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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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119/122

神代の終わりと人類の営みと

「今のは何だったのでしょう…」


何処からか声が漏れる。

居合わせた方々を見回しつつ、掌に乗せられた黒曜石の内には高濃度の魔力が蠢き、異様な煌めきを放っている。


「あの御方は勇者の御一人、魔法使いのエーエン様に御座いました。

漸くアチラ(日本)に戻られてお幸せに過ごされていらっしゃるご様子、そして…」


受け取った膨大な歴史の記憶、その中にもはっきりと知れる怒り、そして(こご)った恨みの念。

仲間を、守るべき幼な子を我欲の為に殺された。

日本に戻れたのなら毒親とその愛人のヒモ男からの虐待の事実を公表し、然るべき手続きを踏んで

聖女ロマだった女の子を保護させた後はオショーが引き取れるよう働き掛ける予定だった。

旅の間、ロマちゃんは本当は嫌だった知らないオジサンの前でする変な事…

裸を見せたり卑猥なポーズを取ったりする事は彼女自身の為にも

世の中の常識においても良くない事なのだと学習し、もうママと呼ぶ生母の金蔓として

言いなりになるのは止そうと幼いなりに決心も着いていた。

そしてオショーの元に引き取られてから、もしそれが駄目でもモノノフの家に養女に行ったとして

何をしようか、将来は何になりたいだとか色んな夢を語った。


オショーの寺は幼稚園も経営していて、寺の境内にもブランコや滑り台といった遊具が置いてあり

近所の犬飼いさん達の絶好のお散歩スポットとなっているので沢山のワンコと仲良くなれるとか、

モノノフさんの家も子供達が独立したり嫁に行ったりと奥さんが寂しがっているから

ロマちゃんが来てくれたら嬉しいと何度も何度も語るうち、それが帰還へのモチベーションとなって

魔王を倒して日本へ帰ろう、帰ったら聖女ロマこと柳原 聖羅ちゃんを虐待親から救出しよう。

それから聖羅ちゃんを安全な場所に保護して引き取れたのなら、幸せの中で育てようと

未来を夢見、魔王討伐後のマトラ神様の報酬として願いを叶えるという約束を使って

彼女の未来の幸福を励みに歩き続け、戦っていたのだ。



「妃殿下、その石を」


手を伸ばしたのはゼネット伯。

魔法使いと名乗る女から贈られた黒曜石を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、バチっと大きな音を立てて

ガラス玉のような球体の結界らしい壁に閉じ込められたと思ったら、、、






それからキリアラナの魔塔の一室では無い何処か…私の知る日本と思しき風景。

辺りを見回せば駅のホームのようでした。


先程の魔法使い、いえ、上原 永遠さんの記憶ですね。

手にしたスマートフォンの画面表示にトークアプリの新着の通知が点滅しています。

キリアラナで光るだけの板と化したスマートフォンでは、アプリは開けないのですけども

偶々上原さんがテープに印刷出来る機械を持っていて、ラインのきゅー?何トカ?という

ラインの番号が判るシールを印刷して持っていたのを仲間に配ったのを使ったらしく

ヒイロこと、滝沢君が連絡をくれたようでした。


たった一文、『今、駅に向かっている』とだけ。

そうして暫く待っていれば滑り込む電車、ホームでの再会は現世では初対面。

召喚されて異世界で出会った頃の若々しい姿は上原さんにとって、百年振りに見た夫の姿。


「お待たせ」


アチラで死別してからの再会の第一声はアッサリしたもの、長く共にあり添い遂げた間柄でしょう関係に

今更言葉数は要らない親しみが感じられる沈黙。


「じゃあ行こうか」


手を繋いで駅を後にし近くのファミレスへ向かい、端の小さなテーブルに着いてから

ドリンクバーでコーヒーを2杯。

漸く人心地着いてから無言のまま魔法障壁を張る、そして口を開いて出た言葉は

キリアラナ王国の公用語のクレド語。


『あれからどうだった?』


『相変わらずのクソよ、アンタが死んだ後なんかもっと最悪。

タロウ(一人息子)の嫁が本性表して腹の末子を連れて城に逃げて、さっさと王子の婚約者に据えて

王家の血統に勇者の血を入れたとか喧伝し出すし』


『上手くいったの、それ?』


『15年後には盛大な結婚式を挙げて、5人も子供を産ませているわ』


『それでお前はどうしたんだ?』


ロマトモニ家(ウチ)も狙われていたから、さっさと距離を取って疎遠にしてたけど

タロウの孫を寄越せとしつこかったから領地に引っ込んだわよ。

私は隠居用に別邸を建ててソッチに引っ込んだわ、そのついでに色々と仕込んできたから…』


その先は言わずもがな、ゲスムゲリ王太子の血族のユナンセライス家もとい、キリアラナ王家と

その取り巻き連中に一泡吹かせる何かを仕掛けてきたのだと。


『ロマは一度、転生を果たせる程には回復したよ』


熱いコーヒーをフゥフゥ冷ましながら最初の一口を含んでからの

それからの語りに、男の目がまん丸に見開かれる。


「マジで!?」


思わず日本語で返してしまう程に驚くのは、聖羅ちゃんが戻れないのは魂が維持出来ないくらい

傷ついたからだと聞いていたから。


『あのゲス野郎とその一族に償いを求めたわ。

聖羅ちゃんはギリギリ消滅を免れただけで永い休息を必要としていたの。

それだと千年単位での休息を必要とするわ、その休息を助けるエネルギーとしてヤツ等の

魔力生命力を使ってヤツ等の魂を形代に傷を移し、キリアラナ花に寄せられた感謝や信仰を

聖羅ちゃんの欠けた魂の補修に充てて聖羅ちゃんの治療を最優先にマトラ神様は動かれたの。

それからコチラの魂の流れに合わせて転生もして魂の回復と浄化を促したそうなの。

私も150才まで生きてアチラの人生を終えてから神界でマトラ神様から聞いたところ、

ある程度回復した聖羅ちゃんの魂をリハビリがてら生を与えて一生を過ごさせたのだと仰られていたわ。

王都郊外の少し裕福なパン屋の娘、兄がパン焼き職人の修行をして店を継ぎ

聖羅ちゃんの生まれ変わりの娘は末っ子長女として家族から愛されて育って過ごしたそうよ。

結婚適齢期には近隣の好青年を何人も紹介されて結婚相手は選り取り見取り、

その中から真面目で働き者の素敵な男性を夫に選び、マトラ神様の加護もあって子供にも恵まれ、

大禍無く病気もせず穏やかで幸せな一生を過ごしたみたいだわ』


神界で目にした剥き出しの魂は小さいながらも艶々と光り輝いて綺麗だった。


『その、聖羅ちゃんの魂を連れて私は戻って来た』


「そっか…苦労かけたね、あのさ」


日本語で居住まいを正した滝沢君は頭を深々と下げて言った。


「もう一度僕と一緒になって欲しい、結婚しよう」


アチラでは日本人は5人、互いしか居なかったからなんて理由もあったのではないかと

有りもしない消去法で仕方無く夫婦になったのではないかとの不安を抱えての求婚のようでした。


「バカね、私は離婚した覚えは無いわよ」


涙声で応えた魔法使い、いえ、上原さんは帰還後の人生を共に戦って寄り添った彼と

再び歩き出す決断を下したようでした。

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