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ワカツクニ  作者: もじる
1/1

初筆

 本日は晴天なり。先日の嵐から一転して穏やかな

 いや、照りつける太陽の痛い事眩しい事。


「夏だなぁー」


 本当はすぐにでもこの邪魔な服を脱ぎ捨てて

 大きく広がるコーヤティヌの海で泳ぎたいのだけれども

 目の前の資料の山はそれを許してはくれない。


「コマー!ミユレー!」(コマー!見てみてー!)


 甲高い声が外から響いた。


 窓から見るといつものちびっ子が

 両手いっぱいに貝を抱えて大声で駈けてくる。

 ドタドタと荒々しく階段を上る音と共に

 瞬く間に扉は開かれた。


「チオピキティカクノヤプニオオキマキカピトゥリタリー!」

(潮が引いたからいっぱい貝が取れたよー!)


 目いっぱいの笑顔と貝を差し出して来たのはオルルカ。

 焼けた小麦色の肌と真紅の瞳、トレンドマークのリィウエの首飾りとすこし小さめの白い貫頭衣。

 今年で13歳になる彼女。背は一等に低いが子供達のリーダー的存在だ。

 お日様の子と言われているだけあって今日も元気がよろしい。


「コヨピパマキカピトゥカピティアナタヌチユプケニナリム」

 (今日は貝を使って楽しい夕食になるだろうね)


 私はオルルカの頭を撫で微笑んだ。


「チャレドゥ…」(けど…)


「イトゥケガラワチアチディアノチュマピケガチャヂ!」

(汚い足で私の部屋に入っちゃいかんでしょ!)


 私は撫でた手を切り返しチョップをお見舞いした。

 砂と足跡で汚された我が家の怒りを知るがよい。

 イタタと笑いながらオルルカはくるりと背を向け、貝を少し落としながらまたドタドタと階段を下りていった。


「ユプケパァアラノチュマピニキタマピヨ~!」

(夕飯は家に食べにおいでよ~!)


 …本日は晴天なり。

 蝉の声染み渡るのユプナギの村に夏が訪れた。

 私は夕飯を楽しみに嵐の過ぎ去った我が家を掃除するとしようか。

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