0097話 リュウVS執事
俺は自分の胸を貫くナイフを見た。
正確には未来のイメージとしてだ。
俺は刀をしまい、半身になる。
先程までの体勢のままならナイフが胸を貫いていただろう。
しかし俺が半身になったことで執事のナイフは空をきる。
「なっ!」
執事が驚愕の声を上げる。
よもや俺に避けられるとは思っていなかったようだった。
それほどまでに自分の間合い、そしてスピードに自信があったのだろう。
俺は半身になると同時に引いていた腕を突き出す。
それは驚愕の声をあげた執事の顔面にヒットした。
「がはぁっ!」
俺の攻撃で部屋の壁まで吹き飛ぶ執事。
執事がまだ立ち上がってこないことを確認し、俺はガイルを見る。
アイベールの剣を受け止めているガイル。
自分の大剣を押し上げ、アイベールの攻撃を押し返すと、右手の大剣で攻撃を加える。
剣先の倒し、自分のロングソードの剣身で受け止めるアイベール。
「ぐはぁっ!!」
ガイルの左前蹴りがガラ空きになっているアイベールの腹に決まる。
衝撃で前かがみになったアイベールの側頭部にガイルのハイキックが決まる。
執事とは逆の壁に吹き飛ぶアイベール。
この間、ほぼ同時の出来事だった。
「やったか!」
「いや、まだだろう」
俺は言いながら刀を構える。
壁に衝突した衝撃で舞う埃のなかで何かがキラリと光ったと思った瞬間、俺の胸に迫るナイフを認識する。
俺は何とかそれを刀で逸らす。
「ぐっ!」
ナイフは逸らしたが、その直後、俺の右腕に痛みが走ると、大きく斬り裂かれ血が噴き出す。
「暗器か…」
見ると執事の左前腕の外側に大きな刃がつけられていた。
「あんな攻撃で私を倒せたとは思っていなかったでしょう」
「まぁな」
俺は左手だけで刀を構える。
「ぐはぁっ!!」
ガイルが膝をつきながら俺の傍まで衝撃で吹き飛ばされてくる。
さっきまでガイルが立っていたところを見ると、ロングソードではなくショートソードと盾を構えたアイベールがいた。
「へっ、シールドバッシュか」
ガイルは口から血を流している。
大剣で防いだものの大柄でパワー型のアイベールのシールドバッシュは効いたようだ。
「へっ、最近こんなのばっかりだぜ」
言いながらガイルは立ち上がる。
「レム」
「ショウチシマシタ」
レムは傍らにある素材を入れた箱を収納すると、俺の懐に隠れる。
この部屋での戦いにレムはついていけそうにない。
下手に狙われてもまずいので俺と一緒にいてもらう。
「ふっ、で、どうしますか?素材は置いておきますか?」
執事は余裕の態度で聞いてくる。
「しつこい、この素材は知り合いの商人に売ることにする」
「それはなりません、主が欲していますので」
言いながら執事が攻撃してくる。
「必ず置いて行っていただきますっ!」
そのナイフ攻撃を刀で防ぐ。
合わさった刃を支点に浮き上がるように跳ぶと蹴りを繰り出してくる執事。
執事の脹脛に隠していた刃が現れる。
顔を逸らして刃を避ける俺、だが避けきれず刃が頬をかすめる。
俺は刀を振るうが、ヒラリと躱されてしまう。
「ふふ、遅い遅い、まだまだ行きますよ」
つま先をこちらに向けた蹴りを繰り出してくる。
ここまでと同じであれば!
俺は後ろに宙返りをして蹴りを躱す。
案の定、執事のつま先から刃が飛び出していた。
「いったんどんだけ隠してるんだ」
おそらくどの攻撃にも暗器が絡んでくるだろう。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか」
執事の殺気が増す。
先程イメージを見た時と同じ感覚だ。
執事はナイフの柄をこちらに向けて突き出す。
柄の底が開き、そこから無数の細い刃が飛び出してくる。
俺は刀を振るい、それらを叩き落としていく。
しかし数が多く、数本が肩に刺さり、脛や腿をかすめる。
致命傷ではないが、ダメージがしっかりと受けてしまう。
「いろいろと繰り出し…っ」
暗器の多さを口にしようとした時に視界がボヤけるのを感じる。
「ぐっ!」
俺は片膝をつく。
「…毒か」
「安全第一ですからね」
執事は何でもないことのように言う。
「先ほどの刃には視力を奪う毒を仕込んでおきました」
この言葉を最後に俺の視界は完全に奪われた。
「…」
何も見えない。
「ぐはっ!」
凄まじい衝撃が俺を襲う。
執事に蹴り飛ばされたようだ。
「そろそろ終わりにしましょう」
視界を奪われている俺にも、執事がイヤらしい笑みを浮かべているのが分かるほどに愉悦に浸っているのを感じた。




