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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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追って王家の沙汰というところ

目を覚ませば既に控えているメイド達に傅かれ、世話されて城へ上がる為の支度に掛かる。

寝室に朝の湯浴みとバスタブが運ばれ、色を白くし肌理を整える温かい薬湯が満たされたかと思うと

垢擦り、香油マッサージ、洗髪から髪の艶出し、乾燥と結髪と様々な道具を手にした

専属のメイドが傅き、バスタブに身を沈めれば本人は何もせずとも磨かれ整えられた後に

高価な薬湯を落とし、新たな湯が満たされて十分に濯がれ柔らかなタオルで肌を拭われると

肌化粧の白粉がはたかれパフュームを振り掛けると頰に紅を掃き唇に差す。

そして柔らかな下着(シフト)を着けられコルセットでキリキリとウエストを締めれば背がシャンとする。

アラクネのストッキングを履き真珠の着いたガーターベルトで留め、ペチコートを着けパニエと

ヒップバッグでドレスの膨らませ更に丈の長いペチコートを一枚。

スタマッカー(胸当て)をシフトに留め、ドレスを着せ付けられてゆく。

そして流れるように湯を捨てたバスタブが片付けられるのを横目に化粧台に導かれ、結われた髪に

宝石が連なる髪飾りが、シルクサテンのリボンが、グラーシア好みの竜胆の花が次々と飾られ

王の御前に参内するに相応しい宮廷貴婦人の装いに飾り立てられてゆく。

今回の登城は王家のスキャンダルだけでなく神々の恩寵や加護、そして神罰が絡んでいる上に

教会の暴走といった問題まで孕んだ厄介極まりない案件だけに儀礼上もだが

気合いを入れるつもりで念入りな支度へと繋がった。


「お嬢様、お支度がお支度ですので此方を」


グラーシアの信念として何は無くとも先ずは食、特に朝食と朝茶は大事と、質と量が多い朝食が

着付けと化粧の為にワンプレートランチの形で供される事に恐縮しながらの女官頭のイザベラが

生臭を排した精進料理のつもりのサンドイッチを口元に差し出してくれるのを口に含みながら

念入りに装束を整え顔髪を作ってゆく。


「お嬢様、アダル様より此方を髪にと言付かって預かって参りました」


情報収集と、これからの私共(ファングル家)の意思確認の為にお父様の所へと向かわせたマリアが

アーダル様より紅玉の珠飾りが懐かしいデザインの簪を預かって来ました。


「この宝玉(オーブ)はクラウドさんがアダル様と火性を籠めてガラスを巻いて作られたそうです。

ここから彼の神様がお嬢様を見守るから御髪にと、是非にお着け頂いて下さりますよう」


ミハエル猊下は私を利用しようとは考えていないと仰られておられましたけれども

教会も一枚岩とはいかないようですし、王家もマムクール王家の後継問題に端を発した

ユリウス殿下の事と、神託と降って湧いたかの聖女?騒動の始末に苦慮されるでしょうし

騒動の渦中にある私とクラウド君の利用価値と王家の利をとの思惑もありましょう。


「ご配慮感謝致します」


一旦背を向け口内を嗽ぎ、手水を使うと宝珠の内に居られるだろうアーダル様に御礼申し上げて

イザベラの手によって簪を髪に挿す。

此処一番の大勝負のつもりでカーバングルの毛皮に額の宝玉を縫い付けたパンプスを履くと

王宮へ向かうべく立ち上がればイザベラに手を取られ馬車へ。


そうして父や兄が先に登城しているだろう王宮の、今回は教会やマトラ神様とムートン神様

お二柱にも関係する為大広間や応接間(ドローイングルーム)ではなく聖堂を使うとの事で

そちらへと続く廊下を二人の女騎士と女官に固められ進みます。


「ファングル公爵家御令嬢、レディ シナノ ・グラーシア ファングル嬢到着!」


王宮の聖堂の中の礼拝堂へと導かれた先に既にお父様と兄上、ミハエル猊下が居らっしゃいました。

そして私も父の脇に用意された席に着けば王様と王妃様の御臨席と相成り、深々と一礼(カテーシー)

お迎えすると一連の騒ぎの解決を目指したお話し合いとなります。


「先ずはグラーシア嬢に礼を言わねばな」


「そうですね、ベオヘルクのみならすユリウスまで…救いの手を差し伸べられたばかりか

ハインリヒの元に嫁がせて世話を掛けるのにシナノ一領では釣り合わぬ」


改めて着座して王様のお言葉を待てば私へと直にお礼を仰られて、それに王妃様も同じような

お声を下さり驚いてしまいます。

それでも私の驚きより重要な事柄は幾つもありますからその一言で話題が変わり、ユリウス殿下の

処遇を早々に決めてしまおうと議会に掛けるが既に決定したものとして

マムクール王家への婿入り婚、王配としての縁談の成立を宣言し再来年の春には出国なさると

彼方様とも早々に話が着いたそうです。

今回の王位と国の主権に群がる害虫の引き起こした醜聞を穏便に纏めようと二国間で何らかの

お話し合いがあったのでしょうね、マトラ神様やムートン神様の御神託も御座いますし。


そして昨夜のウチへ押し掛けて来た宗教のアレ、ホント迷惑だわ。

昔も居た、有難いお話しだからって忙しい夕方にいきなりピンポンして居座って

ダラダラ神様がどうのと胡散臭い絵のパンフレットを置いていく迷惑なあの人達の方が

徒党を組んで押し掛けなかっただけまだマシだと思います。


「ファングル卿と御息女には大変ご迷惑をお掛けした、誠に申し訳ない」


ミハエル猊下は立ち上がって此方へ向き直ると深々と頭を下げて謝罪をしてくださいました。


「まず当方で預かっていたアレ等を早々に引き取って貰いたい」


「承知している、既に衛兵隊が慮外者共を引き取りに其方へ向かっている。

そもそも聖職者と名乗り聖衣を纏いながら教会に身を置く者が"聖女"の何たるかすら知らぬとは

勉強があまりにも足りぬ故、そのまま神学校に戻して一から学び直させようと思う」


破門は厳し過ぎるが、公爵家に楯突いた者等をそのままにとはいかないので一応こういった

処置をしますから勘弁してくれという事なのでしょうけれど

文字通り「幼稚園からやり直しておいで」をされるのは恥ずかしいでしょうね。

神学校は外界とは遮断された祈りと神学の研鑽の場であって、窮屈な生活だと聞いていますから

今までのように寄進された財で贅沢をしたり部下を使って快適な生活とはいかなくなるでしょう。

マトラ神様の教会では贅沢も妻帯も禁止されていないから別に構いませんが、仮にも聖職者が

神様への浄財で贅沢しているのに違和感を感じているのですけれど、その辺りは今と昔と

世界が違うので迂闊に口に出して批判する訳にもいきませんので、お口にチャック。

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