0083話 アイリスVSイヴ
「死んだふりで隙を付こうとしても無駄だよ」
イヴのその言葉を聞き、お腹をさすりながら立ち上がるアイリス。
「イタタ…」
「大したダメージにはなってないみたいだね」
「そんなことない、すごく痛いよ」
「だったら負けを認めてあたいにコロされるかい?、素直に死んでくれるなら痛みは感じないようにしたげるよ」
アイリスは首を振って答える。
「さっきも言ったけど、それはできないわ…」
「ふん、だろうね」
イヴは再び構える。
「じゃぁ、さっさと終わらせて別の戦いの場に向かうだけだよっ」
左手を腰にあて、剣を右下に流した得意のポーズでアイリスは答える。
「それもさせない、あなたはわたしが倒す」
「ふん、どうかなっ!」
イヴが高速の拳を繰り出す。
アイリスは突きでそれに合わせる。
「ほう…」
アイリスのレイピアとイヴの小手が激しくぶつかる。
「わたしも突きは得意なんだよね」
「ふん、さっきと同じだよ、どこまで付いてこられるかなっ!」
イヴが拳の連撃を見せる。
3発、いや5発。
ほぼ同時に繰り出されるような拳の雨。以下にイヴの拳のスピードが速いか分かる。
「…!」
キィンという金属音。それはアイリスのレイピアとイヴの小手がぶつかった衝撃音だ。
それが5回立て続けに響く。
アイリスはイブの拳をすべてレイピアで弾き返していた。
そして、そのまま渾身の突きを繰り出す。
「ぐっ!」
イブは左手の小手で何とかアイリスの突きを防ぐ。
アイリスとイブは共に後方へ跳び、互いに距離を取る形になった。
「お嬢ちゃんだと思ってナメてたわけじゃないけど…6回も突きを繰り出すとは中々やるねぇ」
「厳しい人に鍛えられたからね」
ドガァンという音が響く。
屋敷の中でも激闘が繰り広げられているようだ。
「他も激しいねぇ」
「そうみたいね」
「気になるだろう、さっき部屋を出て行った小さいヤツも今頃は追いつかれているだろうし」
「…」
アイリスはイブから視線を外さない。
「なんだい、仲間が気にならないのかい、薄情だね」
再び激しい音が屋敷内に響く。
リュウもテラスに落ちたまま戻ってこない。
「心配ないよ」
「んっ、どういう意味だい」
「みんなチーム:龍翔<ドラゴニア>のメンバーだし、きっと勝つって信じてる、そしてわたしも勝つって信じられてる」
「なんだいそれは…」
イヴは大げさにため息を吐く。
「甘っちょろいこと言ってるんじゃないよっ!」
イヴが怒涛の攻撃を繰り出す。
両拳に加え、蹴り、膝などの体術も織り交ぜた攻撃だ。
アイリスも小細工はなし。
得意の突きで一歩も引かずに打ち合う。
イブの蹴りがアイリスの腹に決まる。
反撃にアイリスの突きがイヴの肩に刺さる。
互いに引かない打ち合いは捌ききれなかった攻撃を受けつつ続けられる。
イヴの拳がアイリスの顔にヒットする。
口から血を流すアイリス。
「痛いじゃないの!」
アイリスの突きがイヴの脇腹を貫く。
「痛いじゃないのさっ!」
イヴの左蹴りがアイリスの右側頭部にヒット。
アイリスはお返しにとイヴの右肩を貫く。
「ちぃぃ…」
イヴが思わず距離を取る。
アイリスはその隙を逃さない。
イヴが不用意に後方に跳んだ作った距離を、力強い一気の踏み出しで一瞬で詰める。
「なっ、しまっ!」
「虎華剣術奥義:茨棘」
アイリスの剣技。
しかしそれはイヴの左突きに阻まれる。
「…!」
右足を前に出し、半身の体勢を取っていたアイリス。
突きを繰り出した右腕を後方に引くと同時に左足を前方に踏み出す。
茨棘を放った時と半身の体勢が逆になる。、
そしてそのまま突きを放つ。
「虎華剣術奥義:茨棘・強!」
スピード重視ではないと力強い一撃。
本来なら簡単に避けられるだろう一撃だが、すでに体勢を崩していたイヴは避けることができない。
両方の腕を交差し、小手で受け止めることを選択した。
「ぐぁぁっ!」
イヴが両手につけていた小手が粉々に砕け散る。
また両手もレイピアが貫き、流血する。
「くぅぅっ!」
イヴはなんとか立ち上がるものの、両手はだらんと前方に垂らしたままだ。
骨折もしているのかもしれない。
「その怪我ではもう戦えないでしょう」
「なんてこった、このあたいが…」
アイリスは得意のポーズを取りながらイヴに言う。
「ちっ、ここまでだ、あたいは退くよ」
イヴはそのままテラスへと飛び降りる。
ここでの勝利はアイリス。
「危なかったぁ」
イヴの姿が見えなくなったのを確認してからアイリスは自分のレイピアを見る。
ピシッという音とともに、無数のヒビが入っていく。
耐久性の低いレイピアでパワー系の技を繰り出した代償。もう一回突きを出せばその瞬間にボロボロに崩れていたはずだ。
それでもそれを悟らせなかったのだから疑うことなきアイリスの勝利である。




