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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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難儀な神様と鉄火肌

漸く邸内に入り旅装を解くべくグラーシアは自室へ、アーダルとクラウドは客間へと案内された。

アーダルは火と正義と良き戦士の神という尊い身ではあるが、神とバレると色々と煩いからと

『アダル』と名乗ってクラウドとパーティを組もうとしている冒険者という設定で

ファングル邸及び、人間界に滞在したいと言い出し周りの人間を驚愕させた。

一応神様のご要望なので表向きには納得したファングル邸に仕える皆だったが相手は神様、しかも

武門の家では正義とか猛々しさから尊ばれているアーダルなのである。

だが流石に今は亡きファングル公爵夫人、王妹 グロリアーナの輿入れと共に王家より遣わされ

ファングル興隆から仕え続けている家令であるヨルクである、神様の仰る通りにと意を汲んで頷き

家臣達も左様にせよと小声で命じると、クラウドと同等の客間へと案内したのであった。


「捕らえた神官共はどう致しましょう」


「先ずはお父様に報告して、一晩頭を冷やして貰いましょう」


「承知致しました」


ヨルクはファングル邸を取り巻いていた身の程知らず共を邸の地下牢に押し込めておけと

外で迎撃に当たった私兵団へと伝令を走らせると、客人の接待があると下がった。

旅塵を落として温かいものでも頂いて休もうかと当主 クリストフの帰宅を待っていれば

騒ぎを鎮めた頃に馬車が二台門を潜った。


目には見えずとも気配でどうやら客のようだと邸内で働く者達の動きを察知したアーダルは

隣の客室に落ち着いたクラウドの所へと押し掛けて、マジックバッグの中にストックされている

串焼きだの果実水を強請ってから軽く来客のようだと告げ、面倒は御免だと

クラウドの為に用意されたベッドに寝そべるとクラウドの手首を掴んで気怠い読書?を始めた。

漆黒黒羽宵闇之輝星が二次創作に使用した原作は勿論、引用した小説や文献、懐かしの漫画や

ハマったというエッセイや薀蓄本、好きだと書かれたアーティストのCDなんかを買いに

何度も自転車のペダルを漕いだ覚えがあるだけに、一回許してしまえば読み取りはご自由にと

日本で読み知った著作物やらドラマにアニメを好きに堪能する神様のやる事を

クラウドは許してしまっている。


「客人は女のようだな、竜殺しの英雄殿は後妻を娶るのか?」


「マジ?でもおグラさんの結婚の直前に態々ンな面倒ぶつけてくるかなぁ」


トウモロコシの粉を薄焼きにした皮に解したコカトリスの炙り焼きに野菜ペーストに

塩を混ぜ込んだ特製タレを馴染ませた具を巻いた屋台で買い込んであった

此方のファストフードを摘みながら、気配から憶測を語るアーダルにクラウドは憶測を一蹴。


「んなベタな昼ドラ展開なんて早々無いだろうけどさ、ここってガチ貴族ん家なんだよな…」


有り得そうな修羅場の予感に果実水を一口含みながらも先ずは今夜の食事は自室でとなるのかと

我が身の方に思考が寄るのは所詮他人事だからだろう。


「人の世とは難儀なものよの、偉くなったらなったで些事に翻弄され神経を擦り減らす人生」


「嫌な事言うなよ、折角剣と魔法のファンタジー世界に転生したからにはチートもあるし

成り上がりだ!ハーレムだNAISEIだ!って一応それなりに盛り上がってんのに

青少年の夢とか希望を圧し折る発言をしないの!」


「ん?すれば良かろう、好きでやっているのだからな。世間どころか家庭内にも

鬼やら魑魅魍魎が跋扈して苦労している中華料理屋のサッちゃんの話よりマシであろう」


「渡鬼と宮廷の権力闘争を一緒にすんなよ…ってか、そういうのも好きな訳?」


「サイフやタワシを食卓に上げる女房の話も気に入った、豚とはオークに似た生き物なのだろう?

役立たずの豚と叫んでいたがオークは豚と違って食えもせんし有用なドロップ品も落とさぬが

豚は食用になるのだろう、見た目の事をいいたいのか?だとしたらアレは当て嵌らぬし…

それにしてもヒロインが売られたり望まぬ妊娠をしたり簡単には産ませぬと嫌がらせがあったり

姑や継母や碌でも無い亭主に虐待されたりパトロンが出来たり…二次創作BLで定番の流れだな」


「あ〜一時期定番だったもんな受けの遊郭パロ、女体化妊娠で逃亡物は定番だし。

今は〇〇しないと出れない部屋or箱だよな、大体は本番なんだけど偶に肉体の一部を切断とか

病んデレが思い切りグロ方面でデレられる凄いお題」


昼間に放送されていたちょっとアレなドラマをそこまで気に入ってくれたのならスポンサーの

洗剤石鹸会社各社も本望だろうなと思いながら、引き合いに出されるのはヒロインの女優で無く

BL二次創作物等で受けポジションの男の子キャラなのが腐敗神だからか。


「サイフやタワシはともかく、サッちゃんの家庭問題より亭主の拵える焼売やら炒飯が食いたい」


「カクノさんの餃子とか旨そうだもんな、K楽程上手くは無いけど炒飯位なら作るぜ」


「本当か!?クラウドは良い人間だな、異世界とは何たる楽園」


上機嫌のアーダルがクラウドの肩をバシバシ叩いて某猫型ロボットに依存している少年と

ガキ大将とのハートフルでソウルフルな友情に似た絆を育んでいる最中、突然扉がノックされた。


「あ、はい、何でしょうか」


「お嬢様より当家にお客様がありましたのでクラウド ツチヤ準騎士殿と

同道されておられる冒険者殿におかれましてもご同席の上、

紹介なさりたいと当家主人が申しております」


キビキビとした動作の従僕が遣いとなっての伝言に、すぐ行くと答えて身繕いを済ませると

二人はグラーシア達の待つ食堂へと案内されていった。



+++++



「ショーンさん!」


「お久し振り、準騎士叙勲おめでとう〜」


ひらひらと手を振る有閑マダム、アーダルが会いたいとは言ってはいたが使者を遣わしたとしても

早過ぎやしないかと驚いて言葉も無く取り敢えず頭を下げるクラウド。


「王妃様からグラーシア様の輿入れに向けてのお手伝いをって命じられたからね」


既に儚くなられたグラーシアの母 グロリアーナは王妹という縁もあり、女手が入用だろうと

遣わされたのが王の私的諮問集団(取り巻き)の一人、シランス子爵の夫人であり

転移人特有の奇異なる物語りをし、貴族には無い冒険者特有の気風の良さと腕っ節が

貴婦人達には新鮮に写るのか、特に王妃気に入りで色々な夫人が催すサロンの

常連であるショーンが選ばれたのだ。


「それは表向き、王妃様からユリウス殿下の不始末の詫びを言付かってるのと

教会の暴走の詫びに連れてってくれって公爵閣下との仲立ちを頼まれたから」


隣の椅子に座す小学生位の男の子が困ったように頭を下げた。


「紹介するわね、マトラ神教大司教 ミハエル猊下よ」


「教会のミハエルだ、猊下はやめてくれ。此度はファングル公爵閣下、令嬢 グラーシア殿に

ウチの馬鹿者共が大変な迷惑をかけたと聞いて無理を言って押し掛けた。すまぬ」


口調と見た目の違和感にクラウドが同席しているクリストフとグラーシアに目をやれば

真実誠にその少年が大司教なのだと、無言のまま頷いた。

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