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秘境ファータ・ベルク ※執筆中


 秘境ファータ・ベルク


 雨の都レーゲンエーラからバイクで数時間。幼少期に一度訪れたことがあるという彼女、エイダの記憶と勘を頼りに描かれた、だいぶ頼りげがない地図。それを見ながら山を登ること数十分。折り畳み機能付きとはいえ重量は当然変わらないバイクと荷物とを持って山の中を歩き回るのは、なかなか骨が折れる。途中で木の根に寄りかかり休憩をして足と腕を休めた。

 林が高くて空があまり見えない…なんとなく、時計を開いた。螺子をゆっくり回す。カチリという音ともにアナログ時計が消え、故郷の空が浮かび上がった。今日の俺の故郷の空は、碧羅の天のごとく綺麗らしい。少し粉塵が待っているような気もするが、まあ鉱山都市にはよくあるもの。


(にしてもこんなに晴れている日は珍しいな…)


 なんだか元気つけられ、重い足腰に鞭打って立ち上がる。そして荷物を引きながら歩く。ひたすら歩く。

 だって!せっかく近くまできたんなら、幻の温泉に入りたいし!!


(…辿り着けなかったらレーゲンエーラに一旦戻ろう)


 ───日が傾き始める頃には、必死になって歩き回った足はもうクタクタを通り越してガクガク。

 けれども、その甲斐はあった。道中何度も心が折れそうにもなったけど、何度も雨の都市へ戻ろうかと思ったけど。あちこちから立ち上る白い湯煙が、目の前の立て看板が、そして温かみと高級感のある木製の温泉宿のような施設が。


「み、見つけたーーーっ!」


 なんとあの地図で、秘境ファータ・ベルクに辿り着くことができたのだ!奇跡!!


(………休みたい。)


 鉛のよう足を引き摺り、木製の可愛い扉を数度叩く。バイクは置き場所がわからなかったため、とりあえず横に置いておいた。もしかしたら置く場所もないのかもしれない。…ヤバいか?とりあえず聞くか。

 立て看板に【温泉宿ファータ・ベルク 営業中 温泉のみ可、夕食のみ可】と書いてあるので、営業はしているはず。


 たっぷり三拍置いてから、バタバタという足音と軽快な声の応答があった。中から出てきたのは、長身の男性。金糸の髪を後ろに撫で付け、ギャルソンエプロンを着用した、垂れ目の若い男性だった。


「はーい、お待たせしました〜!オーナーです!よくぞいらっしゃいました、お客様ァ!一名様ですね、温泉のご利用でしょうか、宿泊はどうされますか?!」

「え、えっと…宿泊、できるんですか?」

「もちろん!ただ、当宿は宿泊は一泊のみとさせて頂いております。夕食、夜食、朝食付き、温泉は好きな時間にご利用オッケーです!」


 星でも飛んできそうなくらい華麗なウインクと共に提案されたありがたい申し出だが、秘境の温泉、高級そうな宿、若い男性オーナー、なんだか金額がべらぼうに高そうな予感がして温泉のみで帰ろうと思った。彼女と稼いだ金で足りる気がしなくなった。なんかちょっと胡散臭いし…けど、せめて温泉には浸かりたい…!

 それが顔に出てしまったらしく、宿のオーナーがしたり顔で金額を告げた。


「宿泊料はこちらです!」

「あれ…想定より高くない?す、すみません不躾でした!」

「良いのです良いのです、お気になさらないでください、なんせこの宿は私の趣味でやってますから!観光地でもないのにぼったくったりしませんよ〜!それに、夜の森は危険ですので帰したくありません。」

「それは…そうですね…?」

「決まりです、その鉱石で動くバイクはお客様のもので?厳重にお預かりしましょう。お荷物もお部屋に運びますね。せっかくですのでロケーションの良い部屋にしましょうか!あ、夕食の時間にはお呼びしますので、まずは温泉で疲れをとって、お部屋一休みなさってください」

「よ、宜しくお願いします…!」


 ということで、あれやこれやという間に、なんとこの温泉宿に一泊することになった。オーナーの笑顔と勢いと温泉三食付きには抗えなかった、とかではない。ほら、オーナーも言ってたけど夜だしこれから下山するのも野生動物出るかもしれないし危ないかもしれないし?泊まるしかないね!というわけで。


カポーン


「ふぁ〜〜〜〜…ごくらくう〜……」


 辿り着けて良かったファータ・ベルグ。地図を書いてくれてありがとうエイダ。頼らないとか思ってすまんかった。


 秘境の温泉というだけあって、ファータベルグの温泉はすごかった。


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