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龍翔記  作者: GIN
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0088話 暴れだす巨体

「これで全員かな」


「そうね」


「僕もこれで全員だと証明します」


俺の問いにアイリスが答えてくれる。


同意をしたのはハイルだ。


俺はハイルに向かって頷く。


俺たちの目の前には捕縛されたエイル、イヴ、マルタン、トリスタン、そして巨体。


イヴもあの後、ガイルに取り押さえられ捕縛されていた。


これにハイルを含めた6人が襲撃者だ。


巨体を除き、襲撃者たちも全員意識を取り戻していた。


しかし固く縛られ、怪我もしている状態なので抵抗は無駄と悟ったのか大人しくしていた。


捕縛された後にイヴとハイルが少し口論をしたくらいだ。


裏切り者とハイルを責めるイヴだったが、組織自体への忠誠心は全体的に低いらしく、組織を抜けること、所属先を見つけたハイルのことを羨ましいと感じている節もあった。


他の襲撃者たちもさして気持ち的に変わらないのだろう。


そのハイルの傍にはラルガンスがずっと居る。


まだ完全に信用はできないということだろう。


だが、ハイルもそれを承知しているのか武器だった杖はラルガンスに預けているし、今は大人しくしている。


全員を捕縛したとはいえ、こちらの被害も大きい。


ガイルとラウルも怪我をしているし、受けたダメージも大きそうだ。


アイリスも傷だらけのうえ、レイピアにヒビも入ってしまっていた。


アイリスのレイピアの話しを聞いた時に、イヴは悔しそうな顔をしていた。


ミコトの意識はまだ戻らない。いま、アイリスとレムが傍に付いていてくれている。


全く無傷なのはラルガンスくらい。さんじゅーろーも元気そうだ。


俺もなかなかのダメージを受けている。


思ったより襲撃者たちの実力は高かった。


「へっ、コイツらどうするよ、リュウ」


「そうだな…拷問して依頼者のことを話させた後に処刑…かな」


「…」


襲撃者たちは黙っている。


戦いに敗れ、相手に捕まってしまった自分たちの処遇については薄々分かっているのだろう。


いまは黙って座っている。


「なんてな…別に彼らをどうこうしようとは思わない…クエストの件が終わったら全員解放する」


「へっ、そんなこったろうと思ったぜ」


襲撃者たちは驚きの顔で俺を見ている。


それはそうだろう、自分たちの命を狙ってきた者たちを倒して捕らえたあげく、何もせずに解放するなんて聞いたことがないはずだ。


「甘いよ」


イヴが俺に話しかけてくる。


「まぁ、そうだろうな」


俺は笑いながらイヴに返す。


「だが、もうお前らに依頼したのが誰かは分かっているし、わざわざ依頼が終わってまで借りを返そうともしないだろ」


「くっ…」


「ははっ、完全に僕たちの負けだね、たしかに依頼が終わったらあんたらには二度と会いたくないしね」


マルタンはもう戦う意思はないようだ。


「でも、あたいたちを助けるなんて何か怪しい」


エイルはまだ半信半疑。


「とはいえ、僕たちに選択肢は元々ない」


トリスタンもマルタンと同じく戦う意思はもうないようだ。


「皆さんの処遇は聞いての通りです、明日の引き渡しが終わるまでは軟禁させてもらいますが、その後に解放します」


ラウルが襲撃者たちに説明する。


「へっ、そろそろ屋敷に戻るか」


「そうだな、アイリスもミコトも疲れているようだし」


その時。


ドクンという振動が庭に響く。


「なんだ?」


ドクン。


再び振動が起こる。


それはいまだに意識を失ったままの巨体から発せられていた。


「これはなんです?」


ラウルが襲撃者たちに声をかける。


「いや、あたいたちも初めてみたよ」


ドクン、ドクン、ドクン。


段々と振動の感覚が短くなっていく。


「おい、どうしたんだ?、しっかりしろ!、グゼフ!」


「グゼフ!」


グゼフというのが巨体の名前なんだろう。


ドクン!という一際大きい振動が響く。


「グゥゥッ!」


グゼフがくぐもった声を上げる。


「グァァァァッ!!!!!!!」


拘束していた縄を力任せに引きちぎり、立ち上がるグゼフ。


「おい、やめろ、グゼフ、もう戦いは終わったんだ」


マルタンが大きな声でグゼフを制する。


「ガァァッ!!」


「なんか様子がおかしい!」


イヴが悲痛な声をあげる。


「へっ、こりゃ、もう一戦あるな」


ガイルは早速剣を構えている。


「ラウル、アイリスとミコトを頼む」


「分かった!」


レムとさんじゅーろーもラウルに付いていく。


「ガァァッ!!」


グゼフが凄まじい威力の拳を振り下ろしてくる。


俺とガイルはそれを左右に跳んで躱す。


空を切ったグゼフの拳が地面にめり込み、土砂を巻き上げる。


「なんてパワーだ!」


「へっ、一撃もらったらアウトだな」


続けざまに攻撃を繰り返すグゼフ。


それは俺とガイルだけでなく、襲撃者たちも標的にしていた。


「わぁぁっ!」


拘束されながらも何とか避ける襲撃者たち。


「いたた…ちょっとグゼフ!いい加減にしなさい!」


エイルの叱責が飛ぶ。


だが、その声はグゼフに全く届かない。


「グオォッ!!!」


グゼフの攻撃がエイルに迫る。


俺は咄嗟にグゼフとエイルの間に入り、その拳を受け止める。


が、あまりのパワーの差にエイルごと吹っ飛ばされる。


「ちょっと、なんなのよっ!」


「いてて…」


エイルが文句を言っている。俺になのかグゼフになのかは分からないが。


「へっ、こっちだぜ!」


ガイルががら空きになったグゼフの背中を斬りつける。


グゼフはガイルにターゲットを移す。


俺はその間にエイルの拘束を解く。


「えっ」


「あいつは…グゼフには誰の声も聞こえていない、お前らも例外じゃないみたいだからな、自分の身は自分で守ってくれ」


イヴ、マルタン、トリスタンの拘束も同じく解く。


「闇属性魔法:闇の矢≪ダークアロー≫」


「闇属性魔法:闇の手≪ダークハンド≫」


ラルガンスとハイルの魔法がグゼフに直撃する。


しかし、いずれの魔法も大きなダメージにはなっていないようだ。


俺は刀を構えてグゼフに向かっていく。


そのとき、拘束を解かれた襲撃者たちが俺たちの戦いを遠巻きにみるように集まっていた。

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