0065話 好きなもの
「そっか…」
俺は昨晩のミコトとのやり取りをアイリスに伝えた。
アイリスは俺が話している間、ずっと黙って話しを聞いていた。
「…私もミコトと話したい」
「ああ…呼んでくるよ」
俺はテントを出て、ミコトに声をかける。
俺は焚火の傍に腰を下ろす。
入れ替わりでテントに向かうミコト。
「へっ、ミコトのことよろしく頼むぜ、リーダー」
「ああ…」
「まぁ、アイリスがどう思うか、だが…」
アイリスとミコトがいるテントを見ながら言葉を漏らすガイル。
俺は頷くことしかできなかった。
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「ア、アイリス…あのね」
テントの中央に正座しているアイリスに声をかけるミコト。
「座って、ミコト」
ミコトは大人しく座る。
しばしの沈黙。
「あ、あの」
「ねぇ…ミコト」
ミコトが声をかけようとしたタイミングでアイリスの言葉がそれを遮る。
「リュウのどこが好きになったの?」
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「オフタリメノオクガタ、オメデトウゴザイマス」
「ああ、ありがとう、レム」
フヨフヨと浮きながら祝福の声をかけてくれるレム。
「…」
ラウルは黙ったままだ。
考えていることは分かる。
万が一、アイリスが今の状況を受け入れられない場合のことをシュミレートしているのだろう。
いつでも冷静。あらゆる可能性を考え、その場で最適な行動をとる。それが戦術士ラウルだ。
「にゃー(なるようにしかならんて)」
さんじゅーろーはラウルの傍で手伝っているのだか、邪魔しているのだか分からない言葉をかけていた。
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いまは休んでいるラルガンスには昨晩のうちに話しをしていた。
「ふむ、そうか、おめでとう」
という一言だけでラルガンスは夜の見張りを継続していた。
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「す、好きって!」
「…好きになったんでしょう」
「う、うん」
「どこが好きになったのか聞かせてほしい…」
「分かった、最初にダールベン村で見たときはね…ガイルよりも小さいし、何か弱そうだと思ったんだ」
「うん」
「砦への潜入とか、その後の戦いで結構やるじゃんって思った、でもこの時はまだ好きとかじゃなかった」
「うん」
「アイリスと逸れたときにリュウはすぐに穴に飛び込もうとしたり、無茶なことしようとしたんだ、あたしは止めたんだけど…」
「うん」
「その時かな、なんなのコイツと思って、それだけ思われてるアイリスが羨ましいと思ったんだ」
「…」
アイリスが顔を赤くする。
「その頃にはもう好きだったのかも…ガイルにリュウやアイリスとのパーティの件を聞かれた時もすぐにOKしたし」
「うん」
「風狼戦でリュウの言葉で力が漲ったときにはっきりと自覚したんだ」
「…」
「だから、どこがっていうか…全部好きなのかも」
「そう…」
アイリスはそれだけ言うとすっと立ち上がる。
そしてミコトの傍に座ると、そっと手を取る。
「分かる!、分かるわ、ミコトっ!」
「えっ…」
「どこって言われても困るわよね、私もそう!、もうだって全部好きなんだもん!」
熱っぽく語るアイリス。
「お、怒らないの?」
「なんで?」
「だって、リュウとアイリスの関係を知ってて…それなのにあたしは…」
「私は…怒るどころかうれしいよ」
「そうなの?」
「うん、だってリュウのことを好きな人が身近にいるなんて嬉しい、リュウのこと分かってくれる人がいるのも嬉しい」
その言葉を聞いて涙を流すミコト。
「そう…よかった…」
「あっ、でも一番は譲るつもりはないからね」
「うん、分かった、でも油断したら知らないから」
そうして二人は笑いあった。
同じものを愛でる価値観の共有にどこか暖かさを感じながら。
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アイリスとミコトのテントから笑い声が聞こえたことで、丸く収まったことを察する俺とガイル。
「にゃー(うまく纏まったようだね)」
さんじゅーろーが言う。
「いろんなシュミレーションをしたよ、杞憂に終わってよかった」
ホッとした様子のラウル。
「へっ、ともかくこれで鉄蠍に集中できるな」
「ヨカッタデス」
アイリスとミコトがテントから出てくる。
「お、お待たせ」
「さぁ、行きましょう!、リュウ」
「ああ、じゃぁ、出発だ!」




