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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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業深き腐の道と信州人の夕べ

項垂れるクラウドに救いか慰めになるのかグラーシアは、いくら継承権の無い王族であろうとも

利用価値目当てに異世界人を無理矢理伴侶にはしないだろう事と、一応キリアラナ王国の国教である

マトラ教会では死刑に処せられる程では無いが、同性婚は忌避されているから同意も無しに

同性同士を娶せる事は無いだろうと言うと漸くクラウドは顔を上げた。


「そんならいいや、この国って同性同士の恋愛ってダメなの?」


「絶対駄目という程では無いでしょうけど生産性が無いでしょうに、後継ぎの要るお家とか王族でとなると

家族や周囲の反対が多い位で、死刑になったり差別される程嫌悪されてはいませんよ」


「良かった、ウッカリ漆黒黒羽宵闇(ノワール)先生の話しててBLが犯罪だったら命がいくつあっても足りないよ。

ってかさ差別されたりもしないって、コッチの方が結構その辺大らかなの?」


「偶にそういう方もいらっしゃいますしね、それに貴族子弟の一部は早くから軍の士官学校や宮廷

見習いとして王城に住み込んだりして同世代の同性の仲間と生活を共にしたりするじゃない?

学校こそ無いけれど、未婚の令嬢だって社交サロンやら文通だって女学校じゃあないけれど

お手紙に"チッスしたい"だの"熱いベーゼを贈ります"だの書いて姉妹の契り云々と言葉遊びのS(百合チック)

お友達付き合い等それなりに手近な環境で色々くっついたの惚れたの腫れたの言い出す事なんて

よくある事よ、言わば若い時期の麻疹みたいなものでしょう?

思春期真っ只中のお坊ちゃんお嬢さんの憧れやら初恋程度で犯罪だの死刑だの

そんな野暮な口出しする頭のおかしな人間なんて居やしないわよ」


ホホホと声を上げて笑うグラーシアに、ですわよね〜♪と同調するショーン夫人の様子に

ふと、思い当たるクラウドは疑惑の目を向けた。


「ショーンさん、貴女腐女子でしょ」


「え」


「先日お呼ばれした席でユリウス殿下推しとか言ってたのも気になったけど、漆黒黒羽宵闇(ノワール)先生が

好きって言ってのと結婚の情報とかまで詳しく教えてくれたじゃないですか?

旦那さんになった大御所二世とかなら解るけど、ラノベ作家のプライベートまでワイドショーじゃ

そんなに詳しく取り上げないっしょ、つまりはショーンさんは漆黒黒羽宵闇(ノワール)先生原作漫画を含め

本業の方のBL好きな腐女子か貴腐人なのかなぁと」


ジットリとした眼差しのクラウドの追求、絶対性別逆転したヒロイン♂と推しメン殿下を並べて妄想逞しく

薔薇咲き乱れる耽美な世界を側から満喫しようとしていたに違いない!と名探偵よろしく指を突き付ければ

不自然な程揺れるショーンの目線。


「…気の所為よ」


「判った、なら質問を変える。おグラさんも答えてくれる?」


「何でも答えますよ、でクラウド君は何が知りたいの」


腐女子も貴腐人も全く解って無いグラーシアも、前世界の自身の孫娘が関わる事ならと承諾する。


「武田と上杉、どっちが好き?で、直江と言ったら」


半眼のまま澱みなく矢継ぎ早に繰り出されるクラウドの質問に反射的に返された答え。


「上杉かしら、で直江 信綱がどうしたの?」


「信玄公かしらねぇ…亭主の生家じゃ関連のお祭りとかで昔から御名を見聞きしてましたし。

それから直江って大河ドラマの…えぇと兼続さんかしら、それが如何かしたの?」


「長野県北部は上杉贔屓、東信から中南信は武田贔屓が定説(※個人の嗜好等異論はあります)なのに

松本出身のショーンさんが上杉贔屓、そして有名な兼続で無く信綱の名前を咄嗟に答えた辺り

貴女は某青色背表紙(コバルト色)のサイキックアクション風BL伝奇小説のファンで、立派な腐女子だ!」


クラウドの偏見に満ちた決め付け、だがしかしそれはショーンの隠された趣味を的確に当てていたようで…


「何でバレたの!?」


「バレバレさ、漆黒黒羽宵闇(ノワール)先生のハイユリへの喰い付きといい俺がヒロインだったかも

ポジションってトコにも鼻息を荒くしてる今も、絶対生BLを拝んでやるぜ!とかイイぞもっとヤレ!とか

hshsとか言ってた母さんの興奮っぷりにそっくりだったからだよ」


「判ってても黙っててよ恥ずかしい!でも判るって事は貴方も同類でしょ!!」


「あぁそうさ、漆黒黒羽宵闇之輝星(ノワールひかり)ワールドにどっぷり嵌まって腐の毒に染まっちまったけど

だけどあくまで二次元世界を鑑賞するのが好きなだけで、リアル付き合うなら俺は女の子がいいです」


赤くなったり青くなったり忙しない2人に孫娘の書き物の所為で何か大変な事になっていると

グラーシアは話を元に戻そうと水を向けてみる。


「えぇと、ウチの陽子が何かご免なさいね?で、その陽子の書いた物が今回の事件のヒントになるのかしら」


「そうでしたわね、今はノワール先生より『イケ恋』のストーリーとその齟齬と弊害でしたわ」


落ち着けとばかりにワゴンの茶器を手に取り、替えの茶を淹れるクラウドの差し出した微温めの紅茶を

一口含んでショーンは改めてキリアラナが舞台の乙女ゲームの筋を説明し始める。


「ベオヘルグ殿下がメインの『イケ恋』では各キャラクターとの成婚のスイーツエンドと結婚までには至らず

結局は失恋してしまう残念エンドがあります。

その他に隠しキャラのクレールを攻略し、スイーツと残念の両エンドを迎えれば更に隠しルートが解放されて

全キャラを攻略して甘ったるい逆ハーレム完成のお姫様エンド、それなりに仲良くはなったけど誰とも

成婚までには至らず独身のまま良いお友達でいましょうエンドがあったわ」


「うん、エレミア嬢のような断罪エンドみたいな結末は無かったよな」


以前母親から提示された小遣いに釣られて、全ルートコンプを果たしたクラウドも同意して頷く。


「クラウド君は2は未プレイなのよね?続編のユリウス殿下メインの『イケ恋2』は…

これって王家の秘事に関わっちゃうけど大丈夫かしら」


ショーンは表情を引き締めて侍立する騎士や控えている女官達へと視線を巡らせれば

悠然と扇を広げたグラーシアは心配無用とばかりに言った。


「大丈夫よ、私が沈黙の陣を要求した程の内緒話をすると予め言っているんです。

漏らせば如何なるか解らないようなネズミは要りませんしねぇ」


パチリと扇を鳴らし居並ぶ女官達へ向けて牽制すれば、揃いのお仕着せに団子に結った髪で顔色を隠す

厚く塗り込められた白粉と紅の指された唇からは一切読み取れぬ動揺。

だがもうすぐ王家に嫁いでいずれ王妃となり、次代の王の母となるグラーシアが要らないと言ったのなら

それはもうこの世の何処にも居場所が無くなる事を意味しているとはグラーシア自身は意図せずとも

聞いた側はそう解釈する言葉である。


「でしたら言っても大丈夫かしら、いずれ時が来たら公表する事ですし。

ユリウス殿下が何故、王位継承権を持たないかと言いますと表向きは王妃様のお子では無いからですが

本当はユリウス殿下が"月眼"の持ち主だからなんです」


「つきめ?」


「漢字にしたら月に眼と書くのでしょうか、普通人間の瞳孔って円形ですよね?でも月眼という目は

瞳孔がヤギやヒツジと同じように横なのですぐに判るそうで、その月眼というのは王妃様のご実家マムクール王家の王族にまま見られる特徴でして王位継承権保持の絶対条件なのだそうです」


「もしかして今、そのマムクール王家に月眼の男子が居なくて次代の王が云々なんてテンプレ展開な訳?」


大体話の筋が読めたとクラウドが口を挟めば、ショーンはその通りだと頷いてゲームで知り得た

ユリウスの扱いについてキリアラナ王家とマムクール王家との詳しい内情を説明した。

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