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リゾート・イン・ブルーの喧騒 -支配人黒崎雪乃は本日もにっこりと客様をお出迎えする。-  作者: 鳴海ニノ
第一章 ホテル清掃係黄瀬実李は支配人への恩返しのためにフロント業務をする。
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4. アウトイン対応

「その掃除機、紙パック式じゃないじゃないわよ。中身はちゃんと処理してよね。」


清掃主任の浅野さんがツンケンした態度で、浅野さんが201号室に入って行こうとする。

何ならすでに、ゴミの回収を始めていた。流石に仕事に早い浅野さんである。


「承知しました。あぁ、もう午後2時20分になってしまいましたね。大山さんの件もご迷惑をおかけしております。202号室のゲロ布団は私が対応いたします。本日の2階は散々ですね。皆様お疲れ様です。よろしくお願いいたします。」


実李は、ハッと気がついた。もうチェックインの時間の3時まで40分なのである。


どんなに急いでも、この部屋を掃除するのには1時間かかる。それがあともう1部屋あるのだ。


アウトイン、お客様がチェックアウトをした部屋に、同じ日に次のお客様がチェックインをされることである。


ホテル清掃においては、チェックイン時間までに、清掃が完了していないということは、まずお話にもならないことである。


そもそもそうなのだ、この実李と同じ求人で入社したはずの、50代男性の大山さんが、昨日から無断欠勤しているせいで、様々なスケジュールが壊れているのだった。


「浅野さん、こちらの部屋、1泊1名様でしたから、そこまで使用の痕跡もありませんし、私と黄瀬さんに対応させていただけませんか?301号室も見てきましたら、あの様子でしたら浅野さんと舞花さんお二人で、30分以内に終わります。そちらをお願いしても?」


と、この黒崎支配人は事も無さ気げにそう言う。それを聞くと、浅野さんは数秒、藤崎支配人の顔をじっと見つめてから、短めに、


「ちゃんとここ終わらせてくださいよ。それじゃ、舞花さんいきましょ。」


と、告げ、301号室へと向かった。


「こちらよろしくお願いいたしますね。」


と舞花さんもニコニコ可愛い笑顔で出ていった。この時ばかりはいつもの癒し系笑顔が憎くも見えた。


なにしろ、黒崎支配人が掃除をしているところを、実李は殆ど見たことがない。


その上、黒崎支配人のデスクは、控えめに言っても、汚い。


書類、領収書、請求書、よくわからない言語の雑誌、魚図鑑・・・なぜそこにあるのかもわからない、ありとあらゆるものが机のものに集結されていると言っても過言ではない。


その、白崎支配人と掃除のペアを組まされることは、この上なく未知の遭遇をしていることと同じなのである。


「ねえー管理人さん、遅いじゃない?この布団どうにかしてくださらない?息子がが吐いてしまったのよ。」


と、ここで202号室のお客様と思われるご婦人が、出てきて、例のゲロ布団のことを伝えにきた。


すかさず、黒崎支配人は


「ハイ、只今、お客様。どうぞ、お部屋でお待ちください。只今ご対応いたします。」


と告げて、気づく頃にはお客様をお部屋に帰していた。すると、すかさず、実李にこのように言い始めた。


「私、そろそろ、黄瀬さんは一人で清掃が完璧にできると思ってまして、試しに一人でやってはくださいませんか?」


「え・・・?急に?あと40分なのに?」


「大丈夫ですよ。私はどちらにしろ、お察しの通りですね、隣でゲロ布団と戦わなければならないのです。すみません。何かあったら助けてください・・・よろしくお願いいたします。」


とだけ言うと、気がつけば、隣の部屋の前に言っており、既にドアベルを押していた。


実李がちょっと・・・と言う前に、お客様が出てきて、ごめんねー昨日酔っ払っちゃってーとか言い訳をしながら出てきて、藤崎支配人もニコニコ笑顔を浮かべながら中に入っていった。


その場に一人残された実李は、その一瞬の出来事に呆然としつつも、何かとこの現状を受け入れることに成功し他のであった。


「や、やるしかない。もしできなくても、こんなの最早支配人のせいだよ!!!」


と、ヤケクソの思いで、201号室の清掃を始めたのであった。


・・・30分後、思いの外、清掃が終わった。なんとか片付いた。


とホッとしていたところに、がちゃっと部屋のドアが開いた音がした。

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