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どん底だらけの俺の世界に自称魔法少女がやってきた。  作者: 夏嶋咲衣


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4.朝日との約束

いつもありがとうございます!

「今日は風が強いな」 

 

 教室の窓越しに木の枝が大きく撓るのを見ていた。 


 午後3時過ぎ、授業が終わり掃除を済ませてから、朝日との約束の公園へと向かった。

 廊下には友達同士で喋っている奴、部活のジャージに着替えて俺と同じ様に歩いている奴もいる。

 秋とはいえまだ日が暮れるには早く、日によっては暑い日もあるから不思議だ。

 イチョウは紅葉しているのに、気温は初夏だとか。


図書館の横を通りイチョウ並木を抜けると朝日がベンチに腰掛けてスマホを見ていた。

 

「朝日」


 朝日は眺めていたスマホから目を離し、


「陽向くん。呼び出してごめんね」

「いや、俺も話したい事あったから良かったよ」 


 その時また強い風が吹きイチョウの葉が中に舞い、俺の視界を黄色く染めた。

 くるくると踊るように舞うイチョウの葉。

 たくさんの散る葉で隠れて朝日の顔がよく見えない。


 先程の風が朝日の髪を乱して表情を隠している。笑っているのか、怒っているのかもわからなかった。

 何故か朝日はパチンッと指を鳴らす。


「陽向くん、死に戻りって知ってる?」


 彼女の表情が見えないままに、朝日は理解できない言葉を呟いた。


「死に戻り?」

「そう。陽向くん、身に覚えないかな?」


 真剣な顔で一言一言慎重に言葉を紡ぐ朝日には、茶化して良いような雰囲気は感じなかった。


「言ってる意味が分からない」

「本当に?陽向くん、別の未来の記憶があるんじゃないのかな?」


 スーツと背中が寒くなり、顔が強張りそうになる。

 朝日は俺の表情の変化を逃さないようにしているんじゃないか?


「私、見えるの。みんなのステータスが」

「ステータス?ゲームでもないのに?」

 

 突拍子もない言葉に呆れ、棘を含んだような語感になってしまった。


「そうだね。私達が生きてる世界はゲームじゃない。そんな事は分かってる」


 朝日は右手で自分の頭に手をあて、力ない声で呟く様に言葉を紬いだ。


「なのに何でかな?私にはコマンドが見えるの。一回目にはなかった物が、私の視界に広がっていて、自分の名前、年齢、特技…属性が記されてる。…私の属性は魔法少女…」

「魔法少女?ないない!騙すにしたって荒唐無稽すぎる。あ…もしかして、どっきりか何か?俺なんて撮っても視聴率稼げないのに」


 何も気にしてない振りをする為に、わざと戯けた様に笑って見せる。

 で、朝日は仕掛け人でカメラマンさんもいるんだ。

 みんな笑っておしまい。



 …のはずだろ?


 どうして朝日は思い詰めた顔で俯いているんだ…?


「信じてもらえないのは分かるよ。私だって突然そんな事言われても信じられないと思う。…でも、陽向くんには身に覚えがあるんじゃないのかな?」

「は?…待って!もういいんだってば。はは…」


 あれ…?


 不自然に静まり返っている空間と俺と朝日しか今存在していない違和感。

 普段のこの時間なら幼稚園帰りの親子や学生達がこの並木路の脇にある図書館にやって来る時間だ。

 何かおかしい。

 人どころか、さっきまで吹いていた風さえも止んでいる。


「何だよこれ。」


 朝日は困ったように眉を下げながら、


「言ったよね。私にはステータスが見えるって。私の属性は魔法少女。戦ったり物理的な攻撃ができない変わりに、空間を歪める力があるんだよ。でも、それだけ」

「朝日がやっていると言いたいのか?」


 現実離れした今の状態。

 実際、目にしてるのは明らかだ。

 でもさ、普通に考えて人間にできっこないだろ…。

  

「陽向くんとこうして二人で話したかった。言葉だけじゃ信じてもらえないから…。前回は上手く扱えなかった。だから、今回は失敗したくない!一人で考えるより、こうして二人で話したほうが陽向くんと協力しあえるもの」

「協力?今の朝日の言葉を鵜呑みにすると思うか?百歩譲ったとして、俺に何をやらせるつもり?正直さ、意味が分からない」


 朝日は何を話せばいいのか、戸惑いながらも強い瞳で俺を見た。


「私はただ、陽向くんを助けたい。私だけの力じゃ無理だった二回目とは違う行動をしないと変えられない。陽向くんには理解してもらいたい。難しいのは分かってるけど」

「…」


 何て答えていいのか分からない。

 事実、俺には一回目、二回目の記憶がある。

 一回目は死ぬ間際だとか朧げだけれど、夢とは言い切れないリアリティさがあった。


「今、陽向くんは動揺してるよね?」

「だから何だ?俺のステータスが見えてるから、自分には分かるっていいたいのか?こんな話されたら、動揺くらいするだろ?」

「当てずっぽうでそれらしい事言ってると言いたいんでしょ」


 俺は朝日の言葉を強く否定するように、言葉を被せる。


「そうだよ。なんとなくそれっぽい事言えば信じる奴だっている。占いを信じるのと変わらない」

「じゃあ、未来を話せば良い?」

「何でそうなるんだよ」

「信じてほしいからだよ。それには、陽向くんも知らない未来を話すしかないでしょ。ゆっくり納得してもらう時間はないの。だって、陽向くんHPが凄く不安定になってしまってる。ハッキリ言って、いつ死んじゃってもおかしくないよ」

「は?俺が死ぬ?変な事言うなよ!冗談でも笑えないぜ」


 朝日は俺の言葉に答えず、話し続ける。


「陽向くんはドラマ『輝く』のオーディションを受けるも、不合格。和也の親友役で出演。ドラマは高視聴率となったが、陽向くんは再ブレイクとはならなかった。対して、広瀬海は新人賞を受賞し、2023年人気俳優の1人として第一線で活躍し続けている。陽向くんは21歳で開店休業状態」

「やめろ」


 朝日は全てを分かっているかのように、真っ直ぐに俺を見つめ瞳を反らす事はない。

 逆に朝日の視線に耐えられなくなった俺は髪の隙間から見える彼女の真っ直ぐな瞳から逃げた。


「今回のオーディションも一回目と同じで不合格だよ。陽向くんはクエストに失敗したから…」


 クエスト?

 失敗ってなんだよ…。


「クエスト?俺はいつも通りにオーディションを受けただけだよ」

「本当に?二回目とは違う行動をしたでしょ?…二回目は広瀬海と同じ芝居、クライアントが望むように演じなかった?」


 は?

 立花陽向としての芝居ではダメだと暗に朝日は告げているのと同じだ。

 何で親しくもない奴にこんな事言われなきゃいけないんだよ!


「いい加減にして。もう帰るよ」


 朝日は俺の左袖を掴み、


「待って!陽向くん、今は信じられないよね。だけど、今日の夜ニュースが流れるよ。東高校での殺傷事件。犯人は佐藤一。必ずニュースを見て!それで、連絡したくなったらここに連絡して」


 朝日が俺のブレザーのポケットに紙切れを無理矢理入れる。

 指をパチンッと鳴らすと、いつも通りの並木路に戻った。

 

「じゃあ」


 何か言いたそうにしていた朝日を1人置き去りにして、俺はいつものバス停に向かったんだ。 


 

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