表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2014年/短編まとめ

君のための2割

作者: 文崎 美生

また幼馴染みが泣いている。


あの子は昔から要領が悪い。


真面目でいい子だし外面も良くて愛想もいい。


それでもやはりどこかズレているのだ。


だから人一倍傷つく。


誰かのためと言って自分が傷つくような馬鹿なのだ。


ボロボロと大粒の涙を流す彼女。


「嘘つき、みんな嘘ばっかり。愛されない、愛しちゃいけない」


何故彼女は空回るのだろう。


何故彼女は分かり合えなかったのだろう。


あんなにも幸せそうに笑っていたのに。


相手に全てを背負わせたいわけじゃないが、彼女が全てを背負う必要もない。


イヤイヤと首を振り涙を流す彼女。


彼女の名を呼び肩を掴めば、さらに首を振る。


顔を上げようとはしない。


大丈夫だよ、大丈夫だよ。


私は貴女の幼馴染み。


ずっとそばにいた。


これからも傍にいるから。


「世界の2割の人は貴女が何をしても貴女を嫌いになるわ」


ビクリと肩を震わす。


それでも私は構わずに話し続ける。


「そして世界の6割の人は貴女の行動で好き嫌いが分かれる」


彼女の顎を掴み視線を合わせる。


涙に濡れた瞳。


真正面から彼女を見つめる。


「残り2割の人は貴女が何をしても貴女を好きでいてくれる」


パンッと彼女の頬を両手で挟む。


彼女は心根の優しい子だ。


それは一番近くにいた私が知っている。


だから自信を持って言える。


「私は貴女を好きでいる2割よ。絶対に、貴女を切り捨てない」


ハッキリとキッパリとそう宣言すれば、涙で濡れていた彼女の顔はキョトンとして、また泣き出す。


声を上げて泣き出す。


仕方ないなと私は笑い彼女を宥めてやる。


2割なんて少ないですか?


私はそうは思わない。


この広い世界の中で自分を好きでいてくれる2割を見つけられるなら。


それは、それは何よりも幸せなことだと思うから。


だから私は彼女の2割として存在する。


彼女の2割に私もなっていたら、それもまた私の幸せだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ