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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃
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目が覚めたら世界は一変

目覚めたら指は跡形も無く焼け落ち消し炭になった腕が再生してました、

流石に魔法のあるおとぎ話な世界よねぇと元通りの左手を動かしていれば

看病して下さった女中さんが私が起きた事に気付いたみたい。


「グラーシア様、お目覚めにございますか」


「えぇ、お世話になりましたようね」


「痛む所はごさいませんか?魔導師によるエクストラヒールと

ハイポーションで出来得る限りの治療は致しましたのですけれど」


何その高度先進医療は?


一応王子と一緒になるつもりでしたから王様やお父様より勿体無い程の、

大層な先生を付けて下さって勉強していたので

私に施された治療がどれだけ貴重なものか解ります。


肉体の欠損を再生させる薬だというハイポーションだって

先日その製法が開発されたとかでとても高価な物だとか、

更に言えば開発者の冒険家を囲い込もうと各国が動いてるとか何とか…


それに体を活性化させ時を巻き戻したかのように傷や老化を無かった事に出来る

エクストラヒールは使える魔導師が少ない難しい魔法で、

神殿の大司教様や宮廷魔導師の中でも王家のみに仕える役付きの方が使える位の

術式が複雑で難しく魔力を膨大に消費する高度な魔法。


王子の婚約者だったとはいえ、破棄を言い渡され王宮で騒ぎを起こした

行かず後家ならぬ行けず後家の私が受けられるような治療じゃあない。


しかもこのおとぎの国に健康保険なんて制度なんか無いから

治療費を考えると…あ、公爵家だから払えるか。


娘時分の医療事情を思い出す。家族に病人が出たと家に往診を頼む為に

田畑を売り尽くして小作人になったとか破産したなんて聞いた事があるし、

村じゃ医者にかかる事を芸者を揚げるのに引っ掛けて

『お医者を揚げる』なんて言い方もあった位の贅沢。


これから家の厄介者となる私にそんな高額な治療をと呆然としていたら

リン、と可愛らしいベルが鳴った。


「グラーシア様、王妃様とお父様がお見えでございます」


女中さんに言われて気付いた私の格好は寝間着と変わらない白い簡素なドレス、

見た事の無いベッドの上で寝転がったまま父や王妃様に会う

失礼をする訳にはいかないわと起き上がる。


「グラーシア様!?まだご無理をなさられては!」


「この姿で王妃様とお父様にお目にかかる訳にはいかないわ、

申し訳無いのだけれど失礼の無い程度に身支度を整えたいの」


知らない女中さんだけれどキビキビとした立ち居振る舞いに

きちんと教育された優秀な人だと思うので、

見苦しく無い程度にしてくれるようにお願いしてみれば簡単だけれどと

断りを入れ、髪を整え羽織る物を持って来てくれたけれど

ベッドから降りる事は許してくれなかった。


そんな問答をしていれば音も無くドアが開き侍女を連れた王妃様と、

その後ろをお父様が付いて部屋へ。


「良い、お楽になさい」


寝たままの非礼は不味いわとベッドから降りようとしたのだけれど

王妃様がそれを止め、そのままにと側にいる女中さんにも止められた。


「此度のベオヘルグの振る舞い、王妃として母として申し訳無く思います」


ベッドの横に王妃様と父の椅子を用意し、席が定まるのですが

その椅子に腰掛ける前に王妃様が私なんぞに勿体無くも頭を下げられます。


「王妃様ともあろうお方が私如き軽き者に頭を下げられるなんて

あってはならない事にございます!どうかそのような…」


寧ろ王族に楯突いての流血沙汰で夜会を台無しにした無礼者と

怒られるとばかり思ってましたので、王妃様のお詫びにビックリです。


「やはりそなたはファングル公爵の娘、父親と同じ事を言う」


漸く頭を上げて下さり椅子に掛けた王妃様がそんな事を言って微笑まれる。


「婚約破棄は承知致しましたが私への処罰はどうなるのでございましょう?

至らぬ私が王子に対しご無礼の数々、家とは縁を切り罰は受けます故

出来ますれば父へはお咎め無きよう伏して願いあげます」


ベッドの上で両手をつき頭を下げて王妃様へお願いします、

没落の辛さは身に、魂に染みて知っている。


前世と言うらしいのだけれど、この世界で令嬢と傅かれるような

身の上になる前の人生は養蚕と蚕種を扱う商売で財を成した家の一人娘でした。


それが世界恐慌に生糸相場の大暴落で財産がアッと言う間に無くなったけれど

何とか凌いだと思ったら婿入りしてくれた私の亭主が戦争に取られ…

三人の子供を抱え食べる物にも不自由し、何とか糊口を凌いで待っていた亭主が

辛くも引き揚げて帰って来たのは本当に良かったけれど、

今度はGHQが農地解放とかで家は辛うじて残ったけど田畑を失なってと。


あの時は土地と財産を無くしただけで済んだけれども、王族に楯突いた私を

王家は多分許す筈は無く、今度は一族を巻き込んで罪に問われる。


自分だけなら芋の茎だろうが木の皮だろうが齧って耐えれば良い…

そんな惨めな生活が親戚の小さな子供達にまで及ぶのかと、

今更ながら震えていればついた手を王妃様が優しく撫でて下さる。


「グラーシア、貴女はそのような事をせずとも良いのです。

貴女がベオヘルグを諌めて間違った行いを堂々と撥ね退けたから、

あの子を死なせずに済んだのです」


は?何で王子の方が死ぬのかと驚いて頭を上げれば

あの時、王子の一方的な婚約破棄という王の決定に逆らう行為と

王宮のホールでの抜剣という王への叛逆を意味する行い、


もう婚約破棄なぞ吹き飛ぶ叛逆という大罪を犯した息子は自死を賜るしかないと、

記録魔石の映像を見て王妃様は覚悟したらしい。


だけど私が言い返して剣を払い除け、更には玉砕覚悟の特攻と大怪我をしたお陰で

騒ぎが大きくなりすぎて今更"病死"と取り繕う事も叶わなくなった為、

王は怒りを露わにし王籍から名を削ると宣言したのだった。


自死であれば公式には病死と記録され死しても王族と遇され名誉は保てる、

だが権力を失って平民に落とされても生きてさえいれば…


王妃は母としてその決着に内心胸を撫で下ろしていたのだ。


「お父様」


王妃として口にしてはならぬ感謝をその手に籠める貴婦人に戸惑って

側に控える父に救いを求めて呼びかけたら、ただ疲れたろうとだけ。


「王家と我が家の方は」


「気にする必要は無い、グラーシアは王子との婚約をそう説明されていたか」


「はい」


ドラゴンを単騎で退けた英雄を王家に繋ぐ縁組みじゃなかったのかしらと

頷けば違うと言いたげなお父様。


「ファングルの獅子は王妹グロリアーナ様降嫁によって

お子を成した事によりこれ以上無い繋がりがある、

軍部へは貴女の兄 次期ファングル公爵カルロの近衛入りが確定しておれば

軍と王家の関係に不安のあろう筈も無いし、

寧ろ何故第三王子のベオヘルグが他国の王女と婚姻を結ばず

臣籍降下し新たな家を興すと思うか?」


そう言えばそうだ、部屋住みの厄介者でも王族ならば

同盟の証としてとか後継が王女のみの王家に王配としての婿入り等

それなりの縁組みの方が現実的だし有益でしょう。


「何故、私にでございましたか?」


今更ながら何故?と消えた縁の所以を伺えば思いもしなかった答えが返ってきた。


「アラクネ糸の改良と量産技術、その繰糸紡績なる技術導入により

ファングル領を発展させた貴女の知識が欲しかったからだ」

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