0082話 ミコトVSエイル
「さて、これが例のブツかい」
エイルは倒れたミコトが落とした箱を拾い上げると蓋を取ろうとする。
だが、中に何か入っている音はするが蓋が取れない。
「なんなんだい、これは」
エイルが箱に集中していたその時、ミコトは自分の肩に刺さった針に気付く。
「こんな箱壊してしまえば」
そこまで言って先ほどまで倒れていたミコトの姿がないことに気付くエイル。
と同時に後方からの斬撃を飛び退いて躱す。
「ダメかぁ」
エイルはミコトと向き合う。
「ちっ、偽物かい」
エイルは箱を投げ捨てる。
ミコトは箱を見もしない。そのことでエイルは箱と中身が偽物であることを確認した。
「…おかしいね、倒したと思ったけど?」
「うん、確かにやられた、だけど…」
ミコトは自分の服、エイルの攻撃が当たった部分を見せる。
「お兄ちゃんの冒険者バッジだよ、これに当たってたんで致命傷にならなかったってわけ」
「ふん、運のいいこと」
「まぁ、運も実力のうちってことで」
「でもどうするんだい、不意打ちも躱されてこの後どうやって戦う気なんだい」
「そうだな~」
ミコトは二本の短剣をくるくると回し、握りなおす。
「あたしもチーム:龍翔<ドラゴニア>の一員、正面から戦って勝つよ」
「…言ってくれる、実力差を見せてあげるよ」
そう言いながらもエイルは警戒をしていた。
プロとしての勘が、小さな不安と警戒を呼び掛けていた。
「あんたが補助魔法しか使えない補助士だってことは分かってるんだ、攻撃に特化した能力がないクセにどうやって戦う?」
エイルは自分の気持ちを振り切るように、自分に言い聞かせるようにしながら攻撃を行う。
ナイフを投げるようなフォームで繰り出されるエイルの攻撃。
だが、さっきまではそれを必死に躱していたミコトが微動だにせず、短剣でエイルの攻撃を防ぐ。
「残念、攻撃の手段は分かったからね」
ミコトは自分の足元に落ちたものを見ながら言う。
それは細く薄い針だった。
ミコトはそれを拾い上げる。
「針か…こんなに細いと全く見えない。」
「そうだろう、使い方も難しいしね…ただ、これまでは一度も戦闘中にバレたことはなかったんだけどね」
「…どうする?針だってわかった以上、あたしはそれを警戒して戦える、だけどあんたはカラクリがバレたから退いたほうがいいんじゃない?」
「ふん、心配してくれるのかい、優しいねぇ」
エイルが不敵な笑みを浮かべる。
「こっちはプロだからね、針だってバレた後の戦い方もあるんだよ!」
エイルは再び針を投げてくる。
ミコトはそれを短剣で弾く。
「何度やっても一緒!、今度はこっちから行くよっ」
ミコトがエイルに攻撃を加えようと足を踏み出す。
その時、背中と太腿に激しい痛みが走る。
「ぐぅっ!」
ミコトは思わず膝をつく。
痛みの原因は分かっている。エイルの針が刺さったのだ。
「なんで、全部叩き落としたのに…」
そういう間に右腕にも痛みが走り、短剣を落としてしまう。
「ああっ!」
「本物のブツはどこにあるんだい?、お前が持っていたのは偽物ってことは分かってるんだよ」
「言うわけないでしょ」
エイルは無言でミコトを見下ろしている。
そしてミコトは再び背中に痛みを感じる。
「くっ!」
ミコトは俯せに倒れてしまう。そこに左手にも痛みを感じ、短剣を放してしまう。
エイルはミコトの短剣を遠くに蹴り飛ばしていた。
これで身動きが取れず、武器も手放してしまった形だ。
「強情だね…まぁいい、あとからゆっくり探すとするか」
ミコトは考えていた。
エイルの攻撃のカラクリはなんとなく分かった。
先ほどの攻撃の際に微量な魔力の流れを感じたのだ。そこから推測する。
おそらくエイルは魔法で針を浮かし、自在に操っているのだろう。
一か所にとどまらず、常に動いているのが対策としては有効だろう。
だが、足と腕にダメージを受けて、起き上がることもできない。
「…」
ぼそっと小さく何かをつぶやくミコト。
それはエイルにも聞こえないくらいの小さい声だった。




