0057話 報告
宿屋に集合する形になった俺たち、チーム:龍翔<ドラゴニア>。
夕食を取りながら今日一日の互いの成果を報告しあうこととなった。
「エリーン伯爵への報告、正確には執事にだけど報告はした、ただ支度金はダメだった」
「…そっか、執事さんにかいないんじゃ難しいか」
アイリスは仕方ないという顔をしている。
「へっ、まぁ、本当に伯爵がいないなら、だが…」
ガイルの言葉にミコトが反応する。
「えっ?、それってどういうこと?」
「…途中経過くらいじゃ会わないってことなのかもな…まぁ、実際にいるのかいないのは知らないが」
俺が代わりに応える。
「で、そのあとガイルの知り合い…ミコトも知ってるんだよな…ラウルという男に会ってきた」
ミコトは頷く。
「ふーん」
アイリスは、そうなんだ、くらいの顔をしている。
「そこでの話しは…最後にするか…そっちはどうだった、アイリス、ミコト」
「ふふーん、これを見てよ」
俺の問いかけにミコトは、待ってましたとばかりに自信満々に大きな紙を広げる。
「これは…」
「へっ、アルドラ砂漠の地図か…魔獣の生息地点も書いてあるな」
「ふふふ、それにここを見てよ!」
ミコトが指さすところには”鉄蠍”の文字が書いてあった。
「おっ、鉄蠍の生息地も分かったのか!、こりゃ、すごい情報だ」
「確かに…そこまでの距離も書いてある、よくここまでの情報が集められたな」
俺はアイリスとミコトを見る。
「へへへ、すごいもんでしょ」
ミコトは自慢気に胸を張る。
「ふふふ、まぁ、鉄蠍の情報はギルドでたまたま会ったハンフリーさんに教えてもらったんだけどね」
「へっ、ハンフリーのやつが王都に来てたのか」
アイリスは頷く。
「冒険者登録を取り消すために来てて、私たちのクエスト内容を察して教えてくれたの」
「それにそれに!、いっぱい道具も貰ったんだ!、ねぇ、アイリス」
「そう、レム、お願い」
レムはアイリスの膝からフヨフヨと浮かび上がる。
「コチラニナリマス」
レムの収納魔法に仕舞われた箱が出てくる。
ハンフリーが使っていた冒険者道具だろう。
「へっ、すごいものを受け取っちまったな」
長く冒険者が使っていた道具類は、愛着だけでなく思い出、それも良い思い出、悪い思い出両方たくさん込められているだろう。
それはただの道具ではなく、想いも一緒に受け取ったということだ。
「ハンフリーに会ったら礼を言わないとな」
「そうだね!」
俺の言葉にアイリスは満面の笑みを浮かべる。
同じ気持ちなのだろう。
「へっ、で、ずっと気になってるんだが…ソイツはなんだ」
ガイルが足元で餌を食べている黒猫を指さしながら言う。
「あー、この黒猫、名前はさんじゅーろー、新しい仲間だよ」
「はぁ、猫を飼うつもりか?ミコト」
ガイルが反応する。
「そだよ、冒険者でも動物飼ってる人も多いし、別にいいかなって」
「へっ、そりゃ、テイマーとかだろう…大体、どこで見つけてきたんだ」
「さんじゅーろーはね、瑠璃さんの店に行くときに出会ったの」
アイリスがさんじゅーろーとの出会いを話してくれる。
「ふーん…」
「それにさんじゅーろーはすごい苦労してるんだよ、グレイスフル諸島から来たんだよ」
「グレイスフル諸島って南にある?、王都からは随分な距離があるが…」
「そうなんだよ、リュウ、さんじゅーろーは苦労してるんだよ」
「へっ、なんでそんなことが分かるんだ」
「分かるよ、だって、本猫(?)に聞いたんだもん」
アイリスがバツの悪そうな顔をしている。
その時、黒猫が俺とガイルの方を向いた。
「にゃー(お初にお目にかかる、リュウどの、ガイルどの)」
「…!」
「なっ!」
驚愕の声をあげる俺とガイル。
それを見て大笑いするミコト。
「アハハ、ビックリするよね!、あたしたちも最初は驚いたんもん」
笑いが止まらないミコトはそのままにしておき、俺とガイルはアイリスから詳しい話を聞いた。
「…なるほど、そういうことが」
「にゃー(アイリスとミコトは私を助けてくれただけなんだよ)」
「へっ、しかし、なんで俺たちだけに聞こえるんだ?」
「そんなこと分かるわけないじゃん」
しれっと答えるミコトを睨みつけるガイル。
「…へっ、まぁ、そうだろうな…本人…さんじゅーろーにも分からないんなら俺たちに分かるわけないか」
「ねぇ、リュウ…」
アイリスは何か言いたげだ。
「ああ、分かってる…」
俺はさんじゅーろーの方を向きながら言う。
「よろしくな、さんじゅーろー、俺のことはリュウと呼んでくれ」
「…ガイルだ」
「にゃー(よろしく、リュウにガイル)」
「やったね!」
俺が認めたことでさんじゅーろーは正式にチーム:龍翔<ドラゴニア>の一員となる。
ミコトがさんじゅーろーを抱きかかえて喜んでいる。
アイリスも嬉しそうだ。
と、その時、俺の背後にすいっとレムが近づく。
「どうした?レム、元気がないな」
「…リュウサマ、レムハコンゴモカワリナクリュウサマニオツカエシマス…」
「ああ、分かってるぞ、レム」
俺をレムを見ながら言う。
「レムはレムだ、代わりなどいない」
「リュウサマ…アリガトウゴザイマス」
それだけ言うとレムはアイリスたちの輪に加わる。
さんじゅーろーの加入はレムなりに思うところがあったんだろう。
だが、さっき言ったとおりレムはレムだし、代わりなどいないのだ。
そして俺はラウルとの会談の内容を切り出す。
「アイリス…聞いて欲しい話があるんだ」




