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配信! ダンジョン情報! ~新人女子3人パーティの下流冒険者脱出作戦~  作者: 於田縫紀
第1部 奮闘! 底辺冒険者!

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3/10

第3話 稼げないパーティ

 そうして結成した私達青い薔薇(ブルーローズ)

 しかし最初は、残念ながら順調では無かった。

 何せ新人女子3人の寄せ集め。

 他の冒険者パーティと比べると、魔法以外の戦力と経験が圧倒的に不足している。


「当分は迷宮(ダンジョン)専門で、しかも第10階層までかなあ。あまりお金は稼げないかもしれないけれど」


 アリアの言う通りだろう。


「そうだね。命あっての物種だしさ。一般依頼を受けられる程の業績も無いし」


「妥当」


 そんな感じでアドストリジェン迷宮(ダンジョン)で活動を開始したのだけれど、とにかく儲からない。


 アドストリジェン迷宮(ダンジョン)の第10階層までの場合、出てくる魔物は、

 ○ ベーススライム(正銅貨1枚(100円)

 ○ ノルマルトード(正銅貨2枚(200円)

 ○ デミゴブリン(正銅貨5枚(500円)

といったところだ。


 括弧内は、倒して魔石を持ち帰った際の褒賞金の額。

 つまり正銀貨1枚(1万円)稼ぐには、デミゴブリンを20匹は討伐しなければならない。


 20匹討伐するのは大変だ。

 朝8の鐘(8時)から迷宮(ダンジョン)に入って、夕5の鐘(17時)まで休み無く魔物を探して狩っても、20匹いかない日の方が多い。


 現在の宿はアルスラ亭で、1泊1部屋小銀貨6枚(6千円)

 迷宮(ダンジョン)まで歩いて1スルザン(30分)ちょっとかかるけれど、治安が悪くない地区で3人部屋があって、部屋の内鍵がしっかりかかる。

 女子としての安全を確保するには、これ以下の宿には泊まれない。


 家を借りられれば、毎月の出費は少なくて済むのだろう。

 しかしそれには保証金が最低小金貨8枚(80万円)は必要。

 私達には到底無理。


 つまり3人部屋で我慢しても、収入と支出がほぼ同じくらい。

 休みなんてとても取れない状態だ。


 アリアがいるから身体的な疲労は回復できるし、軽い風邪くらいなら即日治療が可能。

 それでも休み無し毎日討伐は厳しすぎる。


「やっぱり第11階層から第15階層も攻めようか」


「だよね。これじゃ何かあったら即廃業になっちゃう」


「同意」


 そんな感じで翌日、第11階層に突入したところ……


「何この洞窟コウモリ(ケイブバット)、やたら数出てくるし、仲間を呼ぶし」


 洞窟コウモリ(ケイブバット)は、褒賞金正銅貨3枚(300円)の雑魚魔獣。

 私の剣か槍、アリアの杖の一撃が胴体に入れば一発で倒せる。


 しかし飛ぶし動きがそこそこ速いしで、討伐するのが面倒。

 おまけに牙に毒がある。

 だから戦闘中は気を抜けない。


 しかも戦闘中に仲間を呼ぶという嫌な性質まである。

 私とアリアで攻撃しまくるけれど、倒しても倒しても仲間を呼ぶので戦闘が終わらない。


「もう嫌! 何とかして!」


 アリアの悲鳴にも似た声。

 私もまったく同意見だ。


「レナード、お願い!」


「わかった。伏せて防御魔法」


「了解!」


 私とアリアは下に伏せ、防御魔法を起動する。

 これで洞窟コウモリ(ケイブバット)に襲われる事はない。

 防御魔法はあまり動くと解除されてしまうから、伏せたまま逃げられないけれど。


狂風インサニベンツ!」


 レナードが短縮呪文を唱える。

 風属性の全体攻撃魔法だ。


 ボトボトボト、周囲に何かが落ちてきている音がした。

 伏せているので見えないけれど、きっと洞窟コウモリ(ケイブバット)の死骸だろう。

 静かになった後、レナードの声。


「倒した。死骸回収急いで。この魔法、あと1回しか使えない」


「わかった」


 次の洞窟コウモリ(ケイブバット)が出てくる前に、此処から逃げなければならない。

 私達3人は回収袋に死骸を拾って、ダッシュで現場を後にする。


「こっちです」


 地図・探査担当のアリアの案内で、一番近いセーフティポイントへ無事到着。

 ほっと一息ついた後、魔石を取る為に回収袋から洞窟コウモリ(ケイブバット)の死骸を引っ張り出す。


洞窟コウモリ(ケイブバット)って、素材にはならないよね」


 それは魔物判別担当として勉強したから覚えている。


「残念だけれどならない。魔石1個で褒賞金が正銅貨3枚(300円)だけ」


「まとめて燃やして、魔石だけ取るしかないね」


「そう」


 死骸を集めて、私の火炎魔法で燃やす。

 こうすると魔石と灰だけが残る訳だ。

 嫌な臭いは風魔法で排気すればいい。


 私の魔法で処理するのは、レナードの魔力を温存するため。

 レナードは、範囲攻撃魔法や強威力の攻撃魔法を使えるから。


 第11階層から先は、デミではないゴブリン(小銀貨2枚(2,000円))やコボルト(小銀貨3枚(3,000円))が出る事がある。

 どちらも武器を持っていて、デミゴブリンや洞窟コウモリ(ケイブバット)よりずっと頑丈。

 しかも仲間を呼ぶ性質まである。


 万が一これらの魔物が出た場合、私やアリアの攻撃では倒しきれない。

 ぐずぐすしていると仲間を呼ばれて逃げられなくなる。

 つまり出たら、さっさとレナードの魔法で片付ける必要があるわけだ。

 そのためにもレナードの魔力は、出来る限り温存する方針という訳。


 そこそこいっぱいあった洞窟コウモリ(ケイブバット)が完全に灰になった。

 魔法で温度を下げて、残った魔石を拾いながら数えつつポーチに仕舞う。

 思ったより少ない。


「18個、正銅貨54枚分(5,400円)にしかならない」 


 正直がっかりだ。


「これだけ苦労してもそれだけかあ」


「同意」


 アリアやレナードも私と同じ気持ちの模様。


 1日の生活費は、最低でも小銀貨8枚(8,000円)は必要だ。

 これは宿代を払った後、食事を自炊した場合の最低額。

 つまり今の洞窟コウモリ(ケイブバット)討伐では、そこまで稼げなかった訳だ。


 今の戦いで、私は疲れ切っている。

 アリアもきっと同じだろう。

 レナードも魔力大きめの魔法を使ったし、本当は宿に戻って休みたい。


 しかも地面に伏せたので、服が汚れている。

 回収袋も洞窟コウモリ(ケイブバット)の体液で汚れている。

 出来れば今日はもう宿で休んで、明日はゆっくりお洗濯なんてしたいところ。

 しかし財政事情がそれを許さない。


「今日、他にどれくらい討伐したかなあ?」


 そんなアリアに残念なお知らせだ。


「ベーススライム2匹と、ノルマルトード1匹だけ」


 つまり1日の生活費(ノルマ)に足りない状態。

 

「ここでもう少し休んで、それから浅い階層でデミゴブリン探しするしかないね」


「仕方ないけれど、それしかないなあ」


「同意」


 私達3人は顔を見合わせて溜め息をついた。


 ◇◇◇


 結局この日は、全部あわせても収入が正銀貨1枚(1万円)に届かなかった。

 1日の最低生活費(ノルマ)小銀貨8枚(8,000円)は何とかクリアしたけれど、余裕は全く無い。


「宿についたらたらいを借りて、服と収納袋を洗おうか。洗剤は買えないけれど、水とお湯で洗えば綺麗になるよね」


「だね。ただ討伐用の服も少しくたびれてきたなあ」


 洗うとその分服もくたびれる。

 しかし……


「洗わないと臭くなるし仕方ない」


「そうだよね。もう1着買えるようなお金はないし」


 そんな感じで第1回第11階層挑戦は失敗に終わったのだった。


 ◇◇◇


 しかし第10階層までで魔物討伐をしていると、やっぱり稼ぎが少ないし身体的にもハード。

 ごく最初の頃と比べると、魔物が多い場所なんかもわかるようになった分、少しはマシになったけれど。

 だからその後も3回ほど、第11階層に挑戦。


 勿論洞窟コウモリ(ケイブバット)対策は考えた。

 足音を潜めて行く作戦は失敗。


 奴ら、第11階層のあちこちにいる。

 どうルートを考えても他の魔物より先に出遭ってしまうのだ。

 出遭ってしまえば、最初の時と同じ事の繰り返し。


 次に考えたのは、洞窟コウモリ(ケイブバット)と戦う事前提の作戦。

 できるだけ多く集めて、レナードの魔法で一気に倒して数を稼ごうというものだ。

 1匹あたり正銅貨3枚(300円)でも、34匹倒せば正銀貨1枚(1万円)を超えるから。


 この作戦も、上手くいかなかった。

 こっちが防御に徹していると、洞窟コウモリ(ケイブバット)は仲間を呼ばない。

 仲間を呼ばせるには、こっちも戦いまくって洞窟コウモリ(ケイブバット)に危機感を持たせる必要があるようだ。


 ただ戦いまくると、34匹集まるまで私とアリアが持たない。

 奴らは素早いし複数いるので、注意しても引っかかれたり噛みつかれたりする。

 疲れて私達の動きが鈍くなるともう一発だ。


 しかも洞窟コウモリ(ケイブバット)の牙には毒がある。

 勿論万が一毒状態になっても、アリアの治療回復魔法で治せる。

 しかしアリアの魔力も無限じゃない。

 毒治療5回と治療回復4回で魔力は空。 

  

 結局3回目の挑戦でも耐えきれず、25匹程度でレナードの魔法を使う羽目に。

 結果、私達は第11階層で稼ぐ事を諦めた。


「何か別の方法を考えないと無理だよね」


「でも第11階層で無理なら、その先はもっと危ないと思う」


「同意」


 そんな感じで、再び第10階層までで討伐をする方針に戻ったのだった。

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