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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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遠方から来る

「馬鹿な事をしたものだな」


項垂れる元弟の情けない姿に同情すら浮かばない。


「貴様がこれでは断絶した旧ダフラシア領を預ける話も立ち消えとなるな」


王太子 ハインリヒの言葉にベオヘルクは驚いて顔を上げた。


エレミアは実家に連れ戻されると父の命を受けた私兵と数人のメイドの手で

毒杯を含まされ"病死"した。それでも王家と王の権威を傷付けた咎で男爵も

内々に貴族社会からの退場を仄めかされ、娘同様杯を呷って生涯を終えた。


既にエレミアの母である男爵夫人も亡く、家族兄弟もおらず親族縁戚も先の騒動の

飛び火を恐れ離れていった有様で、ダフラシア男爵家を相続する後継者も

男爵位を目当てに手を挙げる者も居らず断絶と相成った訳だが

空いたダフラシア領をどうするかと思案した時、公収し代官を派遣する案も出た。


それに待ったをかけたのが王、いや、そのその袖を引いて懇願した王妃。

王妃はマムクール王家から嫁いできて、その後見を受けている身故に

キリアラナ側としてもその発言は無碍にできる筈も無かった。


暫くは代官を置き管理させるが、程良き頃にベオベルクを取り立てた上で

ダフラシアを与え、ハインリヒの片腕とせよと内々に沙汰が下されたのだ。


その為にベオヘルクは身を慎み、グラーシアと距離を置いて既に無関係であると

兄 ハインリヒにアピールせねばならない。


「折角の母上の心遣いをお前は無にする愚か者だったか」


貴族社会に復帰出来る、その希望にベオヘルク顔を上げたが

其処に兄が醒めた目をして己を見下ろしていた。


「ま、今回は彼女も大目に見て内密に済ますと言うし、僕も血を分けた弟を

簡単に見捨てるきは無いから目を瞑るけれど、次は無いからな」


簡単には見捨てぬと口にしながら、兄 ハインリヒの眼差しは

まるで路傍の汚物を見るかの嫌悪に染まっていた。そしてその兄こそが次代の王、

その不興を買ったのだとベオヘルクは本能で悟って背を震わせた。

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