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龍翔記  作者: GIN
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0061話 診療所

ラウルの加入を決め、俺たちは屋敷を後にした。


ラウルとは明日、アルドラ砂漠入り口で待ち合わせをすることになった。


そこで合流し、一緒に鉄蠍討伐に向かう。


俺たちはガイルが俺に会わせたい2人目の元へ向かっていた。


この2人目についてはガイルは何も言おうとしない。


最初に話しを聞いた時も会えば分かるということだった。


そして今も無言で先導するガイル。


ミコトもなんだか大人しい。


俺たちも何となく重い空気を察して、誰も口を開こうとしなかった。


途中、尾行している者の存在に気付いた俺たちはラルガンスの魔法で気配を消し、さらにラルガンス自身に尾行者の対処をしてもらうことにした。


そうして暫く歩いたのち、どうやら目的地に着いたようだった。


「着いたぜ」


ガイルが指さした場所は病院(?)だった。


「…病院、か?」


「へっ、薄汚れてはいるがな、確かに病院だ」


「…薄汚れていて悪かったね」


現れたのは長い黒髪に眼鏡をかけた美女だった。


「あー、いや、これは言葉の綾っつーか、ね…」


あのガイルが言い訳をしている。


「久しぶり、ミリル先生!」


「おー、久しぶりだな、ミコト」


ミコトはミリルと呼んだ女性に飛びついた。


ミリルの方もミコトの頭をガシガシと撫でている。


「あー、ミリル」


ガイルが声をかけるが無視されている。


「おい、ミリル」


再び声をかけるもののミリルはミコトとの話しに夢中だ。


「…ミリル…先生」


「なんだい?」


ミリルがミコトの頭を撫でるのをやめると、ツカツカと俺とガイルに近寄ってくる。


「紹介するぜ、リュウだ、俺たち…」


「おー、君がリュウか!、私はここで診療所をしているミリルだ」


ミリルは言いながら手を差し出してくる。


「あ、ああ、よろしく」


俺はミリルと握手をした。


「…このヤロウ…」


「なんか言ったか?」


「いーえ、ミリル…先生」


ミリルは次に横にいるアイリスに向き合う。


「で、君がアイリスだな?」


「は、はい、よろしく」


アイリスも差し出されたミリルの手を取る。


「リュウにアイリスよ、まずは中に入ってくれ、”質素”な建物で申し訳ないがな」


さんじゅーろーは診療所入り口のところにある日向に向かうとそこで寝そべった。


自分は入るつもりはないということだろう。


ミリルに促されるまま俺たちは診療所の中に入った。


建物はあばら屋と言っていいだろう。


いまにも倒れそうな建物だ。


入ってすぐの所に、小さな机と椅子が二脚。


おそらくここで診察をしているのだろう。


「おい…」


ガイルがミリルに声をかける。


「分かっている…リュウ、アイリス、こっちに来てくれ」


ミリルに呼ばれた先は廊下の先にある小さな部屋だった。


入院施設もあるのか、と思ったが途中にある他の部屋は物置みたいになっていた。


「ここだ」


ミリルが扉を開くと、そこにはベッドが一つ置かれていた。


全身に包帯が巻かれているので大怪我をしたのだろうが、死んでいないのだろう。


「これは…?」


俺はミリルを、そしてガイルを見る。


「…お兄ちゃん…なの」


か細い声が聞こえた。


それはミコトの声だった。


「えっ、ミコトのお兄さん?」


アイリスが聞き返す。


それに頷いて答えるミコト。


目をつぶり、涙を溜めている。


「どういうことだ?」


俺はガイルに問いかける。


「こいつはヒューイ…ミコトの兄で豹人だ、そして俺の前のパートナーだった男だ」




俺たちはミリル診療所の別の部屋に移動した。


怪我人の傍で色々と話しをすえるのは憚られたからだ。


「あの部屋で怪我をして寝ているのがミコトの兄のヒューイ、で、ガイルのパートナーだった」


ガイルは頷いて肯定する。


「ヒューイと俺は冒険者でバディを組んでいた…それなりにクエストもクリアして、少しは有名だったんだ」


「スピードのお兄ちゃんとパワーのガイル…いいバランスのバディだったんだ」


俺はミコトの補足に頷いて返す。


「俺たちは確かに強かった、そこいらの冒険者には負けなかったし、魔獣も退治した」


これがただの自慢話でないことは俺がよく知っている。


実際、ガイルは強いからだ。


「だが、俺たちはあるクエストで痛い目をみることになったんだ…」


ガイルが悔しそうに口にしたそのクエストは貴族からの依頼だった。


指名クエストとして受けた2人は、指定された屋敷に潜入した。


クエストの内容は人身売買をしているという噂がある貴族の屋敷に潜入し、その証拠を掴むこと。


「俺は胡散臭いと反対したが、ヒューイは人助けになるからやるべきだという意見だった」


「…」


ミコトもミリルも黙ったままだ。


「で、最終的には俺が折れてクエストを受けることにした」


ガイルは当時を思い出しながら話しを続ける。


「だが、その屋敷で見たのは人身売買なんてもんじゃなかった」


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