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どん底だらけの俺の世界に自称魔法少女がやってきた。  作者: 夏嶋咲衣


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15.もう一人のメンバー

「おはようございます!」


 『輝く』のもう一人のメイン、月島美樹が俺達に近付き挨拶してくれた。


「おはようございます」

「撮影、上手くいきましたか?」


 月島さんは無邪気な笑顔がアイドルらしい俺達と同じ高一の女の子だ。

 ショートというアイドルグループのメンバーでイメージカラーはイエロー。ショートボブ。ボーイッシュな感じで売ってると本人が言ってた。


「多分」

「あれ?マネージャーさん新しいんですか?」


 突然話を変えるのは彼女の癖だ。


「朝日りんです。マネージャー補佐に就きました!」

「月島美樹です。年同じくらいですよね?」


 月島さんは俺よりも朝日にどうやら興味があるらしい。

 朝日はにっこりと微笑み、


「よろしくお願いします。陽向くんと同じ高1です」


 月島さんはわぁっと瞳を輝かせて、朝日の両手を握る。


「私も高1!良かったら仲良くしてね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 恥ずかしそうに笑う朝日と月島さんは対照的な感じがするが、相性は悪くない様に見えた。


「そういえば、町田さんに呼ばれたんです。千歳さんと一緒に田代と和也のシーン観た方がいいそうで…」


 月島さんは首を傾げて『何か知ってます?』というような顔で俺を見る。


「えっと、田代は和也の衣装が変更になったので、女性陣もそれに合わせた演技をしようとなってるみたいです。ただ千歳さんがOKを出せばですが…」

「衣装を⁉あ~、なんか事情有りみたいですね…」


 月島さんは俺の表情を察したのか、ふんふんと頷いた。

 俺は気まずそうに笑うしかない。


「わかりました!心して拝見しますね」

「立花さん、監督がお呼びです」


 小走りに俺に向かって来た白川さんが告げた。


「はい。月島さんも行きますか?」

「はい」


 スタジオに着くと、監督、町田さん、小西さん、君島さん、多田さん、そして…千歳が俺達を待っていた。


「今から千歳さんと月島には観て貰う」


 二人は無言で頷いた。

 さっき撮ったシーンを田代から順に流した。

 月島さんは『おぉ』とか小さな声で言いながらも真剣な表情で画面を凝視している。


 よし。

 反応は悪くないんじゃないか?


 川西さんの芝居の後に自分の芝居を流すと、なんとなく劣っているんじゃないかと不安でちらっと横目で見たが、千歳はなんの表情も感じさせず、ただ静かに観た後に、


「これで、大丈夫です。監督、私達のシーンをどの様に演じたらいいのか指示お願いします」

「分かった。じゃあ、川西くんと陽向は解散」

「あぁ、待って下さいよ。俺は最後まで見ていきますよ」


 川西さんが監督にそう伝え、俺には他の人に見えない様に親指を立てた。

 俺は思わず顔を緩ませて頷く。


「俺も残ります」


 監督は呆れ気味に笑い、


「二人共熱心だな。勿論有り難いが。じゃあ、時間になったら呼ぶから楽屋で待って」

「俺はもう少し監督や千歳ちゃん達の話を聞いてから行くよ」

「わかりました。お先に失礼します。ほら、朝日行くよ」


 朝日はこくりと頷き、皆さんに挨拶をすると俺と一緒にスタジオを出た。


「陽向くん、良かったね」


 周りを確認しながら、小さな声で俺に話しかける。


「本当。安心したよ。まだ、この後何かあるかもしれないから、全てOKじゃないけどな」

「うん。陽向くんは和也としての責任を果たしたよ」

「だといいけどな。…あ」


 千歳の楽屋からマネージャーの岸川さんが、出てくる所で右手で鍵を閉めていた。

 岸川さんは俺達に気が付くと、


「お疲れ様です。立花さんは上がりですか?」


 と尋ねた。

 その右手の人差し指から2本にはカットバンが貼られている。


「お疲れ様です。指はどうされたんですか?」


 岸川さんは左手で右指を隠すように握るとにっこりと微笑む。


「注意不足で機材に引っ掛けてしまったんです」

「大変ですね。お大事に。でも、利き手じゃなくて良かった」

「え?あぁ、そうですね。千歳さんにご迷惑かけずにすみます」


 岸川さんは左手の時計を確認すると、


「では、準備もありますので失礼します」

「待って下さい」


 扉を閉めかけた岸川さんは振り返り、


「はい?」

「すみません。ただ、監督と千歳さん、撮影の話をしているので、早く戻られた方がいいですよ」


 朝日は不思議そうに首を傾げて岸川さんを見ている。


「あぁ。大丈夫ですよ。別の者が千歳さんにはついてますので」

「そうなんですね。呼び止めてすみませんでした」

「とんでもない。失礼します」


 岸川さんは部屋の中に入って行った。


「俺達も楽屋に戻ろう」


 朝日は千歳の楽屋の扉をただじっと見ている。


「朝日?朝日!」


 はっと我に返ると朝日は呟く。


「もう一人いる?」

「ん?あぁ。マネージャーか。俺は岸川さんしか見たことないけど、他にいたんだな」

「私もないよ。…それに、なんか違和感があるの」


 朝日を促し、俺達は楽屋に向かいながら、話を続ける。


「違和感?」

「うん。これとは言えないんだけど、あれ?って引っ掛かるんだ。陽向くんはなにかない?」


 俺は顎に手を当てて考えてみるが、朝日のいう違和感には辿り着けなかった。


 別の者…。


 全ての世界を思い出そうとしてみたが、俺が知る中では岸川さんの顔しか知らない。

 勿論、忘れている記憶がある可能性は高く、全てを完全に憶えている人なんて皆無と言っていいだろう。


「今はちょっと思い当たらないな」

「う~ん。そっか」

「誰かに聞かれてもまずいし、部屋の中に入ってから話そう」


 俺の言葉に頷くと、朝日は思い出したようにカバンの外ポケットから、ロッカーのキーを俺に渡した。


「これ、陽向くんの貴重品が入ってるロッカーのキーね」


 俺はそれを受け取り、右ポケットに入れた。

 少し長い廊下を二人共それぞれの考え事をしながら歩いていたので、沈黙だったが不思議と苦痛は感じないうちに楽屋に到着。

 朝日はノックをして反応が無かった事を確認してから、楽屋の鍵を出して開けた。


「陽向くん、先どうぞ」

「ありがとう」


 日中はまだ暑い日もあるとはいえ、午前中はまだ肌寒かったりする。

 折り畳み椅子に腰を掛け一息をつくと、やはり疲れているんだなと感じた。


 時刻は12時13分。

 もうそんな時間か…。

 腹がすくわけだ。


 朝日は簡易冷蔵庫からお茶のペットボトルを出し、


「陽向くん、このお茶飲む?それとも、暖かい紅茶でも淹れる?」

「ありがとう。これでいいよ。それに、一旦昼休憩とるだろうし」


 朝日は俺にペットボトルを渡すと、自分の分はミネラルウォーターを取り出した。


「そっか。もう昼過ぎたもんね。さっき、サンドイッチ弁当と茸ご飯弁当が届いたみたい。白川さんが選んで持っていって良いって言ってたよ」


 俺達が画像を確認している時に朝日と白川さんで周りの準備をしていてくれたようだ。


「分かった。ありがとうな」

「え?何急に照れる…」


 朝日は人の感情が苦手らしく恥ずかしいのか、ふいっと顔を背ける。


「そういえば、橋本浩二さんは14時入りみたい」

「そうか。じゃあ、今話しても平気だな」

「うん」


 机を挟んだ正面に同じ様に腰を掛けた朝日は紙になにやら書き込み始めた。


「陽向くん、今朝の様子をまとめてみた」


 朝日に渡された紙には衣装がダメにされたと分かるまでの動きが、簡潔に書かれていた。


5時55分

陽向くん、私 入り時間は6時


 千歳、岸川  入り時間は11時入りだか早く来た

        撮影は13時から


6時05分 陽向くんメイク室、私事務所に入り電


千歳急遽リハーサル開始 メイクは自宅で


6時10分 白川衣装を持って来た まだ無事


6時20分 私が楽屋に戻り 衣装ペンキ気付く


6時45分 千歳のリハーサル終了


        


 という感じだ。

 それは大体俺も把握している。


「これで見ると6時10分から20分に被害を受けたと考えて妥当だよな」

「うん。白川さんも確認してるし、スタイリストの多田さんも衣装が大丈夫な事は確認して、受け渡したって言ってたよ」


 俺は頷き記入された文字を見たが、白川さんが嘘をついたようには思えない。

 一番怪しい千歳はスケジュール的にも無理だ。

 それに、本来ならスタジオにすらいない時間じゃないか。


 あれ…?

 待てよ。千歳はどうしてこんなにも早くスタジオ入りしたんだ?


 役者の芝居を観たい。


 もっともらしい言葉だが、今まで俺が知る限りは無かった。

 今回は海の代役が俺だから?

 不安に思って?

 それとも、批判する理由を探した?


 分からない。


 溺愛している広瀬海が見せ場とも言えるこのシーンを演じられないのは、本人は勿論、千歳にとっても悔しいだろう。


「朝日、もう少し様子を見てみよう。朝日の違和感の正体もわかるかもしれないし」


 朝日はしっかりと俺の目を見つめて頷いたんだ。


 

クエストタイムリミットまで後 約2日と18時間


  



 

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