君のための2割
また幼馴染みが泣いている。
あの子は昔から要領が悪い。
真面目でいい子だし外面も良くて愛想もいい。
それでもやはりどこかズレているのだ。
だから人一倍傷つく。
誰かのためと言って自分が傷つくような馬鹿なのだ。
ボロボロと大粒の涙を流す彼女。
「嘘つき、みんな嘘ばっかり。愛されない、愛しちゃいけない」
何故彼女は空回るのだろう。
何故彼女は分かり合えなかったのだろう。
あんなにも幸せそうに笑っていたのに。
相手に全てを背負わせたいわけじゃないが、彼女が全てを背負う必要もない。
イヤイヤと首を振り涙を流す彼女。
彼女の名を呼び肩を掴めば、さらに首を振る。
顔を上げようとはしない。
大丈夫だよ、大丈夫だよ。
私は貴女の幼馴染み。
ずっとそばにいた。
これからも傍にいるから。
「世界の2割の人は貴女が何をしても貴女を嫌いになるわ」
ビクリと肩を震わす。
それでも私は構わずに話し続ける。
「そして世界の6割の人は貴女の行動で好き嫌いが分かれる」
彼女の顎を掴み視線を合わせる。
涙に濡れた瞳。
真正面から彼女を見つめる。
「残り2割の人は貴女が何をしても貴女を好きでいてくれる」
パンッと彼女の頬を両手で挟む。
彼女は心根の優しい子だ。
それは一番近くにいた私が知っている。
だから自信を持って言える。
「私は貴女を好きでいる2割よ。絶対に、貴女を切り捨てない」
ハッキリとキッパリとそう宣言すれば、涙で濡れていた彼女の顔はキョトンとして、また泣き出す。
声を上げて泣き出す。
仕方ないなと私は笑い彼女を宥めてやる。
2割なんて少ないですか?
私はそうは思わない。
この広い世界の中で自分を好きでいてくれる2割を見つけられるなら。
それは、それは何よりも幸せなことだと思うから。
だから私は彼女の2割として存在する。
彼女の2割に私もなっていたら、それもまた私の幸せだから。