それでも愛してるから
ツイノベおよびプライベッターからの転載です。
とっても短いです。
「やめて……っ! お願い、やめて!」
そんな私の懇願に耳も貸さず、彼はにやりと嗤った。
いつもそう。私の言うことなんて聞いてくれやしないのに、自分の要求ばかり押し付けてきて。
気に入らなければ暴れて、私は涙をのんでぐっとこらえて言葉を尽くすが、結局は彼の要求をのむしかない。
何でこんなことやってるんだろう。
そう自問自答を繰り返し、もう2年は一緒に暮らしてきた。それでも離れられないのは、偏に私が彼を愛してるから。そして、口には登らなくても彼も私を愛し、必要としているから。
一日中彼に傅き、家事をこなしていると無性に辛い時もあるけれど、気まぐれな彼の笑顔一つでコロリと許してしまう私は、どう考えても所謂チョロインだ。
夜は夜で寝かしてもらえない時すらあるというのに、じぶんでもよく倒れないと苦笑する。
そして今も、彼は私を嘲笑うように私に背を向ける。私はそれを必死に追いかけた。グチャグチャにされて捨てられるのだけは絶対に嫌だ。
何としてでも彼の足を止めなくちゃ。全てが縺れ、絡まって取り返しのつかないことになる。もう、涙にくれるのはごめんだ。
私はやっと彼においつき、背中から腕を回して抱きついた。
「ダメよ、まあくん! それ、ママの大事なネックレス! 返してええええ!」
彼――――二歳になる息子のマサキは、にやりと笑って私のネックレスをグチャグチャっと両手で揉み上げた。
ああまた絡まった鎖をほどかなきゃ。
いたずらをしようとして見つかった時の子供の笑顔は天使で悪魔。とってもいいお顔でにやりと笑います。