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龍翔記  作者: GIN
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0064話 オアシス

「にゃー(ようやく休憩できるな)」


さんじゅーろーはぐっと伸びをしたあと、ラウルの肩をポンポンと叩くと、ひょいと飛び降り、トテトテと水辺に向かって歩いて行った。


移動中はずっとラウルの肩に乗っており、戦闘中のラウルの指示に合わせて、にゃーと鳴いていた。


「…」


その後ろ姿を茫然と見送るラウル。


俺たちはラウルと一緒に水辺に移動した。


「にゃー(皆も来たのか、水辺は気持ちいいぞ)」


一足早く水を堪能していたさんじゅーろーがオアシスの気持ち良さを教えてくれる。


「おじゃましまーす」


「にゃー(遠慮なく)」


まるで自分のオアシスかのような態度のさんじゅーろー。


その自然な態度に俺たちは笑顔になる。


「ははっ、疲れが吹っ飛んだよ、ありがとう、さんじゅーろー」


一瞬キョトンとした顔をするさんじゅーろー。


「にゃー(お役にたてて何よりだよ)」


そう言うと再び伸びをして今度は日陰に向かって歩き出した。


そこで丸まるとすぅすぅと眠り始めた。


「自由だね、さんじゅーろーは」


アイリスが笑いながら言う。


「ああ、俺たちの中にはいないキャラクターだな」


「へっ、生意気なやつだが、猫なんだし、それが普通なんだろうぜ」


「あたしも眠くなってきたよ」


「ああ、今日はここで休むことにしよう、いいな、ラウル」


「あ、ああ、もちろん構わない、計画通りだしな」


俺たちはレムからテントを受け取り、それを組み立てる。


同時にアイリスとラウルが食事の用意をする。


食事をとり、武器の手入れを済ませた俺たちは簡単な会議を行う。


内容は明日の行動指針だ。


目的は、なるべく鉄蠍の生息地点近くまで向かうこと。


可能であれば鉄蠍を目視してから、近くで1泊する。


鉄蠍は明後日の討伐ということになる。


明日の行軍状況次第だが、魔獣も多いし、明日中に鉄蠍を倒すのは難しいというのが一致した意見だった。


夜の見張りをラルガンスに任せ、俺たちは明日に向けて休むことにしたのだった。



静かな砂漠を照らす月明かり。


俺はそれを浴びながら精神を集中させる。


風狼戦で発した淡い光。


魔法のような効果だったが、魔力を使った覚えはない。


スキルのようにも思うが、おれはそもそもあんなスキルは覚えていない。


その後も戦闘は行っているが、淡い光の再現はできていない。


今宵も何度は再現を試みたが、ダメだった。


今晩での再現を諦め、俺はテントに戻ろうとしたところに誰かの気配を感じる。


「…誰かいるのか…いやこの気配はミコトか?」


「へへ、バレたか」


ミコトが舌を出して笑顔を見せる。


「どうしたんだ?こんな夜中に」


「んー、ちょっと寝付けなくてさ、外を見てたらリュウがオアシスに行くのが見えたから付いてきた」


「そうか」


俺とミコトは水辺に腰を下ろす。


月が雲隠れ、周囲は少し暗くなる。


「ふたりでゆっくり話すのは初めてだね」


「あー、そうだな」


砦で話した際は、アイリスを追いかける状況だった。


腰を下ろして話すのは確かに初めてだ。


暫くの沈黙。


「あー、あたしらしくない!」


「うおっ、びっくりした!」


急に大きな声を出すミコト。


そしてミコトは俺を見ながら言った。


「ねぇ、リュウ…あたしもお妃にしてよ」


ミコトが顔を真っ赤にしている。


「急にどうしたんだ?」


「ん~、急ってわけでもないんだよね…」


ミコトは砦での戦いの際、アイリスのことを助けるために俺が無茶をしたことで興味を持つようになったらしい。


で、風狼戦などを経て、俺のことをはっきりと意識するようになったとのことだった。


「…ダメかな」


「俺にはアイリスがいる」


「分かってる」


ミコトは膝を抱え、そこに顎をのせる格好になる。


「でも…結婚は一人じゃないといけないわけじゃないじゃん」


ミコトの言う通りだ。


この世界は戦いと死に満ちている。


そのため、どの種族も、種の保存を優先し結婚に決められた道徳観などない。


「アイリスは友達だし、仲間だし…裏切れない…でもあたしは自分の気持ちも裏切れない」


ミコトが涙をこぼしながら言う。


「分かった…アイリスには俺から話すよ」


言いながら俺はミコトの頭を撫でる。


「ありがと、リュウ」


ようやく笑顔になったミコト。


ヒューイの件以降ずっと元気がなかったが、吹っ切れた様子が伺える。


その時、別の気配を感じる。


「…!」


俺は精神を集中させる。


雲に隠れていた月が姿を現す。


「にゃー(若いっていいねぇ)」


オアシスに着いた時から寝たままだったさんじゅーろーがそこに居たのだった。


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