0090話 決着
「憑依されたものはなんで死ぬんだ」
俺はラルガンスの話しの中で疑問に感じたところを聞く。
「…悪魔は憑依したものの魂を刈り取る、確かに能力は上がるが意識を無くし、暴れるだけ暴れて魂を刈り取られて死ぬ、そう聞いたことがある」
「助ける方法は?」
「…」
ラルガンスは無言の答えを返す。
「へっ、とりあえずこのまま時間を稼げばいつかは倒れるってことか」
「憑依されたものは一様に苦しんだそうだ、彼も例外ではないだろう、そしていつかは死ぬだろうがその時間は人によって違うそうだ」
「ということは倒すしかないのか」
「へっ、そうだな…」
俺は後ろに顔を向けて言う。
「俺たちは彼を救うために彼を倒す…お前たちはどうする?」
「僕たちも戦う」
「グゼフを救う」
「あたいもだよ」
「うん」
マルタン、トリスタン、イヴ、エイルがそこに居た。
跪き、俺たちの話しを聞いていたのは気配で分かっていた。
「俺の言う倒すはただ倒すだけじゃない…彼を殺すことと同義だ」
「分かっています…それでも苦しんでいるグゼフを僕たちも助けたい」
「分かった、助かる」
それだけ言うと俺はグゼフに目をやる。
ガイルの剣やラルガンスの魔法を喰らっているがビクともしていない。
いやダメージは確かに受けているようだが、それでも一向に倒れない。
そういった感じだ。
俺も剣技を放つ。
「龍星剣術奥義:一閃!」
グゼフの右足を斬り裂く。
しかし状況は変わらない。
「へっ、こんな丈夫なヤツ、どうやって倒したんだ?」
「さっきは膝や側頭部なんかの鍛えられないところを狙って倒したんだが…」
俺は再度、グゼフの左膝に鞘に入った状態の刀をぶつける。
しかしグゼフはよろめきもせず、すぐさま俺に攻撃を繰り出してきた。
「リュウ、憑依されたあとは痛みを感じなくなる、急所への攻撃も特別には効かないということだ」
ラルガンスが種明かしをしてくれる。
「ちくしょう、正気に戻れよ、闇属性魔法:闇の矢≪ダークアロー≫」
ハイルの魔法が直撃する。
「僕たちもいくぞ!」
「おう!」
マルタンとトリスタンが左右からグゼフの頭部を挟むように蹴りを入れる。
「たぁっ!」
イヴは脛に蹴りを入れる。
「それっ!」
エイルの針がグゼフの胸に刺さる。
「ガァァァッ!!」
しかし、そのどれもが効いていなかった。
「闇属性魔法:闇の刃≪ダークブレード≫」
ラルガンスの魔法がグゼフを斬り裂く。
「雷属性魔法:雷撃≪ライトニングストライク≫」
合わせて俺も魔法を放つ。
雷撃がグゼフの身体を貫く。
プスプスと煙を上げるグゼフ。
「グォォォッ!!!」
しかし再び暴れだす。
「オーガ流剣術奥義:両刃!」
ガイルの剣技でグゼフの胸に十字の傷が入る。
しかしそれでも倒れない。
「くそっ!、なんだよ」
「もう倒れろよ、グゼフ!」
マルタンとトリスタンが攻撃を続ける。
エイルが針を投げるもののグゼフの拳圧に吹く飛ばされる。
イヴも攻撃を加えるが、腕を怪我した状態では大したダメージは与えられていない。
「へっ、こんな敵ばっかだな」
マルタン、トリスタン、エイル、イヴが攻撃のためにグゼフに近づく。
しかしそれは不用意だった。
「あぶない!」
俺が声をかけるも4人はグゼフを救いたいという気持ちが先行してしまっていた。
「ガァァッ!!」
グゼフの振りまわした両拳によって吹き飛ばされる4人。
「ぐぁっ!」
トリスタンがわずかに声をあげただけで他の3人ともども吹き飛ばされ、庭の周囲の木に激突する。
何とか生きてはいるようだが、もはや戦える状態ではないだろう。
「まずい…」
「まさか師匠も…」
ラルガンスとハイルが魔力切れを起こしたようだ。
「オーガ流剣術奥義:両刃」
ガイルが再び斬りつけるものの、そのあと膝をつく。
限界のようだ。
これで戦えるものは俺一人となった。
ふぅぅと俺は呼吸に意識を集中する。
周囲のエーテルを取り込み、俺は全身にそれを漲らせる。
「はぁぁっ」
気合を入れる。
体内に取り込んだエーテルが俺の中で何かに変わる。
それはオーラとなって俺を包んだ。
風狼と戦った時にも見られた現象だ。
俺は刀を握る腕に力を込める。
オーラは俺を通して刀をも包む。
グゼフに向かって駆け出す。
瞬く間に距離が詰まる。
そして、一振りしたその攻撃でグゼフの首を斬り落とした。




