0071話 深夜の訪問者
ズガァンという大きな音を立て、俺はサンドワームの後ろにあった大岩に直撃した。
勢いあまって止まれなかったためだ。
「リュウ~!」
アイリスが駆け寄ってくるのが見える。
俺は崩れた石の下敷きになりながら、左手だけをあげた。
アイリスがその手を引っ張ってくれるが、アイリスの力ではびくとも動かなかった。
結局、ガイルとラウルに助け出される。
「助かった、ガイル、ラウル」
「へっ、いいってことよ」
「最後の大技はよかったです、剣と魔法の融合技でしたね」
「ああ、だけどレムが降らせた水で弱っていたから内部までダメージが入ったのがよかったんだろう」
実際、水をかぶり弱る前のサンドワームに俺とガイルの攻撃は殆どダメージを与えられていなかった。
弱っていたからこそ、効いた攻撃というので間違いないだろう。
「それでもこの戦闘は私たちの勝ちです」
ラウルが胸を張って言う。
肩にはさんじゅーろーも自慢気に胸を反らしている。
「そうだな」
「アイリスもありがとうな」
俺の言葉に頷くアイリスは、俺の左手を握ったままだ。
「ゴブジデヨカッタデス」
レムがフヨフヨ浮きながら祝福してくれる。
「ああ、レムも活躍したな、助かったよ」
「トンデモゴザイマセン」
レムはフヨフヨと俺たちの周囲を飛び回る。
喜んでいるんだろう。
「おーい、みんなー」
ミコトの声が聞こえる。
早速倒したサンドワームたちの解体を行っているミコト。
魂石は大量に入手できたようだ。
「相変わらず手際良いな、ミコト」
「あったり前、これが補助士の仕事だしね」
言いながらてきぱきと解体していくミコト。
そして俺とガイルもミコトの指示に従いサンドワームの解体を手伝う。
粗方の部位をバラバラにし、ようやく作業が完了した。
「つかれたー」
「お疲れ、ミコト」
俺はミコトに声をかける。
「うん、リュウもお疲れ」
言うと俺に抱き着いてくるミコト。
「どうした?」
「へへっ、ご褒美~」
「あっ、ずるい!、私も!」
そう言ってアイリスも反対側に抱き着いてきた。
「お疲れ、二人とも」
俺は両側に抱き着いている二人を抱き寄せた。
「うん…」
「へへ…」
「へっ、お熱いとこ悪いが、そろそろ野営のできるところまで移動しようぜ」
ガイルが言う。
「ああ、そうだな」
サンドワームを倒したとはいえ、ここはまだ鉄蠍の生息場所。
実際、生き残りがいるかもしれないし、どこかに隠れていた個体が戻ってくるかもしれない。
そして俺たちは砂漠の生命線である水をこの戦いで大量に消費した。
早くオアシスまで戻らないと干からびてしまうことになる。
「今からオアシスまで行けるかな~」
「微妙な時間ですね、もしかしたら到着前に夜になってしまう可能性もあります」
「へっ、どうするよ?、リュウ」
俺はしばし考える。
「ここは危険だから少し移動しよう、今日はそこで野営し、オアシスへ向かうのは明日だ」
鉄蠍討伐後に一泊するのは予定通りだ。
先ほど確認したところ水もまだ少し残っている。
余裕があるわけではないが、一泊し、オアシスに向かうまでの間くらいなら大丈夫そうだった。
こうして俺たちは鉄蠍生息地から少し離れた場所、昨晩と同じ場所で野営を行った。
解体した戦利品は全てレムに収納してもらっている。
王都に戻ったら、エリーン家に鉄蠍の尾を届けて、報酬を手に入れたら情報屋へ行く。
これで、ようやくアイリスにかけられた呪いの情報に近づける。
呪い解除につながる情報があればいいが…
俺はそこまで考えた後、眠りに落ちたのだった。
「おい、リュウ、起きろ」
夜中にラルガンスに起こされる。
ラルガンスは今のところ夜や影のあるところでしか顕現できないので、夜の見張りを買って出てくれている。
「んっ、どうした?、ラルガンス」
「お前にお客さんだ」
「客?、こんな夜中に?」
ラルガンスに促されて俺のテントに入ってきたのは少女だった。
獣人。駱駝人の少女だった。




