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男だと思っていたネトゲ友達が、同じクラスの美少女だった  作者: おとら@9シリーズ商業化


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勇気を振り絞る

……待て待て、落ち着いて。


俺はアキラさんと知り合ってから三年は経ってる。


その時のアキラさんは、すでに長年やってきたネトゲプレイヤーだった。


そうなると色々とおかしいし、しかも声も聞いたことあるし、断じて女の子ではないはず。


「……つまり、どういうこと?」


「私がアキラなの! うわぁー、まさかスレイさんが同じクラスの男の子だなんて」


「わ、わかったから、少し離れようか? ねっ?」


「えー、仕方ないなぁ」


さっきから良い香りがするし、フニュンって当たりそうになってる。

何より、目の前にいる厳つい男性が睨んでるし。

偏見かもしれないけど、ツーブロックの人は怖いです。


「はっ! いやいやスレイさんが、こんなヒョロガキだったとは」


「はは……」


「プレイしてる時は勇敢だったのに、すっかり縮こまってんじゃん」


「す、すみません」


確かに俺のプレイスタイルは、敵の攻撃をくぐり抜けて立ち向かう剣士だった。

素早い動きで死にそうな仲間にアイテムを使ったり、魔法を溜める時間稼ぎをしたり色々とフォローに回ることも多かった。


「やっぱり、ああいう奴らはリアルだとダメなわけか。まあ、俺とかアキラちゃんは別だけど。ほら、早くこっちの席に戻りなって。憧れか知らないが、そいつがダメだってわかったろ?」


「むぅ……そんなことない」


その時、俺の手の上に松浦さんの手が置かれる。

そして気づいた……少し震えていることに。

そうだよ、こんな男に言い寄られて怖くないわけないじゃん。

松浦さんのことだから慣れてるかと思ったけど……それでも怖いに違いない。


「松浦さん」


「吉野君?」


「こ、困ってるかな?」


「………」


すると、こくんと頷いた。

そうなると、俺のやることは決まってる。

今だけは、勇敢なスレイとして勇気を振り絞らないと。

だって、この子はリアルで二度も助けてくれた。

なんで松浦さんがアキラさんなのかとか疑問はあるけど、今はどうでもいい。

どっちにしろ、この子に救われたのは事実なんだ。


「あの……貴方のハンドルネームは?」


「はぁ? な、なんだよ?」


「吉野君、その人はパンサーって言ってたよ」


「へぇ、パンサーさんね……ああ、あの自己中で協調性がない人か。いつもみんなに迷惑かけたり、みんなが戦ってる間にアイテムとか採取してる人ね。それで、最後だけボスに参加とか」


自分でも考えられないくらい、すらすらと言葉が出てくる。

そうだ、今の俺はスレイなんだ。

気弱な吉野じゃなくて、みんなを助けるスレイだ。


「は、はぁ? 今はカンケーなくね?」


「えっ? だって、これはゲームのオフ会だから関係あると思いますけど。ここでも、同じように迷惑をかけるつもりですか?」


「はっ、インキャのガキがカッコつけやがって。あんま調子に乗ると痛い目を見るぞ?」


「良いですよ、殴っても。その代わり、困るの貴方ですけど。それと……大事な人が困ってたら、かっこつけるのは当たり前じゃないですか」


正直言って、全然状況は飲み込めてないし、身体は今にも震えそうになってる。

それでも、アキラさんだろうが松浦さんだろうが、俺を救ってくれた人には違いない。

だったら、少しくらい勇気を出さないと……。


「こんのっ」


「そうだそうだ! 良い歳こいて高校生相手に何をやってるんだ!」


「楽しいオフ会が台無しだ!」


「そういう人は帰ってくれ!」


次々とそんな声が聞こえてくる。

多分、みんなも怖くて言えなかったんだ。

そして、流石に騒ぎになるとまずいと思ったのか……男の顔が焦りに染まっていく。


「っ!? く、くそっ! もう二度と来るか!」


「もう呼ばないから平気さ!」


最後にテンマさんがいうと、慌てて靴を履いて去っていく。


それを見た瞬間、頭がぼやけてくる。


そして、意識が遠ざかっていく……。






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