0055話 ラウルとの会談 その5
「国を創るといってもそう簡単にはいかないだろ」
俺は率直な疑問を口にする。
ラウルは重々しく頷く。
「ええ…私には一応領地があります、差しあたってはそこが本拠地ということになりますが、特別大きな土地ではありません」
僻地、ということだったな。
「それに今、私たちが新国家を宣言しても残念ながらすぐに潰されるだけです…」
「まぁ、そうだろうな」
「ええ、ですので私は力を蓄えつつ、準備を進めておりました」
「へっ、だが準備には膨大な時間がかかる…国を創ろうってんだからな」
俺は頷く。
「ガイルの言う通りです…そして現状は私の力不足によるものです」
「まぁ、それを嘆いても始まらない…で、何が足りていないんだ?」
ラウルは少し考えている。
「正直にいいますと”全て”です…人、モノ、知識、土地、後ろ盾…」
「へっ、”金”もだな」
「まだまだってことだな…まぁ、その準備を進めていつかは民衆のための国を創るってことだな」
「その通りです」
ラウルの口調が元に戻っている。
「…ラウル」
「ああ…そ、その通りだよ、リュウ」
「分かった、で、俺は何をすればいい?」
「そうですね…リュウには…」
ラウルは再び考えている。
「何もないかな」
「んっ?、どういうことだ」
「準備段階でリュウにしてもらうことは特にはない、強いていえば…今のままを続けてくれればいい」
「冒険者をってことか?」
「ええ…冒険者を続けて、なるべく名を上げてもらって…場合によっては冒険者学園にも通い、ランクをあげ、魔王を倒し…リュウという人物を大いに宣伝してください」
「へっ、俺はそれに付き合うぜ」
「リュウの想いや考えが人に伝わることこそが国創りの礎となる」
「そうか…まぁ、難しい駆け引きなんかがないのは助かる」
ラウルは頷く。
「時間もかかりますし、正直綺麗ごとだけでは済まないこともあります、しかし、そういった暗部は私が引き受けます」
「…そうか、それで」
ラウルが自分は王にならない、といった意味はここにあった。
「ええ、私はリュウの影となり、足元を支えます…そして国創りがなった後は、どこかへ消えましょう…」
「…」
「へっ、いい覚悟だ…だからこそ俺とミコトはラウルの話しに乗ったんだ」
ガイルの言うことは理解できる。
だが。
「ダメだ…」
「えっ?」
「どうした?、リュウ」
俺の言葉にラウルとガイルが同時に反応する。
「俺たちが創るのは民衆のための国だろ、みんなの国だ…そこにはラウル、お前も含まれるだろ」
「「!」」
ガイルとラウルが言葉を失っている。
「それに俺たちはもう仲間だ…最初から誰かが犠牲になる計画はリーダーとして了承できない」
「ははっ…」
ラウルは大きな声で笑う。
「やはりあなたは甘い…ですが、リュウの言う通りだ、自分を犠牲にしてなんて新しい国の考え方に一番そぐわない」
「そうだ、全員が幸せになるんだろ」
「そうでした…いや、そうだった、ええ、私もその国で他の皆と一緒に幸せになるさ」
「へっ、やっぱりリュウに賭けて正解だったな」
「よし、話しは決まった、俺とガイルはクエストに戻るぞ」
「へっ、そうだな」
「頼むよ、まずはクエストをクリアしていってもらうことが重要だ、うちの倉庫にある道具なんかは好きに使ってくれ」
「ああ、助かる」
「倉庫まで執事に案内させよう」
ラウルがベルを鳴らすと一人の男性が部屋に入ってきた。
「お呼びですか、ラウル様」
ラウルは俺に掌を向けながら紹介をしてくれる。
「こちらはリュウ、我らの御旗になる方だ」
そして俺に執事を紹介してくれる。
「執事のジョセフでございます」
深々と頭を下げるジョセフ。
「ジョセフは計画を知っている賛同者だ…計画が露呈するわけにはいかないので執事として伝えてくれている」
「そうか、よろしくジョセフ」
俺とジョセフは握手を交わす。
「私が敬語ではなくリュウ様とお話しできる日を楽しみに待っております」
「ああ、そうだな」
「それと計画に賛同してくれている他の同志も紹介したいので、エリーン卿のクエストが終わったらまたここへ来てほしい」
「分かった」
そうして俺とガイルはラウルの倉庫にあった冒険道具を多数受け取った。
回復薬、ランタンや油、干し肉などの保存食、武器の手入れ道具など多数の道具が用意されていた。
俺たちをそれを手にラウルの屋敷を後にしたのだった。




