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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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査問会。

二日酔いなぞポーションを呷れば一発でスッキリ無かった事にと、ウコンに輝くボトルやら

キャベツ色のキャップの付いたドリンクのメーカーが地団駄を踏みそうなミラクル異世界の朝が来た。


「おはよう、よく眠れまして?」


「……おはようございます」


ファングル公爵邸の食堂にて顔を合わせたグラーシアとクラウドは昨夜の失態を無かった事と流し、

爽やかな朝に似つかわしい艶々の炊き立てご飯と熱々のお味噌汁にレインボーサーモン(なんかテカテカした鮭)の切り身と

お葉漬けに卵焼きの朝食を前に挨拶を交わす。


「おはよう、君が異世界人のクラウド君だね」


後から入室してきた壮年の大柄な男が挨拶を交わす2人に声を掛けて上座へと。

彼こそがグラーシアの父親であり"ファングルの獅子"の二つ名を持つ竜殺しの英雄

キリアラナの守護神との呼び名も高い、クリストフ ファングルその人である。


「はじめまして、おはようございます。お嬢様には大変お世話になっておりますクラウドです」


単身でドラゴンを退けた生ける伝説 憧れのヒーローを前にクラウドの声が裏返るのを

微笑ましく見守りながら、固くならずとも良いと椅子に掛けるよう勧めるクリストフも座ると

早速朝食だとフォークを取り上げる。


「本日はよろしくお願い致しますね、お父様」


箸を取って鮭の切り身を解しながら父に語り掛けるグラーシア。


「解っておる、ジェイク如き糞ジャリに好き勝手されて堪るか」


ムシャムシャと豪快に白米に鮭を乗せて掻き込むクリストフが娘に応える。


「え、査問会にファングル公爵様も?」


無作為抽出の貴族として出席するにしても、関係者の親族なのだから不味いのではと首を傾げる

クラウドにグラーシアは違うのよと説明する。


「私は女ですからね、この国で女性と平民に参政権は認められてはいませんので

こういった場合私の後見として父が付き添って下さる事になっています」


「シナノの領主ってグラーシア様なんですよね?それなのに後見が要るんですか」


「あくまで彼処は私の化粧領として頂戴した土地です。名義は私でも、裁判や交渉やら公文書には

私だけでは無く後見人も要るのですよ、昔の旧民法みたいなものかしらね」


「娘が領地持ちというのも特別な事なんだ、最近の例だと王妃様が輿入れの際に化粧領として

マムクール王国の領地を割譲して所有されておられる、まぁ先代の戦争での手打ちの代金を王女の

持参金名目で待たせてマムクール王国側の体面を守ったって裏話が付くがな。

しかしそれにしてもお前、本当に平民か?コレと話していてもそうなんだがお前等の口から

ポンポンと参政権だの民法だの裁判なんて単語が出てくるのが不思議でな」


政治や法律等は王城に出仕出来る資格のある貴族男性の物、そんな小難しい言葉を平気で口に出す

平民や女性なんて見た事が無いとクリストフが、目の前に置かれたお代わりの白米の皿に

手を伸ばしながら娘達の会話に口を挟む。


「以前の私の若い頃は法や制度もキリアラナに近かったのですけれど、クラウド君の頃には

女性の参政権や二十歳以上の成人には選挙権と大分仕組みも変わったのですよ」


「あ、俺がコッチに来る前に選挙権が18歳に引き下げとか議論されてましたよ」


平皿にフォークで和食は難しいと、グラーシアが誂えさせておいた和食器で味噌汁を堪能する

クラウドが更に変更されそうな制度と言葉を添える。


「つくづく変わった世界なのだな…」


此方をファンタジーな異世界等と呼んではいるがキリアラナ人からしても日本は異世界なんだと

思い知らされながら朝食を済ませ、登城する支度を急いだ。



+++++



王城の広間の一室、査問会が王の名において開かれる。


爵位を剥奪されたジェイク ブーヨが引き出され衛兵に脇を固められ下座に着く。

そして一段上のテーブルに査問会の正当性を証言出来る資格のある証人貴族数名と当事者である

グラーシアと後見のファングル公爵、事件の証人である異世界管理課転生人管理の管理官

ショーン デ リヴィエール子爵夫人と後見を務める夫のリヴィエール子爵、

テーブルの脇に置かれた椅子に被害者のクラウド。


ジェイク ブーヨから伯爵位を剥奪する理由を司法官が読み上げる。


あくまで平民であるクラウドの被害に対する償いでは無く、有用性の高い異世界人の秘匿という

王を謀り王権を蔑ろにした事と、精霊の愛し子という称号を持ちあらゆる精霊を従え

精霊魔法を駆使する精霊使いを私的に占有しようとした国家反逆罪を問うものである。


「更に無辜の民に有りもしない脱税の罪で不当なる隷属を強いようと国家管理の魔道具である

隷属の首輪まで用意していたそうだな、其処なる異世界人の父よりシナノ領主へと

オーイアスフォリ領主印のある納税完了証が証拠として提出されておる。

何か申し開きはあるか、無ければ本日只今を以てブーヨ伯爵家断絶、オーイアスフォリ領は公収と致す。

されどブーヨ伯爵家の功績を尊重しその方には王より賜杯があるであろう、心して賜るがよい」


司法官の申し渡しに項垂れたまま反論する事無く小さく返事をしたブーヨ元伯。


国家反逆罪であれば当人は斬首が法ではあるが、代々のブーヨ伯爵家の功績と忠誠を鑑みて

"安らぎ草"という毒草を浸した薬酒での安楽死を王より許され、一族郎等共に処刑される所を

夫人は既に離縁して子を連れて実家へ戻っている為、親族の監視と子を修道院に入れる事を条件に

不問とし、ジェイクの母である先代ブーヨ伯爵夫人にも薬酒が下賜される事で決着した。

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