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龍翔記  作者: GIN
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0096話 エリーン家の力

「こちらへどうぞ」


恭しく頭を下げたあと、にこやかに笑う執事に案内されて俺とガイルは初めてこの屋敷を訪問したときに通された部屋に来ていた。


要件は執事に伝えてある。


お茶を出され、少し待つように言われてすでに30分以上が経っていた。


「遅せぇな」


「ああ」


俺たちはお茶には手を付けていない。


カゲロウの言葉が気になっているからだ。


クエストで指定された素材はまだ手元にある。


報酬と引き換えでないと渡せないと執事には伝えた。


その時、部屋の扉をノックする音が聞こえる。


「はい」


「開いてるぜ」


「失礼します」


「…」


扉を開けて入ってきたのは執事と騎士風の男だった。


執事はにこりともせずに言い、騎士風の男は無言のままだ。


「報酬は持ってきたのか?」


ガイルが執事に問う。


「それが先に素材をお渡しいただかないと報酬はお支払いできないというのがわが主の答えでして」


「知ったことか、クエストで指示された素材はここにあるんだ、報酬と引き換えなのは当然だろうが」


「ええ、通常はそうです、ですがランクGの冒険者パーティが持ってきた素材ですから、真贋を見極めませんと」


「へっ、オレたちが偽物を持ってきたと疑ってるってことか」


「滅相もございません、念のためでございます」


「先日、風狼の牙を渡していたはずだ、それはどうした?」


俺は執事に先日渡した素材のことを聞いた。


「勿論鑑定させていただきました、間違いなく風狼の牙でした」


「へっ、そりゃそうだ、オレたちが倒して手に入れたんだからな」


「ええ、ですが私共にはそれを知るすべがございません、心配性なだけでございます、ご理解いただければと」


理解してくれと言いながら、他に選択肢はないだろうという態度の執事。


横の騎士風の男は何も話さないがこちらに威圧だけはかけてきているようだ。


「だってよ、どうする、リーダー」


「そうだな」


俺はしばし考える。


「全て本物であるとの鑑定ができれば報酬は間違いなくお支払いします」


「そうか…分かった」


そういって俺はテーブルに置いていた素材に手を伸ばす。


言い分が通ったと思った執事は、俺からそれを受け取るために手を伸ばそうとしていた。


しかし俺は素材を小脇に抱えた。


「…どういうことでしょうか?」


「このクエストはギルドを通した正規のものではない」


「その通りです」


「あくまで個人的なクエストである以上、互いの信用だ必要だ」


「…」


「そちらは俺たちが用意した素材を信用できないという…であれば俺たちもあんたたちを信用できない」


「どういう意味でしょうか?」


ガイルと騎士風の男は何も言わず黙ったままだ。


「信用してもらえない依頼主からのクエストなんてこっちから願い下げだ、この素材は道具屋にでも卸して換金することにするさ」


「よし、決まりだな、リュウ」


ガイルはさっそく席を立ち部屋を出ようとする。


「そのようなことはできませんし、させません…あなたたちに選択権があるとお思いか」


執事と騎士風の男が立ちはだかる。


「ここはエリーン伯爵の屋敷ですぞ」


「どうするかは俺たちが決める、貴族だろうが関係ない」


「ならば仕方ありません…無理やりにでも奪い取るとしましょう、アイベール!」


執事の声に反応してロングソードを抜き構える騎士風の男、この男がアイベールなのだろう。


アイベールは一歩踏み込んで、ロングソードを振り下ろしてきた。


後ろに跳び、攻撃を躱す俺とガイル。


武器は持ってきていないし、持ってきていても屋敷にはいる時点で預けさせられるので同じことだ。


奪われた形になるので預けるのを嫌い、そもそも持ってきていないのだ。


「火属性魔法:火球≪ファイアボール≫」


俺は魔法を放つ。


「補助魔法:魔法障壁-魔法≪マジックバリア≫」


しかし執事が唱えた補助魔法によって防がれる。


「抵抗はお止めなさい、おとなしく素材を置いていけば殺しはしません」


武器もなく魔法も通じない状況に勝利を確信している執事。


アイベールも油断なくロングソードを構えている。


「へっ、もう勝った気でいやがる」


ガイルの言葉に執事は鋭い眼光をして答える。


「実際にその通りでしょう」


「へっ、まだだぜ」


「レム!」


「ハイ!」


俺の懐に忍んでいたレムが飛び出す。


同時に収納魔法でしまっておいた俺の刀とガイルの大剣を取り出す。


「なっ!」


レムの姿を見てすかさず攻撃してくるアイベール。


しかしこの攻撃はガイルが大剣で受け止めた。


俺も刀を受け取ると同時に執事に攻撃を加える。


しかし、こちらは執事が懐から取り出したナイフに受け止められていた。


「少し痛めつけるだけで許してあげようかと思いましたが…」


「そりゃどうも」


「もうあなたたちは殺します」


執事の殺気が一気に部屋中に広がる。


と、同時に俺は自分の胸を貫く、ナイフを見た。


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