ハプニング
ぬぉぉぉ!? 傘持ってきてない!
自転車に乗った瞬間、 いきなり大雨が降ってきた。
何処かに雨宿りをするよりも、家に帰った方がいいと思って急ぐ。
結局、家に着く頃にはびしょ濡れになってしまう。
「か、鍵……! と、とにかく、風呂場に直行しないと」
幸い、洗面所は玄関のすぐ横だ。
そこまで濡らすことなくいけるはず。
俺は靴を脱いで、最小限の動きで洗面所を開ける。
「あっ、お姉さ……ふぇ?」
「………はっ?」
目の前には振り向き様で、下着姿の美少女がいた。
足は引き締まってお尻はぷりんとし、背中がめちゃくちゃ綺麗。
大きな胸は、横からでも綺麗なラインを描いていた。
その女の子……松浦さんと目があったまま固まってしまう。
「………」
「………松浦さん?」
「キャ——キャァァァァ!?」
「わぁ!? ごめんなさい!」
俺は慌てて洗面所の扉を閉める!
すると、ドタドタと姉さんが階段から降りてきた。
「なに!? なにが……あんた、覗いたの?」
「い、いや! そんなつもりは!」
「ふぅ……そうよね、こっちもイレギュラーだったし鍵はかけなかったし。ただ、いいって言うまで外にいなさい」
「えっ? お、俺、びしょ濡れ……」
「私がその間に、謝っておくから……なにか文句が?」
「い、いえ! お願いします!」
俺は濡れたまま、外へと引き返すのだった。
俺はと言えば、ずっと頭から映像が離れませんでした。
それから、数分後……玄関の扉が開く。
「ほら、あんたもお風呂に入りなさい」
「ほっ、やっと入れる。というか、どうして松浦さんが?」
「それは後で本人に聞きなさい」
「それもそっか。とりあえず、シャワー浴びてくる」
姉さんが敷いてくれたタオルの上を渡って洗面所に向かう。
すると、何かいつもの違う香りがした。
多分……松浦さんの香りだ。
というか、さっきまでお風呂場にいたってこと?
「……俺は変態かっ」
罪悪感と煩悩を振り払って、俺は思い切りシャワーを浴びるのだった。
◇
お風呂から出て、リビングに行くと……松浦さんがいた。
その顔は怒っているのか、困っているのか複雑な表情を浮かべていた。
「す、すみませんでした!」
「むぅ……恥ずかしいけど怒るのも違うし、裸ってわけじゃないし……許します」
「ほっ、良かった」
ひとまずは許されたらしい。
ただ、色々と疑問があるけど。
「まあ、私も悪かったわ。まさか、あのタイミングで帰ってくるとは思わなかったから。あんた、今日は遅かったのね?」
「教室で居眠りしちゃってさ。それで、起きたら一時間くらい経ってたみたい」
「あんたも慣れないバイトとかで疲れてるのかもね」
「よ、吉野君、教室にいたの?」
「えっ? そういうことになるね」
「そ、そうなんだ……グスッ」
すると、その目から涙が溢れる。
「ど、どうしたの!?」
「もしかして、泣いてた原因はあんたなの?」
「ち、違いますっ。ごめんなさい……もう、大丈夫ですから」
「……ひとまず、二人ともテーブルに座りなさい。今、お茶が用意できるから」
その言葉に従い、俺と松浦さんは向かい合って座る。
俺は目が中々合わせられず、視線が宙を彷徨う。
すると、姉さんがお茶を持ってやってくる。
「あんた達、二人にして視線が泳いでるわよ」
「うぅー……」
「し、仕方なくない?」
「ふふ、若いって良いわね。それで、説明だけど……私もよくわかってないわ。ただ仕事帰りに、雨に濡れてた松浦さんを連れてきたって感じ」
「仕事帰りに……?」
姉さんの仕事場は、俺が通う学校の途中にはある。
ただ、そこは降りるような駅はなかったはず。
「す、少し走りたくなったの。そしたら、雨が降ってきちゃって」
「あぁー、体育祭もあるからかな」
「そ、そう! ……あの、私、帰りますね」
「今日はその方がいいわね。多分、落ち着かないだろうし」
姉さんの言う通りなので、俺も賛成する。
そして雨も止んでいたので、玄関で松浦さんを見送った。
ただ……結局、あの涙はなんだったのだろうか?




