を出す。

至急外道に堕ちた者共の出頭命令と共に資産を凍結、没収して異世界よりの転移転生の申し出を

再び洗い出して疑わしき者でも何でも一度、魔法省管轄 王立魔法開発局異世界管理課にて

鑑定を受けさせる為の資金にせよと言い付けて転移陣へと送り出し、魔力を送って送り出す。

そして改めてグラーシアのほうに向き直りミハエルは深く頭を下げる。


「度々ご迷惑をおかけし誠に済まなく思う、此度はマトラ神様も大層お怒りであられるようで神罰を下された」


神より下された罰が明らかになれば、再び悪心を起こそうと思うものどもも自重するであろう。

そうして教会の内部に蔓延る悪しき心を持ち、信者の信心を利用し甘い蜜を吸う

害虫の如き外道に堕ちし者を排除し、清浄な神への祈りの場を取り戻すとミハエルは誓う。

それからと、グラーシア付きの女官達へ向かってミハエルは続けた。


「それと妃殿下についてだが、特にマトラ神様が目を掛けておられる神の寵児とも呼べる御方だが

過剰に聖別されたり尊貴の御身だからと妃殿下の為される事を制限されるのは宜しくない。

妃殿下がマトラ神様に気に入られておられる理由は『請願を立てし者』だからであり

市井において知恵を尽くし善良な民の助けとなる事こそ神のお喜びとなられる。

だからこそ要らぬ過保護と、権力を補強する為の道具としての利用は慎まれるが良かろう」


更に言葉を重ねるミハエルは深く頭を下げるシェンへと向き直り、視線を合わせるように

空いている椅子に掛け、やや屈み込むと手にした権杖をフワリと振った。


テーブルの上に置かれていた銀の茶器セットが浮かび上がり、円を描くように回り出したかと思うと

ティーポットの中に入っていた湯や茶葉は消え、砂糖壺の砂糖も、ミルクポットのミルクも同じ様に消滅し

ティーポットとミルクポットが銀の一塊になったかと思うと、意思を持ったかの動きで形を為して

シェンの目の前に降りていった。


「敬虔なる異世界より招きし信徒へ、要らぬ苦労を掛けた詫びとマトラ様よりの下され物だ」


真白のテーブルクロスの上に日本語で『1番星ラーメン』と刻まれた小ぶりの看板。


「マトラ神様は仰られた、ゼンコウジ神殿にて皆の糧としてそのラーメンを振る舞うと良いと。

それから…これも要るのであろう」


如意宝珠から残された砂糖壺に小さな光、中に満たされる白い粉。


「これは"ジュウソウ"という粉を幾ら使っても尽きる事の無い神器としたので活用すると良いと仰られた」


中華麺を打つのにかん水が要る、天然のかん水は干した海藻を焼いて灰塩を作り、

その灰塩に海水を注いでかん水を採るのだがシナノには海が無く、態々製造させ取り寄せるには

高額の手数料と輸送費が掛かるからこそのマトラ神からの贈り物なのだろう。


神器と化した砂糖壺を受け取ったシェンは驚きで言葉も無く、只々頭を下げるしか出来なかった。


「そうだ、このティーセットの対価は神殿に請求しては貰えまいか?

折角マトラ神様がこの者に授けた神器を、元は城の物だから寄越せと取り上げられては敵わん」


ミハエルの言葉にグラーシアは緩々と首を横に振り、此処にだした茶器一式は嫁入りの際に

実家より持たされた品故、王家の財貨に在らずと快く譲ってシェンに持たせると確約してくれた。

そしてミハエルは身に降りたマトラ神の神力にて得られた遠見の業で、遠く離れたモノヌイナ村の

小さな教会に軟禁されたヤーヤン司祭と孤児達は

神罰の下った外道に堕ちたと断ぜられた神官服の破落戸の魔の手から

マトラ神の神力にて救い出され、既にその身は中央神殿へと移されている。

それを聞かされたシェンは涙を堪え切れずに椅子から転げ落ちるようにミハエルの足元に平伏し、

何度も何度も礼を述べたのだった。


「さて、急な来訪にて大変失礼をしたが急を要する故に許されよ。

また改めて報告を兼ねて伺うとするが、今日はこの辺にて失礼させて貰いたい。

それとこのシェンとやらも養父と孤児達の無事を確かめたかろう、一緒に来るが良い」


ミハエルは転移陣にて辞去しようと聖堂に集うグラーシア達へと挨拶をし

強制的に王宮に呼びつけられたシェンを引き取って一緒に戻ろうと促せばシェンにも異存は無い。

グラーシアも快く送り出したのでその場は和やかに顔合わせを終える形となったようだ。

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