11.悪意
いつもありがとうございます!不定期連載で申し訳ありません!
「これは酷い…」
町田さんは赤い液体で汚れたシャツを広げ途方に暮れたように呟いた。
少しシンナー臭さもあるので、多分ペンキをわざとつけたのだと思う。
「白川、予備のシャツを」
「無理です!」
白川さんはビリビリに引き裂かれた布を持ち、首を激しく横に振った。
「まさか…それが予備のシャツか?」
「はい。このシャツがダメになってしまったので、取りに行った時にはこれも引き裂かれてました…」
町田さんははっと我に返り、白川さんに尋ねる。
「他のキャストの衣装は大丈夫か?」
「はい…。和也の衣装だけ被害にあってました」
「白川が楽屋に運んだ時は異常は無かったのか?」
白川さんは顔を強張らせながら頷くばかりだ。
「陽向くんと朝日さんは白川が衣装を運んだ時は楽屋にいなかったんですよね?」
朝日は顎に指をあて考えこんでいたが、ゆっくりと思い出すように話し始めた。
「陽向くんはメイク室に行ってました。私は陽向くんと同時に楽屋を出て、スタジオの外で菅原さんに入り電をしてたんですが、なかなか繋がらなくて、楽屋に戻ったのが、多分10分後くらいでした。衣装を確認した時にはもう汚されていて…」
「私はやってません!」
悲鳴の様に白川さんは声を絞り出し、町田さんの腕に縋り付き訴えた。
「白川落ち着け。別に君を疑ってるわけじゃない。ただ、事実確認をしているだけだよ」
「町田さん、私達で話していても埒が明かないわ。先ずは、千歳さんの撮影が終わって監督に話して指示をしていただきましょうよ」
君島さんは白川さんの背中を落ち着かせるように、さすると白川さんを座らせ、自身も廊下に直接座った。
「あれ?千歳さんの撮影は午後からじゃなかったんですか?」
俺は町田さんに尋ねた。
「そうだったんですが、千歳さんがリハーサルだけでも早くやりたいと仰ったので急遽リハーサルになったんですよ」
「そうだったんですね」
あの人なら言いそうだな。
「立花くん、ひとまず撮影が終わるまで、楽屋で待機していて下さい」
「…わかりました」
俺はみんなに軽く会釈をして、朝日を促し自分の楽屋へ向かったんだ。
俺と朝日は楽屋に戻ると、椅子に腰を掛けた。
まだ始まってそうそうだというのに、いきなりの事件だ。
「朝日、あの人の事は取り敢えずまだ誰にも言わないでおこう」
「…うん。ハッキリとした証拠はないよね」
朝日は頭を抱えて項垂れる様に考え込んでいる。
「白川さんが言った事が事実だとしたら、彼女がここに衣装を運んでから行われたんだろうな。朝日と俺がいなくなってからの10分だとして、逆算したら危害が加えられたのは、6:10〜6:20の間が濃厚だ。そうなると、あの人はスタジオに入ってリハーサルをしていた」
言い方は悪いが、勝手に早く来ておいてリハーサルを急がせるなんて随分身勝手だよな。
「そうみたい。陽向くんとヘアメイクの君島さんは一緒にいた。私は外で入り電。これは、警備室の近くだったから、アリバイを証明してくれる人はいると思う」
「ああ。良かった。ここに誰かが近づいた目撃者がいればいいが、スタジオだから、人の出入りはわりとあるけど、俺達が使わせて貰ってるここは、局の端にあり、あまり人の行き来がない。しかもこんな早朝だと誰かがこっそりここに来てもわからないかも知れない…」
「扉は衣装が運び込まれる予定だったから、施錠出来なかったし…う~ん」
朝日は考え込みながら、ブツブツと呟いている。
「きゃ」
朝日は驚いた様に小さく悲鳴を上げた。
「どうした?」
「緊急クエスト…犯人を探せ…待って!陽向くん、私達同じ空間を作れば陽向くんと画像を共有できるかも…。新スキル、画像の共有ってのが増えてる!やってみていいかな?」
興奮気味に早口で喋りながら、朝日はこめかみをトントンと叩いている。
「そうしてもらえると有り難い」
「分かった!」
以前の様に指をパチンッと鳴らし、俺達二人だけの空間を朝日は作り上げる。
右手の人差し指で空間を四角くなぞり、それを投げ出すような仕草をした。
【緊急クエスト 犯人を探せ
立花陽向の衣装を汚し、切り刻み使えなくした者がこのスタジオにいます。
目撃者を探し推理しましょう。
期限は三日 】
朝日が空間にプロジェクターのように映した映像には、黒地の背景に白い字で機械的な文字が浮かんでいた。
「犯人を探せ…」
朝日はこくりと頷き、
「陽向くん、これが陽向くんの今やってる2つ目のクエスト。1つ目は千歳と争わないで、長期クエスト。今来たクエストは期限が短いから重要度が高いと思う…」
「だったら、これをクリアーしないと俺はまた死ぬのか?」
朝日は言いにくそうにしていたが、俺の目をしっかりと見つめ答える。
「きっとそうなんだと思う。はっきりと断定された訳じゃないけど、前回はクエストを失敗してしまった時にゲームオーバーって文字が浮かんだの。その後、陽向くんは命を落とした」
「そっか」
俺は朝日から顔を背け冗談っぽく、言葉を繋げる。
「事件を解決って、なんか未来探偵みたいだな。架空の世界にしか存在しないような気がしていたから、なんか不思議だよ」
「陽向くん…」
「でも、まぁ、失敗してもまた次があるかな?なんたって俺は三度目だしさ」
朝日はふいにギュッと俺を両腕で抱き締めて、
「陽向くん、大丈夫だよ。今回で全てが決まってゲームオーバーになるとも限らない。前にも言ったじゃない。私達、今回は二人でクエストに挑めるんだもの、成功率は上がってるはず!」
俺の体を離し、にっこりと朝日は笑った。
「ポジティブか!」
「ポジティブだよ!」
俺と朝日は気合いを入れる為にハイタッチ。
「よし!もう一度戻って皆さんのその時間の動きなんかを聞いて、整理しよう」
こうして、俺と朝日の犯人探しが始まったんだ。
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