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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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24/116

聞こえてくる令嬢の噂と殿下の胸の内

本当はあの娘が他国へ、いや…他所の男の元へ行くのが許せなかったんだ。


だからあんな言い方をして自分との婚約を強引に取り付けた。

母上には小言を頂戴したが、グラーシアを王家に迎えるという事には

賛成であられたので叱られたりはされなかった。


だから早速フィアンセとなった挨拶をしようと白い花のブーケをを手にして

ファングル公爵本邸向かった。グラーシア自身はファングル領と

そして賜ったばかりのシナノ領への視察に旅立ち

留守なのは承知している、それでも礼儀なのだからと。


「これを愛しのグラーシアへ」


寧ろ花を手に女性側の屋敷に通うのは、貴方の娘さんを大事に想ってますと

家族へのフィアンセとしてのアピールなのだし、

婚約中に当事者同士が顔を合わせる事はあまり無いのだから

グラーシアが留守でも構うまいと非番で家に居た兄のカルロへ花を渡す。


「はぁ」


先程まで王宮で顔を突き合わせていたカルロがブーケを、何の茶番だと受け取る。


カルロの黒く澄んだ瞳と艶やかな黒髪は妹のグラーシアと同じ、

それは東方の王国から嫁がれた4代前の王母の持つ色だ。


その切れ長の目で睨まれると何とも言えない気分になる、この目が見たくて

グラーシアに婚約を迫り、今も花を携え足を運んだのだ。


「妹はファングルからシナノへ行くと留守にしておりますが」


「承知している、どうせグラーシアには会えないんだ、花を持って通う意味だって

ファングル側家族と私の顔合わせみたいなものだろう」


「それはそうですが」


カルロはブーケを贈り物を受け取る為だけに使われる専用の小テーブルに置き、

ハインリヒへ椅子を勧める。


「噂を聞いたか?」


「えぇ、ダフラシアの淫婦が儚くなられたとか」


礼儀としてメイド任せにはせず茶を淹れながら

王宮では出来ぬ話題を出すカルロに、その話よりグラーシアの快進撃について

知りたかったのになぁとハインリヒはファングルとシナノから

もたらされる利益の方がよっぽど重要なのにと大仰に天を仰ぐゼスチャーをするが

聞いていないのか聞かせる気が無いのか、

カルロはエミリアの最期について聞いた話を口にする。


「確かダフラシア男爵がマステマ通りで花売りをしていたエミリア嬢を

回収したんでしたっけ、それとヒモをしていた俳優崩れの男を捕らえて魔獣の餌。

エミリア嬢自身も生きていられては家の名誉に関わるからと"病死"と」


淹れられたのは紅茶、ハインリヒはソーサーごと手にして続きを引き取る。


「今度こそ真実の愛を見つけたとか、私こそが世界から愛されるヒロインだとか

神様から愛される為の能力を貰ったのに何故!?とか、叫んで暴れたから

大の男二人がかりで押さえ付けて毒杯を口に入れたらしいが?」


「それは大変でしたね」


押さえ付けられ、毒杯を無理矢理喉へと流し込まれて昇天したエミリアに

何の感慨も無いカルロは口先だけの悼みにもならない感想を吐く。


「何があの女の頭の中で起きたのかは知らんが、世界中から愛される

ヒロインとは妄想も極まれりだな」


「誠に、誰からも愛されるなどとは大層都合の良い妄想ですね」


「妄想もそこまてゆけば病気だろう、それよりグラーシアは息災か?」


礼儀の一杯に返礼としての一口、ハインリヒは口をつけてから話を打ち切り

話題をグラーシアへと持ってゆく。


それはフィアンセとしては当然の事なのだが、些か強引な話題転換にカルロは

眉を顰め、元気ですよとだけ答える。


「あのアホが迷惑をかけたみたいだね」


「あの者と王家とは今は関係無いのでしょう、確かに厚顔無恥にも謝れば

再び元の地位に帰れるとの甘い考えで声をかけたみたいですがね」


「腕一本焼いておきながら謝罪一つで元鞘に納まると考えているとは、

随分幸せと言おうか考えが足りないアホと言おうか

我が弟だったとは思えん思考の持ち主だったとは」


「グラーシアも簡単に考えすぎなんですよ」


王宮に各家から長い耳目が伸ばされているように、

王家からもスパイが各家へ配されている事など百も承知のカルロの返答。


「新種の煙草葉と救荒植物を発見したそうじゃないか」


「らしいですね」


報告は受けているのだろうが、まだ王家に言上する程の結果が出ていないと

言及を避けるカルロの言葉にこれ以上は何の成果も上げられないと

ハインリヒは降参と、今度こそきちんと茶を喫するのだった。

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