0094話 影の報告
「うぇぇ、みんな仲間になったの?」
朝にようやく意識を取りもどしたミコトの第一声がそれだった。
驚くのも無理はない。
昨晩、敵として戦った相手が翌朝には仲間として紹介されたのだから。
俺は元襲撃者だった5人を連れてミコトが休んでいる部屋に来ていた。
「ミコトも思うところはあるかもしれないが、受け入れてやってもらえるか?」
俺は聞いてみる。
「あー、うん、それは大丈夫、ちょっと驚いただけ、リュウたちが決めたんならあたしはそれでいいよ」
「あ、あの…その、すまなかった」
エイルがミコトに頭を下げる。
ミコトのダメージの原因が自分にあると思っているのだろう。
「ああ、全然大丈夫、あれは戦いだったんだし当然だよ、そもそも獣心化しないといけなかったのはあたしが弱いからだし、いまはもう仲間なんでしょ、頭なんか下げないでよ」
そのやり取りを見ていたマルタンが苦笑いをする。
「僕たちは受け入れてもらった方だからこんなこと言うのはおかしいのかも知れないけれど…」
「あっさりと人を信用しすぎではないのか?」
マルタンの言葉をトリスタンが受けとって言う。
「ああ、それは立場違えば考え方も変わるってだけだ、俺だって最初は助ける気なんかなかったぞ」
「はっきり言ってくれるわね」
イヴが少しムッとした感じで言う。
「なにせお前たちのことは何も知らないしな、それに俺たちからすればいきなり襲撃されたわけだしな」
「まぁ、当然と言えば当然ね」
エイルが俺の言葉を受け取る。
「だったらなんで受け入れたのよ」
イヴの質問に俺は答える。
「お前たちの話し…グゼフのことや組織のことを聞いて何とかしたいと思った、そしてお前たちが仲間になりたいと言った」
元襲撃者の5人は全員黙って聞いている。
「あとは信じるだけだと思った、それだけかな」
ミコトがウンウンと頷いている。
「そして、あたしはリュウが受け入れるって決めたのなら一緒に信じるだけ、かな」
「「甘い」」
マルタンとトリスタンが声を揃えて言う。
「でも」
「嫌いじゃないよ」
エイルとイヴが続けて言う。
「まぁ、僕は先に弟子にしもらっていますし、あなたたちとは違いますけどね」
ハイルがなぜか自慢気だが、俺からしたら大して変わらない。
あの時は加勢に行くために急いでいたし、ラルガンスとの戦いを見て、ハイルが脅威にならないと判断したことも大きい。
「まぁ、そういうことで5人仲間が増えた」
「うん、分かった」
「あと、全員無事だから心配するなよ」
「うん、ありがと」
俺たちはミコトを休ませるため、部屋を出て応接室へと向かう。
今日はカルロスの話しを聞いて、その後エリーン家へクエスト完了報告に向かう予定だ。
応接室に入るとすでにカルロスは到着していた。
「すまない、待たせたな」
「構いません」
応接室には昼は活動できないラルガンスとダメージが抜けきっていないミコトと世話係のジョセフ以外の全員が揃っていた。
元襲撃者5人のことはラウルからカルロスに伝えてもらっている。
「さっそくカルロスの話しを聞かせてほしい」
「ええ…報告は私が雇った影から行ってもらいます」
カルロスが何もない部屋の隅を指さす。
そこには、誰もいないと思っていたはずの部屋の隅の一つの人影が浮かび上がる。
「調査結果の報告を頼むよ」
カルロスの言葉に頷いた影は一歩だけ前に出る。
「調査結果ですが、シューレッダ・エリーン伯爵がチーム:龍翔<ドラゴニア>にクエスト依頼したのは別の貴族への貢ぎ物のようです」
「へっ、風狼の牙や鉄蠍の針が貢ぎ物になんかンなるのかね」
ガイルがもっともな意見を述べる。
「それについてですが、貢先はバウトマン辺境伯のようです、見返りは辺境伯の娘テレーザとの婚約です」
「へっ、貴族の姫様を手に入れるために俺たちに素材を入手させたということか」
「そのようですね」
「にゃー(執念だな)」
「オソロシイコトデス」
「まぁ、この手のことはよくある話しだ、別に問題もないしな」
俺はここまでのエリーン伯の行動に特におかしいところはないことを言う。
「確かに、貴族のクエストなんて大半は何かを入手したいというものが多いしな」
「へっ、冒険者もそれでメシ喰ってるやつも多いだろうしな」
ラウルとガイルが続く。
俺たちの会話が途切れるのを待って影が報告を続ける。
「エリーン伯の財政状況ですが芳しくありません、世界的な飢饉も影響しているようです、ただ、すぐにどうこうということは起こりません」
「そうか、それで素材を盗むということに繋がるのか」
俺はぼそっと呟く。
「そうですね…襲撃者を雇うのも安くはなと思いますが…」
ラウルが続けて言う。
「へっ、襲撃者を雇う方が、俺たちに払うより安いってことだろう」
「襲撃者についてですが、調査中だった昨晩に不審なものとの戦闘になりました」
「えっ、誰かに襲われたのか?」
「厳密には不審なものがいたところに私が現れた感じでした。」
「というと?」
「ウエストタウンの城壁にソイツは居ました、出会ったのは偶然でした」




