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龍翔記  作者: GIN
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0085話 ラルガンスVSハイル

高まっていくラルガンスの魔力。


難解な詠唱を行うことで、魔力が練り上げられていた。


「なっ、なんだこの魔力は…」


ハイルは驚愕していた。


組織の中で自分は一番の魔導士だった。


そして珍しい闇の魔法を使う魔導士。


闇魔法の大家であり、その第一人者と呼ばれるラルガンス。


彼の残した本や資料などを読み漁り、闇魔法に関する知識は一番だと自負していた。


しかし、自分以外に闇魔法を使うものがいた。


それも自分より高位の魔法を操るものだ。


ハイルの実力は本物だ。


魔法の中でも制御が難しいとされる闇魔法。


闇の矢だけとはいえ、闇魔法を使える時点で実力があることが分かる。


ただ惜しまれるのは自分が憧れ、師匠と思い、その功績を追い続けたラルガンスが目の前にいることに気付けていないことだ。


「隙だらけだ、喰らえ、闇属性魔法:闇の矢≪ダークアロー≫」


ハイルは詠唱に集中しているラルガンスめがけて魔法を放つ。


しかしハイルの魔法はラルガンスに届く前に霧散して消える。


「なっ、闇が消える、そんなバカな!」


「大人しくしていなさい…いまの私の状態ではさすがに制御が難しいのですから」


ラルガンスの詠唱が終わる。


その魔力は膨大なまでに高められていた。


魔力の痕跡を追うハイル。


「なっ、なぁぁっ!!」


ハイルの眼に映ったのは巨大な闇の玉。数メートルはあろうかという大きさだ。


それがラルガンスの上空でくるくると回転しながら、さらに大きさを増していた。


「欠点は発動に時間がかかることです、ですが威力は十分ですよ」


その巨大な玉が今度は収縮を始める。


「こうして集中して魔力を操ることで顕在化だけでなく、その動きを操ることも可能です」


巨大な玉だった魔力玉が卵ほどの大きさにまで収縮し、ラルガンスの右手人差し指の上で回転している。


「どうです、先ほどの大きさでは動きが遅すぎるでしょうが、これくらいならかなり早く相手にぶつけることが可能です」


その言葉を聞いてハイルが青ざめる。


「ま、まさかっ!」


「そのまさか、です」


ラルガンスが指先をハイルに向けて倒す。


と。


凄まじい速さでハイルに迫る魔力玉。


「うわぁぁっ!!!!」


ハイルは思わず叫ぶ。


そして、それが今生最後の言葉になると確信していた。


自分の魔法をぶつけたくらいではどうしようもない。


魔導士である自分が躱せるような速さでもない。


そして威力はすさまじいだろう。


ハイルにできるのは固く目を閉じて身構えることと、腰を抜かすことくらいだった。


数秒経ち、両手で頭部を守るようにガードしていたハイルは何も起こらないことを不思議に感じ、恐る恐る目を開ける。


相対していた魔導士はすでに自分に興味を無くした様子で、魔力玉を眺めている。


「ふむ、制御は上々ですが、まだまだ作りが甘い…やはり力はまだ戻っていないか」


「お、おい」


ハイルは思わず声をかける。


「んっ、ああ、あなたですか…」


「何をしているんだ…?」


「何をとは不思議なことを…あなたを倒したので次は魔力玉の制御の研究をしているのです」


「ぼ、僕を倒しただと?」


「そうでしょう、すでに勝敗は決しています、あなたはさきほどの我の攻撃を見て、敗北を悟ったでしょう」


「…」


ハイルは何も言えないでいた。


事実だからである。


「くそっ、僕はどうすれば…」


任務に失敗した形になるハイル。


組織に戻ってもその咎で処刑されるだろう。


かといって、眼前の男には逆立ちしても勝てそうにない。


そこにハイルにとっては敵である男が現れ一言発する。


「リュウ…」



巨体を昏倒させ、同じく庭で戦っていたラルガンスの元へ行く。


さんじゅーろーとレムも一緒だ。


小さな黒い魔力で作った球を見つめているラルガンスに声をかける。


「終わったのか、ラルガンス」


「リュウ…」


俺はラルガンスと戦っていたであろう男を見る。


魔導士のようだ。


しかしすでにラルガンスに敗れたのか、じっとしたまま動かない。


「その男ならもう大丈夫、名はハイルといい敵方の一人だ」


「そうか、まだ屋敷内では戦っているかもしれない、俺は加勢に行くがラルガンスはここで敵の増援に備えてほしい」


「承った」


「レム、さんじゅーろー、お前たちもラルガンスと一緒にここを頼む」


「にゃー(分かったぜ)」


「ショウチシマシタ、リュウサマ、ラルガンスサマヨロシクオネガイシマス」


俺は屋敷に向かおうとしたその時。


ハイルという名の敵が叫ぶ。


「ちょ、ちょっと待て、いまラルガンスと言ったか?」


「あ、ああ」


あまりの勢いに俺は多少引き気味に答える。


ハイルはわなわなとラルガンスの方を見る。


「お会いしたかった、師匠…」


「誰が師匠だ、お前など弟子に取った覚えはない」


「し、失礼しましたっ!」


ハイルは突然土下座をした。


話しがよく見えないが、どうやらラルガンスのことを師匠と思っているようだ。


「んじゃ、あとは魔導士同志で…」


俺はそそくさとその場を離れようとする。


「あ、あんたからも僕を弟子にするようにラルガンス様に言ってくれよ!」


ハイルが俺の足に縋りつく。


「えー…」


こんなことをしている場合ではないのだ。


俺はラルガンスを見る。


「こんなに言ってるんだ、弟子にしてやれよ」


「…何言ってんだ、敵だぞコイツは」


「もう組織は抜けます、一生師匠についていきます!」


「ほら、こう言ってるし」


俺はハイルを引き剥がそうとするとするが、魔導士とは思えない力で俺のズボンを掴んでおり離れない。


「まったく…」


ラルガンスがハイルを見て言う。


「まぁ、いいでしょう、元々闇の魔法は成り手が少ないですしね…」


「本当ですかっ、ありがとうございます!」


ハイルは再びラルガンスに向かって土下座をすると、胸につけていたエンブレムを外し、投げ捨てる。


どうやらいまのが組織とやらを示すものなのだろう。


「よかった?な、ラルガンスにハイル」


ラルガンスはやれやれという風に頭を振っている。


「まぁ、使い道はあるでしょう…」


ラルガンスが何やら怖いことを呟いた気がするが俺は聞こえていないことにした。


「よし、まずは加勢に行く!」


俺がそういったと同時に屋敷の窓ガラスをぶち破る音と人影が2つ落ちるのが見えたのだった。

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