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どん底だらけの俺の世界に自称魔法少女がやってきた。  作者: 夏嶋咲衣


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7.過去

いつもありがとうございます!

一回目の世界の八歳頃



 まだ、八歳頃、俺は千歳夏菜子と未来探偵以来1年ぶり二度目の共演をしたんだ。

 そして、以前は優しかった千歳の豹変振りを感じた。


「千歳さん、何してるの?」


 千歳さんの体がビクッとなり、持っていたペットボトルを楽屋の床に落とした。


「陽向くん、別になんでもないのよ」


 素早くペットボトルを拾って背中で隠した千歳だったが、俺は回り込み千歳からペットボトルを奪った。

 ペットボトルだけだと思っていた俺は一緒に掴んだ布に少し驚き、


「千歳さん、これ誰の?」

「陽向くん!!」


 初めて聞いた千歳の激しい声色は恐ろしい程低く冷酷な響きだ。


「あの」

「なんでもないって言ったわよね?」

「…」

「ねぇ、約束して?この事は誰にも言わないって」


 仮面の様に冷たい笑いを俺は初めて見たんだ。


 ただ、あの頃の俺は正義感だけは強い世間知らずで、未来探偵の様に自分も無敵のヒーローだと勘違いしていたんだ。


「千歳さん、これあの子の衣装じゃないの?」

「え?…違うわよ」


 張り付いた笑顔のまま千歳はそう答えた。


「違わないよ。これって僕と色違いの衣装だ。今日のCMであの子が着るんでしょ?それに、千歳さんが隠したペットボトルの赤い水が付いてるよ。千歳さん、零しちゃったから隠そうとし」

「嫌な子」

「え?」


 千歳は俺の両腕を掴むと顔がくっつくすれすれまで近付き、目を見開きながら力をこめてきた。

 幼い俺の腕に千歳の伸びた爪が食い込んで悲鳴を上げたくなるくらい痛かった。

 知らないうちに溢れてきた涙を見て、千歳は嘲笑う。


「何を泣いてるの?笑いなさい。役者は嘘でも笑い続けるの。陽向くんって、未来探偵の時は良かったけど、今は本当にダメね」


 あぁ。そうだった。


 俺は千歳の逆鱗に触れたんだ。


 あれから、事ある事に笑えと言い続けられ、俺はいつしか嘘の笑いしか出来なくなってしまうほど、千歳夏菜子に追い詰められていったんだ。


笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。


笑え…。 


背中を押されて落ちて行く時にも、千歳の声が聞こえた…。


『笑え…笑いなさいよ!!』


 あの日から俺は千歳に指名され、幾度も罵倒されてきたんだ。

 気に入らないなら無視してくれた方が良かった。

 だけど、あいつはそんな生易しいやつではなく嫌った相手をとことん虐めて追い詰める、そういう人間だったんだ。


 そして、俺が話す度にプレッシャーを与え続け、俺が話せなくなったら満足して興味を無くした。


 俺はベンチに座ったまま、頭を守るように抱え震えを抑えようとしていた。

 止めようとしても自分の力では同仕様もなくて、でも、守っていないと体が深海に潜り込んでしまう気がする。


 大丈夫だ。

 大丈夫。俺はまだ声も出せるし、笑えるんだから。


 口角を無理矢理上げて、朝日を見た。


「陽向くん!ごめん!ごめんね。辛い事思い出させちゃったね…」


 朝日は俺を落ち着かせるように、しっかりと両手で俺の体を抱き締めてくれた。


「陽向くん、笑わなくていい。無理に気持ちを抑えつけるなんてしなくていい。…ここには、千歳はいないよ。陽向くんを苦しめる人はいないの。私に陽向くんを助けさせてほしい。私にはほんの少し未来が分かるから…。絶対に千歳夏菜子の好きにはさせない。私達は自分達の手で未来を守るの」

「未来を守る?」


 朝日は俺の背中をポンポンと叩きながら言う。


「うん。陽向くんが虐められたのは、一回目の時に私を助けたから。私が子役をやってない二回目三回目は、まだ千歳にとって陽向くんを嫌う何かは起きてないの。それを避ければ、陽向くんが死ぬ事はなくなるかもしれない」

「待って!」


 俺は朝日の手を振りほどき、


「でも、二回目の時は千歳関連じゃなく俺は死んでる」

「それは、陽向くんがクエストに失敗したから」

「前にも言ってたけど、クエストって何だよ…?」


 困った様に眉を下げながら朝日は話し始めた。


「私にはコマンドが見えるって言ったよね?それは、昔から見えてたわけじゃなくて、二回目三回目も陽向くんと出会った瞬間に現れたんだ。そして、コマンドとは別にクエストが出現するようになったの」

「でもさ、そのクエストと俺と何の関係があるんだよ」

「ごめん。私にもよくわからない。一つ一つのクエストはごく簡単な物。だけど、失敗すると陽向くんの未来が少しずつ変わっていくんだと思う。ずれた結果二回目は最初と違う形でゲームオーバー」


 ゲームオーバーって…。

 俺の人生はゲームかよ!


 俺のムッとした表情に気が付いた朝日は慌てて言葉を繋げる。


「嫌な気分だよね。ごめんね!だけど、陽向くんのコマンドにゲームオーバーって出るの」


 俺のコマンドに出るのか…?


「ゲームオーバーにならなければいいのか?」

「はっきりとは断定できないけど、クエストを失敗しなければ、避けられるんじゃないかと思った」


 少し希望が見えたんじゃないか?

 

「朝日、見えている物を俺に全部教えてくれないか?朝日がいればクリアも出来るかもしれない」

「へ?」

「朝日が俺の救世主なんだ」


 朝日はキョトンとしたが、嬉しそうに笑って、


「うん!…あ、でも一回帰らないとお母さんが心配する…」

「俺も…だな。じゃあさ、今日は一旦解散で、後でメールでステータスだけでも教えて」

「分かった!」


 1時間後朝日からメールが届き、朝日と俺のステータスを教えてもらった。

 

 整理をすると、朝日にはコマンドが見える。


朝日りん

レベル 15

属性  魔法少女

技   空間制御


立花陽向

レベル 15

属性  ???

技   ???


二回目の戻りからコマンドが見えるようになったが、俺のステータスはほぼわからないらしい。

HPはそれぞれの名前の横にあらわれるそうだ。


「う~ん」


 現れるクエストをクリアする条件は勿論毎回変わる。

 それをこなし続けるのは難しいぞ…。

 

 俺は日記帳を取り出し、今日の出来事をゆっくりと文字に起こした。


 やり直し人生3 二日目 晴れ



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